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女性をめぐる社会問題について、誰にとっても身近なのは、女性の仕事、労働ではないかと思います。
子育てや介護には「誰が家庭内労働をするのか」という問題が、通勤電車での痴漢や女性車両登場の背景には「女性が男性社会で働き始めた」という社会の変化が、そして女性管理職の少なさや、女性非正規労働者の問題には「女性は家庭を優先するので働き方が違う」という社会通念、あるいはそういう働き方をせざるを得ない社会構造があります。
こうした問題は、男性がブルーカラー労働者からホワイトカラー専門職まで家族を養うのに十分な収入と社会保障を得て、女性が家庭で主婦として家事・子育て・介護労働を提供していた頃には、大した社会問題になっていませんでした。しかし、世界的な女性の権利や人権意識の向上、新自由主義の進展、グローバリゼーションによる経済競争の激化、産業構造の変化、男女の教育レベルの向上、人口構造や家族のあり方の変化など、さまざまな理由により社会は急激に変化し始めています。
世界的には女性のほうがトータル労働時間が長い
労働や仕事を考えたとき、こうした外部環境の変化に最も影響を受けているのは女性です。「男性サラリーマンが世帯主で、主婦が家庭で無償労働を提供」を前提にした社会のシステムはいまだに変化しておらず、男性の働き方もほとんど変わっていないのに、女性は男性のように働くことを求められ、かつ家庭での無償労働も今まで通り提供し続けています。
下のグラフは男女の労働量の比率を示したOECD の最新のデータを基にしたグラフです。各国の「外での仕事時間」「家庭内労働時間」を足した、トータルの1日あたりの労働時間のグラフを見ていきましょう。
この2つのグラフから分かるのは、ほとんどの国で男性より女性の方がトータルの労働時間が長くなっているということです。もともと女性の家事労働時間は男性よりもずっと長い状況にありました。そこに女性の労働参加率上昇によって外部労働時間が加わったことで、女性のトータル労働時間が長くなるという傾向が出ているわけです。
例外もあります。日本、オランダ、ノルウェイ、ニュージーランド、デンマーク、スウェーデンの6カ国は、女性よりも男性のトータル労働時間が長くなっています。これら6カ国の中では、日本は家事労働時間、外部労働時間、トータル労働時間、フルタイム労働者の賃金格差すべてで男女差が大きく、また子育て世代である20代、30代の女性の就労率も他の5カ国に比べて低い、という特徴があります。
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