会社に支配され雑に扱われる男たち、怒ったり逃げたりしていいんじゃないか?/男性学・田中俊之さん

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田中「この世の中で、男性が一番心配されるステータスは無職なんです。次にいい年こいて非正規です、と。さらに定時で帰ってますっていうのも、『ちゃんと仕事してるって言えるの?』と。男性を評価する軸が仕事しかないということと、やればやるだけ誉められちゃう仕組みがあること、この両方が、男=仕事の図式を確固たるものにしていますよね。ただ僕は、仕事の時間と生産性って、ある程度を超えると比例していかないと思うんです。頭が常時フル回転し続けられるとは思えません。僕自身でいえば、よっぽど追い詰められないと一日5時間以上は書く仕事をやらないです」

――意識的に5時間以内で区切りをつけるようにしているんですか?

田中「いえ、書けなくなります。5時間を超えると、もう頭が働いてないなと思うんですよ。疲れて。ただ座ってるだけなら出来ますけど、僕の仕事ってただ座ってるだけでお給料もらえるわけじゃないので、5時間を超えて書き続けようとしても書けないんなら、そこで切り上げます。大学の講義とかじゃない執筆仕事は家でやるのが主なので、朝8時頃から仕事を始めたら午後15時頃でその日はおしまい。今は妻が育児休暇中で家にいて子供もいるのでリズムが変化していますが、出産前は妻が外に仕事に出ていて家にいなかったので、僕の15時以降の時間の使い方といえばジムに行くとか……とにかく僕、ただやっている感を出すためだけに、働くの嫌いなんですよ。それよりもいかに効率をあげ、成果を出すかを重視したいですね」

――平日15時で仕事を切り上げられるのはうらやましいです。私は会社に出勤する働き方ですが、18時まで机にいます。ただ18時より遅くまで働くということが、気持ちの面で出来なくなりました。子供を持つ前は、自分は仕事が大好きで終電まで残業していても苦じゃないワーカホリックだと思っていたのですが、遅くても19時に保育園へ迎えに行かなければならない生活を4年続けるうちに、18時以降は自動的にスイッチOFFになるように変わりましたね。たまに家族がお迎えを代わってくれて残業することがありますが、すぐ息切れして「早くおうち帰ってご飯食べて寝たい」って思っちゃいます。

田中「18時に退社したって家に着くのが19時だとすぐ寝る時間になっちゃうじゃないですか。みんな朝から仕事するなら15時まででいいじゃないかと僕は思うんですよ。勤務中に本当に無駄な時間はないのか考えてもらいたいです。18時退社で19時帰宅、24時就寝だとしたら、自分の個人的に使える時間が一日に5時間しかない。

――とにかく会社員が企業に酷使されすぎている現状がある。長時間労働の他にもうひとつ、転勤。転勤を断らないのが総合職である、と。どう思われますか?

田中「先日、新聞社などマスコミの集まる会に呼ばれて参加したのですが、地方に飛ばされることが当然の職場なんですよね。某新聞社では、新卒入社してすぐ、まず地方で3年修行するのだと。そして長く働いていく中でも、また転勤がある。同じ社内の同僚で結婚して夫婦になった社員がいる場合は、たとえば鹿児島と東京というような遠距離にならないよう多少は配慮するそうです。埼玉と千葉、とか」

――夫婦で東京にある別々の会社に勤めていて、どちらかが地方に異動となったら、離れ離れにならないためには片方が勤務先を辞める必要が出てしまいますよね。なぜ当たり前のように転勤の可能性があるのか、正直わかりません。

田中「社員を地方に回すというのも問題ですが、同じ社内で部署異動を経験させまくる会社というのもありますよね。全部の部署で一通り修行して、やっと一人前の会社員になりますというような。一人前になるための条件が厳しいし合理的でないなと思います。自分で住む場所も仕事内容の業種も決定できないというのはおかしいですし。営業がやりたくて入社したのに、人事や総務も経験しないといけないとか」

――でも、新卒入社した職場に定年まで勤める意識を持つ人って、まだ多数派なんでしょうか。女性は妊娠・出産・育児で辞めたり会社への貢献度が下がるリスク要員とされていますが、転職市場があって中途採用も盛んになっている今、男性も転職の可能性はいくらでもあるはずです。異動や転勤を命じられて納得がいかなければ、転職していいんですから。もちろん時短勤務をとったっていいし、育児休暇をとってもいい。企業側が、家族給や昇進をエサにして、男性社員をコキ使う時代はもう終わりだと思います。

田中「ええ、女性問題としてではなく男性の働き方の問題として、今までのようなフルタイムで一日8時間は最低限働いてくださいってシステムはもはや維持できないと思いますよ。生涯未婚率が上昇していて中年の独身男性がたくさんいる中で、親の介護の問題が表面化しつつありますよね。フルタイムで働きながら家庭で親の介護をする生活は無理があります。管理職の男性は、男性の働き方の見直しを若い世代のために『やってあげている』と思っているかもしれませんが、自分たちの問題なんです。当事者として考えなければなりません。週40時間以上の労働を課すことが、社会をまわすシステムとして数十年成立してきたけれど、もう破綻してしまう時が来ていると言えるでしょうね」

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