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親の経済力による教育格差 生活困窮家庭の大学進学率をあげるために必要な仕組みとは?

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年収300万以下の家庭出身者は大学より専門学校を選んでいる

そもそも、高校生の進路と世帯の年収の関連を見た場合、4年制大学は、両親の年収が上がるほど進学率も上がるのに対し、専門学校についてはその逆に、両親の年収が上がると進学率は下がっていきます。世帯年収が低い家庭の出身者は前提としてあまり大学には進学せず、進学するとしても専門学校に行く傾向があるのです。専門学校の方が大学より在学期間が短いとはいえ、多くの場合、かかる費用は大学と大きな差はないにもかかわらず、です。

しかも、子の性別によって親の進学希望の期待のかけ方に差が見られます。東京大学大学院教育学研究科が実施した『高校生の進路追跡調査』によると、親が子どもに進学してほしい学校・学科の一番人気は「大学(文系学部)」で、子どもが男子の場合は39.9%、女子の場合は38.7%です。次に多いのが、男子の場合は「大学(理系学部)」(33.5%)、女子の場合は「専門学校」(22.4%)です。

同調査によれば、世帯年収400万以下の家庭出身者の 4年制大学進学率は都市部男子46.5%、地方男子40.0%、都市部女子25.0%、地方女子27.8%となっています。世帯年収が低く、子どもが女子の場合、4年制大学ではなく専門学校や短大に進学することが多くなります。

また、さまざまな進路に関する調査で、女子の場合は地理的制約によって進路を決める比率が高く、親元を離れたくない、親元から離したくないという女子のいる家庭の状況が進路決定に影響を及ぼすことも指摘されています。

生活困窮家庭出身の女子が進学を希望する場合、専門学校や短大を選ぶ傾向がある上、学部・学科選びでも就職に結びつかない人文系、芸術系や、賃金の低い介護・福祉系専門職などを選ぶ傾向があります。しかし、これらの学校・学部・学科への進学は、将来の賃金を減少させる可能性、非正規雇用に就く可能性を高めてしまうものでもあります。

大学進学費用を支援すれば、進学格差が埋まる、学力格差が埋まる、将来の賃金格差が埋まるというような、単純な話ではないのです。

給付型奨学金では「本当に必要な人」の大学進学率は上がらない

今回のキャンペーンでは、「学力差は経済力の格差であるから給付型奨学金が必要だ」という理由付けがされていますが、高校生の進路形成は、進路多様校(大学・短大・専門進学・就職希望者がいる高校で、家計が厳しい家庭出身者も多い高校)の生徒達であっても、3年間であまり大きく変化しません。1年生のときに強く大学進学や就職を希望する生徒はもちろん、なんとなく持っている進路希望が大抵そのまま続いていきます。

また、進路多様校の生徒にとって、就職や4年生大学進学をするならば、学業や課外活動などにしっかり取り組まなければならないものです。ほとんどの生徒にとって進路決定の1番の要素が成績ですが、進路を決定する高3の頃には同じ学校内でもすでに大きな学力差が出ています 。

進路多様校、特に職業系の専門高校(商業、工業など)の場合、成績の良い生徒ほど進路で悩む傾向が見られます。成績トップの生徒であれば、学校によっては就職先が選び放題なので、大学進学したからといって就職ができるわけでもないご時世なら就職したほうがいいのではないか、と考えるのです。

高3までの学力が低くて、進学を希望していない場合、そもそも最初から強く就職を希望している場合もありますが、生活困窮家庭出身は初めから大学進学希望を希望していない可能性があります。

生活困窮家庭出身者への支援で必要なのは、ざっくりとした「給付型奨学金」というアイディアではなく、もっと包括的に進路指導・進路情報のあり方を変えるような仕組み作りです。たとえば、偏差値で輪切りにされている高校ヒエラルキーを前提にしている学校教育の中で、就職・進学両方に強い職業系の専門高校というのは一般的に社会的地位が低く、中学校側でも専門高校の進路状況に関する情報が少ないなどの問題があります。

中学校側がこれら高校の情報を生徒たちにしっかりと伝え、本人たちの進路ニーズを汲み取った上で高校を受験させなければ、こうした専門高校の進学希望者が減少すれば倍率が下がり、入学してくる生徒の学力水準の低下も起こりやすくなり、文科省から進学ニーズが無いと判断されれば統廃合の対象にもなりやすくなります。進学率が上がる中で、職業系の専門高校の人気は下がり続けてきましたが、その原因には中学校側の情報不足によるものもあるのです。

同じ状況は大学に関しても言えるでしょう。就職支援などに力を入れている大学は多いものの、そういった情報は高校・高校生側にはしっかりと伝わっていないケースは少なくありません。在籍者の進路に関する情報提供をしやすくする仕組み作りの方が、お金もかからず、しかも直接的に中学生・高校生の進路指導に与える影響は強いのではないでしょうか。大学進学率は、大学進学が進路希望の念頭にも無い生徒たちに「大学進学も考えてみようかな」と思わせることでしか上がりません。高校3年生、もっと言うならば高校入学以前から、そういった大学進学を考えてもいない生徒たちの大学進学ニーズを掘り起こせなければ学歴格差、学力格差は埋まりません。そして、ただ大学進学率が上がるだけでは、彼らの経済状況は良くならないので、進学支援において、就職も検討できる仕組み、「将来的に稼げる進学」をサポートする進路指導のあり方を、高校よりもずっと早期の教育段階から考えていくべきです。

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