会社に支配され雑に扱われる男たち、怒ったり逃げたりしていいんじゃないか?/男性学・田中俊之さん

【この記事のキーワード】

「身を粉にして働く良い旦那」

――田中先生の生活リズムってどんな感じなんですか?

田中「僕は、あんまり忙しく働いてないですよ。大学の授業指導だけなら、月・火・木に講義があるので出校(出勤)して、水・金・土・日は休みです。うちの大学が特殊なわけではなく、大学の教員ってわりとこんな感じですよ」

――三連休が毎週ある!?

田中「はい(笑)。僕に関して言えば、職位的に偉くないこともあり、職場(大学)に拘束される時間は短いですよね。残りの時間は大体自宅で執筆の仕事をして、市民講座の講師として呼んでいただいたところで講演をしたり。もちろん授業以外の雑務、入試、それから学生の対応とかそういうものもあるので、授業が休みでも出校する日はありますが。でも夜中まで働くとかイヤですよ。そんなに集中力も持たないですし。個人的な希望としては、朝8時頃から働くとしたら15時ぐらいまでには終えていたいですね」

――提出されたレポートや試験の評価などは、ご自宅で?

田中「ああ、それは大変なんです。200人生徒がいる大教室での授業なんかは、テストの採点に3~4日かかっちゃいますね。試験後は長期休みに入るので、その期間にやります。もちろん理系領域の先生など、整った実験環境が必要なケースはこの限りではないと思います。自宅では研究ができないですものね。僕は幸い、自宅でも仕事をやれますが……」

――会社員でも業種によって、絶対に自宅作業ではやれない仕事がありますよね。飲食や販売や窓口対応など接客、観光業も無理ですし、運送とかも。長時間労働が常態化しているんじゃないか。スーツを着てオフィスで働くような会社員だったら、会議なんてスカイプでやれよとか、連絡事項はメールでまとめろよとか、資料づくりは自宅で出来るだろとか、残業を回避するアレコレが提案されますけど、そうじゃない職種の人たちも大勢いるのだから、一概には言えない。でもそういう様々な職種で、働きすぎている方々に、同書を読んでいただきたいなと私は思います。

田中「ありがとうございます。これは、男性のみならず女性側の意識を改革するのも非常に難しい問題だなとすごく思っていて。というのも、どうしても既婚、あるいは結婚を予定する女性側から、『そうは言っても、やっぱり旦那さんが頑張って稼いで欲しい』という声が聞こえます。僕は先日、ある講演で『男性たちが働き過ぎてるんじゃないか、どうしたらいいかみんなで考えましょう』と一通り話したのですが、それの感想として若い専業主婦の女性が『やっぱりうちの旦那さんのいいところは身を粉にして働くところだなと思いました!』と。うーん……身を粉にして……って、頭を抱えてしまいました。だって、男性の過労死とか自殺率の高さとかうつ病とか、そういう話をした後の感想なんですよ」

――自分の旦那さんが身を粉にしてまで働いてたら、私はあらゆる面で嫌ですが……。

田中「僕が男の側から言わせてもらうと、『男はちゃんと働いてさえいれば良い!』って感覚は、日本ではまだまだ根強いなあと思うんです。そうすると、男性は何十年もの間まったく仕事から逃れられません」

――でもこれって日本には、新卒の時期はいざ知らず、女性が自分が何十年も働いてお金を稼ぐという気になりづらい構造があるからでもありますよね。それは結婚によって女性が「家庭内の責任」を負わされて、社会での労働を縮小されるという構造です。

田中「まさに性別役割分担で、それを各家庭内で割り振るぶんには問題ないと思うんですよ。先の専業主婦の女性も、彼女たち夫婦は、妻が家事育児で夫が収入を得る仕事をするという役割分担っていうだけのことですからね」

――でもこれが、「女は産む、男は働く」という決まりみたいになっちゃっているのは……

田中「両方とも、やりたくてやっている人だけじゃないですからね。仕事が大好きで働きたくて馬車馬のようにやっている男性ももちろんいると思いますし。でも一方で、仕事ばっかりの生活なんてうんざりなのに、家族ぶんの生活費を得るために自分に鞭打って働いている男性もいる。『私は家を守るから、あなたは一家全員を養うために頑張って働いてね』って女性ばかりだったら、しんどい男性も当然いるはずなんです。

昭和の時代、特に男女の生涯未婚率が5%程度だった1970年代なんかは、年功序列・終身雇用の職場で男性に支払われている給料には『家族を養うぶんの賃金』という意味が込められていて、『家族給』と呼ばれましたが……」

――そして女性の労働はあくまで「家計補助」で、いつまでも結婚せずに会社に残ると迷惑な存在として疎まれました。妻子を養うための賃金を男に与えているのだから、女は誰かの妻になって会社を去ってくれないと困るんですよね。

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