社会

大阪二児置き去り死事件で考える「子育てに失敗した女」への罰

【この記事のキーワード】

●当事者の情状が一切考慮されず、元・夫と元・姑の感情が刑に反映される不思議

 本書を読んで、芽衣さんの裁判に関して知ることができました。その裁判の内容には、私のような法律の知識のない素人には、どうにも不思議でならないことがいくつかあり、それは例えば以下のようなことです。

 子供を死なせた芽衣さんの懲役30年という量刑は、元夫と元姑の希望でもあったのだそうです(p. 260)。けど、元夫は離婚後一銭も養育費払ってないし、元姑も一切子供の面倒見ていない。

 芽衣さんは高校を卒業後、割烹店に就職し、ハタチになるかならないかで結婚してからは、専業主婦だったそうです。そんな芽衣さん一人に、住居も家財道具も取り上げた状態で、子供2人の養育を丸投げしたのは、元夫や元夫の家族、芽衣さんの父親・母親です。

 「殺意はなかった」と言い続けた本人の言葉は無視されるのに、お金も手間もかけてない人たち(縁も切れてる)の意見が反映されるのは、不思議でなりません。

●養育費を払わないこと=未必の故意になぜならないの?

 本書を読みながら「この事件の間中、元夫は一体何をやっていたんだ?」と、何度も思ってしまいました。元夫が養育費払っていたらこんなことにならずに済んだのでは? と思います。

芽衣さんは、積極的な殺意はなくても、「未必の故意による殺意」で子供たちを死なせたとされました。それなら、養育費を払わない夫は、「養育費を払わないことで子供が死んでしまってもいい」という「未必の故意」に、なぜ問われないのか、私に法律の知識がないからですが、全く分かりません。

●臨床心理士と精神科医の違い

 裁判では「臨床心理士で虐待の専門家」の意見は無視され、「精神科医」の見解だけが支持されたようです。

 けれど、私の知る限り、「臨床心理士」と「精神科医」は、全然違う職業だし、診るところも違います。

 裁判なのに、総合的に判断するのではなく、片方の意見だけ反映するというのは、どうしてなのだろう? と、素人の発想ではりますが、不思議に思ってしまいます。

30年の量刑はみせしめのようにしか思えない

 二審でも、最高裁でも、上告は退けられ、芽衣さんの刑は、確定しているそうです(p. 265)。

 「一般予防の見地も無視できない」(p. 260)として、懲役30年になったそうですが、この量刑、私には、「みせしめ」としか思えません……。「子育てに失敗した女に情状酌量の余地はない、世間の女どもよ、よく覚えておけよ」っていう

 これを、子育てに関わる女性、ひいては全ての女性に対する侮辱、と感じるのは、私だけでしょうか……?

●必要なのは罰じゃないと思う

 個人的には、ネグレクトに至るシングルマザーに必要なのは専門家の治療やサポート、それに金銭の支援、もしくは再就職先だと思います(罰は、養育費を払ってない側に与えればいいのではないでしょうか?)。

 さらに日本は今、不況で仕事がない。中でも女性には、特に、仕事がない。女性の貧困が今後ますます進んでいくと思われる日本で、こういう事件が増えこそすれ、減ることはない、という風に思います。

 芽衣さんを懲役30年にしたところで、似たような事件の抑制効果は、薄いと思うのです。

●女性だけでなく、男性にもオススメしたい本です

 『ルポ 虐待―大阪二児置き去り死事件』は、「幼児2人を40度を超えるマンションの部屋に長い期間放置、ネグレクトから死に至らせる」という、想像を絶する事件について、女性の立場に立って書かれています。

 本書を読むまで、私は、この事件は普通の人では起こせない、例外的な事件だと思っていました。けれど、この本を読んでからは、少なくとも「例外」ではないなぁ……、と思うようになりました。

 児童虐待や女性の貧困は、今の日本に、腐るほどあります。だから、虐待された女の子が、成長して女性になり、子供を産んで貧困に陥って、引き起こしたこの事件は、ある程度、普遍性のある事件なのではないか、と本書を読んで、私は思うようになりました。

 女性にはぜひ読んでもらいたい本ですし、男性にもぜひオススメしたい一冊です!

■歯グキ露出狂 /大学卒業後、メーカーなどに勤務するも、会社の倒産、契約終了、リストラなどで次々と職を失う。正社員、契約社員、派遣社員など、あらゆる就業形態で働いた経験あり。現在無職で求職中。

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