「非正規雇用の多くが女性」は世界共通 止められない非正規化を乗り越えるヒントはオランダのパートタイム経済

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労働組合が勝ち取ってきたパートタイム経済への道のり

オランダも最初から非正規雇用者の権利や賃金が守られていたわけではありませんでした。オランダの社会変革の事例から日本が得られるものは多いはずでしょう。ここからはオランダがいかにして「パートタイム経済」と呼ばれるまでパートタイム労働者を増やしていったのかを見ていきましょう。

1950年代、オランダは現代の日本と同じような女性の労働力不足の問題を抱えていました。そこで企業は、既婚女性向けにパートタイム労働を導入するようになります。当時は女性就業率はそれほど増大しなかったようですが、1970年代になると、結婚しても働き続ける女性が増えたこと、女性の教育レベルが上がって就業率が向上したこと、出生率の低下などによって、女性の就業率は上昇し続けました。

一方で、保育園不足に加え「子どもは家で母親が育てるべきだ」といった固定観念や性別役割分業意識などの社会的背景、正社員の男女賃金格差が大きく、パートタイム女性の時給のほうが正社員女性の時給を上回る現象なども起こっていました。そして、妊娠出産などによる女性の解雇を禁止する法律や、日本の配偶者控除にあたるような制度も整備されたことで、この時期に女性のパートタイム労働者が増えていきます。

また、オイルショックやグローバリゼーションによる競争の激化などで、1970年代の後半から深刻な経済の停滞期に入ります。深刻な財政悪化をめぐり緊縮財政が掲げられ、企業の収益力の強化、雇用の改善、経済の立ち直りが緊急課題とされ、男性労働者も含めた雇用の流動化を求める雰囲気が強まりました。

オランダには、各種労働組合と企業(雇用主)団体の双方が国家レベルで組織化され、諮問機関を通じて協議・協力しながら、労使関係をめぐる団体交渉を行ってきた長い歴史があります。パートタイム労働力の活用が労働者側からも企業側からも求められる中、1980年代、90年代を通じて、パートタイム労働に関する労働組合側と企業側の合意が形成されていきました。

たとえば、賃金の上昇を抑制する代わりに、企業側は投資や雇用拡大を進め、労働者全員の労働時間を縮小するワークシェアリングを導入することなどが決まります。また、時短勤務が一斉に導入され、仕事と子育てを両立させるための解決策のひとつとして、パートタイム労働が推進されました。

労働組合は政府も巻き込み、雇用の流動化による経済成長だけではなく、パートタイム労働者など不安定な雇用状態にある人の社会保障を充実するための制度も整えていきました。パートタイム労働者でも失業給付金が受けられ、賃金、残業手当、ボーナス、職業訓練などについて、フルタイム就労者と均等な待遇を受ける権利が与えられ、労働時間法が制定され、正規・非正規といった枠組みを超えて従業員が特定の状況下で、労働時間を自分で変更できる権利など、パートタイム労働が社会の公平性を高め、自由な働き方を進め、同時に経済成長を達成するための手段として法的に整備されていきました。

労働組合側は当初パートタイム労働について、組合に参加しない労働者が増えること、雇用条件が悪化することなどを懸念していました。しかし パートタイム労働が再分配の要素を強く持ち、ワークライフバランスを確立する手段であることを強調したことや、企業・政府との合意形成などの実績によって、社会の労働組合に対する期待とともにパートタイム労働者の労働組合参加率も高まっていきました。

一方で、パートタイム労働者が就いている職務レベルは依然として下位に位置付けられており、職務レベルが上になるほど正規雇用者の割合が増えるなど、正規・非正規の格差はいまだにあります。また、非正規労働者は男性よりも女性が多く、正規雇用における男女賃金格差が残るなど、ジェンダーによる差も残っており、他のヨーロッパ諸国と比較して必ずしも非正規労働者や女性の雇用環境が良いわけではありません。

課題は様々残っているものの、オランダの非正規雇用は日本とはまったく異なるものだということがおわかりいただけたかと思います。

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