政治の世界にはびこる性差別 女性が「本当の人間」になって70年、いつ「女性議員」という言葉はなくなるのか

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『女たちの情熱政治――女性参政権獲得から70年の荒野に立つ』(明石書店)

『女たちの情熱政治――女性参政権獲得から70年の荒野に立つ』(明石書店)

 小さい頃、本当に幼稚園生ぐらいの時、私は「日本初の女性総理大臣になる」と親に宣言したことがある。今思うと凄まじいことを言っていたものだ。でも、当時の私は、幼心に不思議でならなかった。なぜテレビに映る政治家はみんな男の人なのか。疑問の根底は「自分が女だから無条件に女性を応援したい」という幼児の論理でしかなかったけれど、きっといつか女の人が一番偉い人になる日が来るんだろうな、と、ぼんやり考えていたことは覚えている。

 で、私は20歳になった。まだこの国で女性の総理大臣は生まれていない。

 今年3月に明石書店から出版された『女たちの情熱政治 女性参政権獲得から70年の荒野に立つ』(東京新聞・北陸中日新聞取材班編)は、政治の場で立ち上がってきた「女性」たちの物語を描いている。この本に書かれているのは、今起こっている問題だ。女性の政治参加を妨げていること――例えば議会が異常なまでに男性社会であることや、出産や育児などのライフイベントに対する無理解、根強い女性蔑視について。また、女性によるデモや政治的活動について。「女性」が政治の場で立ち上がっていることは確かに喜ばしい。喜ばしいのだが、「女性」という主語は、とにかく、つらい。

39人の女性議員が生まれる

 1946年、女性参政権が認められてから初の衆院選では39人の女性議員が生まれた。これは2005年に43人の女性議員が当選を果たすまで破られなかった記録であり、当時の「女性と政治」問題の盛り上がりが感じられる。この盛り上がりというのは、実際に女性の政治に対する関心の表れでもあったが、一方でGHQのテコ入れがあったのではないかという疑惑もある。票の底上げがいかに図られたかは不明であるが、女性参政権は軍国主義の歯止めの1つとしてGHQに重要視されていた。興味深い話である。

 「餓死防衛同盟」から出馬した女性代議士・松谷天光光氏の選挙ポスターには、名前の横にはっきり「女性」と書かれていた。「廿八歳の我がいのち 民族死活の危機に捧げん!!」という力強いキャッチコピーとともに、筆致は胸を張っているかのような誇らしげな印象だ。そこには、「女性も政治に参加できる」という喜びと覚悟が溢れていた。

 最初の女性議員の中で唯一存命である佐藤きよ子氏も、女性参政権が認められた時「本当の人間と認められた」と感動し、二日間眠れなかったという。「本当の人間」。凄まじい言葉ではないか。それまで女性は「本当の人間」として扱われていないという感覚の中で生きていたのである。

 そう、女性が「本当の人間」になってから、もう70年経った。それなのに、いまだに政治の世界は性別で人間を抑圧し続ける。

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