社会

大災害で後回しにされがちな問題 「みんなで我慢」は性犯罪の温床になる

【この記事のキーワード】

性的嫌がらせの被害申告はたったの10%

災害や戦争などの混乱状況、みんなが苦しんでいる状況では、「女性の問題」は後回しにされがちです。

性犯罪には痴漢、性的嫌がらせ、覗きなど軽度のものからレイプまで様々な種類がありますが、どれも被害者が被害の申告をためらうなどの事情で、表面に出にくいという性質があります。実際、性犯罪は災害時などに限らず、警察に被害を報告したり、そこから実際に犯罪として認知される比率が非常に低いものです。

国際的に見ても、性犯罪被害を警察に訴えることの難しさが指摘されています。国際犯罪統計による30カ国のデータを比較すると、被害報告率は、車の盗難なら100%ですが、性的嫌がらせ(レイプまでいかない)は10%程度と非常に低い数字になっています。

また、ジェンダー平等度が高い国では、性犯罪の報告率や被害届提出率が高いことも報告されています。これらの国々では、性犯罪に関する取り調べや裁判などでも被害者の負担を減らすための様々な工夫がなされています。例えば、被害者支援を専門とするNGOが警察とダイレクトに協力しながら被害者の経済的・物理的・精神的支援を行う仕組みが確立していますし、児童虐待や性犯罪など被害者に特別な配慮を必要とする場合には、裁判での証人尋問の代わりに、捜査における尋問を録音・録画したものを使用することもできるようになっています。

世界経済フォーラムの報告によれば、日本の男女格差は調査対象145か国中101位と先進国のみならず世界全体に見ても非常に低いレベルなので、性犯罪被害の報告率や実際にそれが犯罪としてあげられる率、検挙率が低いことはもちろん、裁判まで至るケースも表面に出ている数よりかなり少ないと考えられます。

私自身、幼少時にナイフで「動いたら刺す」と男性に脅され性犯罪未遂に巻き込まれた経験がありますが、この事件は警察に通報しました。しかし、私の親族が性犯罪被害に遭ったケースでは、本人がことを荒立てることを恐れたために、警察への報告を拒否し、通報しませんでした。それより以前に、傷害の被害について警察に相談したときにまともに対応してもらえなかったこともあり、警察に相談する勇気を持てなかったようです。

日本の性犯罪被害率は高い

性犯罪被害の報告や届け出数などが低いのには、性犯罪特有の事情があります。あまり知られていないことですが、性犯罪とくにレイプやレイプ未遂の多くが、知人による犯行です。そのため、被害者の女性が「親戚のおじさんを訴えるわけにはいけない」「日頃お世話になっている方を訴えるわけにはいかない」「この人を訴えたら、家族が不利を被るかもしれない」「近所の男性だから今後の関係を考えたら訴えられない」「個人情報も知られているし、報復が怖い」「友人の男性だし、共通の知人も多いから、恥ずかしくて、情けなくて訴えられない」といった理由で被害を訴え出ることを避けてしまう傾向があります。また、被害者自らが「こんなことで訴え出てもどうせ相手にしてもらえない。自分が恥をかくだけだ」と、犯罪の重さ・軽さを考えて、警察や周囲に訴え出ることを自粛してしまうこともあります。

アメリカの犯罪統計によれば、レイプなど加虐性の強い性犯罪の82%は知り合いによる犯行です。また日本の犯罪統計でも、同様の性犯罪の半数以上が知り合いによる犯行となっています。

性犯罪を警察に訴え出る比率はアメリカの方が高いので、アメリカのデータの方が性犯罪の実態に近い数値であると言えるでしょう。これは、データの数が多ければ多いほど、実態を把握しやすいからです。例えば、100件の性犯罪が起きているとして、重大な性犯罪1件だけが報告され、その他の99件の様々な性犯罪が報告されなかった場合、データの数は1件となってしまいます。一方、99件の様々な性犯罪と1件の重大な性犯罪の全てが報告される場合のデータ数は100件です。1つのデータを分析するのと100件のデータを分析するのでは、そこから得られる内容に大きな違いが出ます。もちろんアメリカと日本で性犯罪の実状が異なるという可能性もありますから、アメリカのデータのみを参照して日本の性犯罪を語ることには限界があります。

また、警察で取ったデータではなく、個別の電話などによるインタビュー調査によって推計を出したデータによれば、日本は1年間における100人あたりの性犯罪の被害率は0.9なので世界平均0.6と比べても低くはなく、さきほどの30カ国の比較の中では、むしろ上位に位置しています。しかも、この0.9という数字は日本の盗難被害の率0.2と比べてもかなり高いと言うことができます。表面に出ていない事件が非常に多いのです。

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