もはや女性だけの問題じゃない 政府が推し進める首を切りやすい不安定雇用の拡大

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Photo by Caitlin Regan from Flickr

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これまで戦前、戦中、戦後の歴史を振り返りながら、政府・企業が、主婦パートという安価で首切りがしやすい労働力を利用できる仕組みをいかに作り出してきたかをお話ししました。

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今回も引き続き、なぜ日本では非正規雇用が女性を中心に増大したのか考えながら、非正規で働く人たちが現実に直面しやすい問題について考えていきたいと思います。

正社員として働かせてもらえなかった女性たちをパートとして利用した政府・企業

日本では、戦前~戦後に、政府・政府の共同作業によって、女性が安価で首切りしやすい労働力として利用され続けてきたことはこれまでの記事で説明してきた通りです。そしてこの傾向は今でも続いています。

1980年代には、国連の「女子差別撤廃条約」批准を背景に男女雇用機会均等法が導入されます。女性にも男性と同じように、正社員として働き続けられるようにするための法律でしたが、結果として男性と女性を「総合職」「一般職」として差別化することも促しました。

1995年には日経連が「雇用ポートフォリオ」という人事労務管理方針を提唱しました。雇用ポートフォリオという考え方は、労働者を「長期蓄積能力活用型グループ(管理職・総合職正社員)」と、長期雇用を前提としない 「高度専門能力活用型グループ(高度な専門性を持つフリーランスの専門職)」「雇用柔軟型グループ(一般職、派遣、アルバイト、パートなど非正規職)」に分け、それらの組み合わせによる流動性の高い雇用戦略を立てるというものです。これはさらなる非正規雇用活用を促すための雇用戦略でした。

2000年代に入ると小泉政権のもとで労働の規制緩和が行われたことによって、派遣の増加など非正規雇用の「活用」が進みました。一般職が社会的保障や福利厚生が限定的で、賃金上昇機会も少ない非正規雇用に切り替えられ、女性労働者は不安定雇用へと追いつめられました。最近では安倍政権が女性の社会進出を謳う「女性活躍推進法」が注目を集めています。高い教育を受け正社員総合職として過酷な労働に耐えうる女性の活用は前面に押し出しながら、女性労働者の大半を占める非正規労働者の労働環境や賃金のあり方については、具体的な動きがほとんどありません。

それどころか、政策的に押し出されている女性総合職が「活躍」することで、非総合職、とりわけ非正規雇用の女性たちは「女性でも頑張っている人はいる。お前たちは能力や努力が足りないから非正規なのだ」という批判にさらされやすくなるでしょう。このように政府・企業は戦後も一貫して、女性を都合のいい労働力として利用し続けてきたわけです。

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