トランスジェンダーが抱える避難生活でのトイレ問題 性規範がマイノリティへの必要な支援を阻害する

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Photo by Rae Allen from Flickr

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2016年4月14日夜21時過ぎに熊本県で最大震度7という大規模地震が発生し、16日未明にも同じく最大震度7を記録する地震に見舞われた。以後一週間経つが、毎日のように震度5を前後する地震活動が九州地方を中心に続いており、予断を許さない状況にある。

そんな折、東日本大震災時に支援物資として女性の月経のための生理用品がある避難所に送られてきた際、取り仕切っていた年配の男性が「不謹慎だ」という理由で送り返した、というツイートが流れた。続いて、多くの男性が月経について知らないのではという話がネット上で持ち上がり、啓蒙の漫画が公開されるなどの動きが見られるようになった。

「不謹慎だ」と指摘された発言を筆者は実際耳にしたわけではないので推測の域を出ないが、月経に対する穢れの意識や、生理にまつわる事柄ということで性欲と結びつけられたのではという声があがっており、筆者も同意する。無知・無理解に基いた偏見に対する啓蒙だけでなく、各避難所が多様な被災者のニーズを包括的に汲み取れるような相談の仕組みや、可能な限り対処され、広く共有されることが必要だと思う。

筆者自身は男性から女性化したトランスジェンダー(MtF)であり、生まれてから日本を襲った大規模地震のほとんどに見舞われた経験がない。東日本大震災も東京の自宅で物が倒れる程度の害しか被らなかった。しかし、2011年当時はあるMtFコミュニティと関わりを持っていた時期で、福島出身の当事者の話を聞いたり、今回災害にあっている熊本や大分出身のMtFとも知り合っていたため、他人事として考えられない。ただでさえ、日常生活において排除されやすく、当事者自身声をあげづらいこともあり、災害時はトランスジェンダーへの配慮は想像されにくいだろうと想像する。

本稿では、MtFの視線から想像される被災時のニーズを中心に書かせてもらう。それによって、女性、子供、高齢者、障害を抱える人々、外国人、性的マイノリティなど、同じように災害時に多様な支援のニーズを抱えながらも優先されづらい人々への対応がより良くなり、可能な限り早く被災者と被災地域が復興に向けて回復していくこと、また、今後起こり得るあらゆる災害時に知恵として活かされてほしいと思う。

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