先日、韓国でもひどい事件があった。繁華街・江南(カンナム)にある多くの若者が利用するカラオケ店(飲酒・喫煙禁止の施設だという)で、夜、恋人と来店していた23歳の女性が、面識のない34歳の男に殺害された。犯人はトイレに潜み、“女性の利用客”が来るのを待ち、そして犯行に及んだ。その犯行動機は『女性嫌悪』。被害女性に、ではなく、不特定多数の女性たちからバカにされ蔑まれていると思い込んでいたのだという。つまり被害者はたまたま“女性だった”がために殺され、男性客は何度そのトイレを利用しても殺されなかったわけである。
信じられないことに、この事件に韓国のインターネットでは「被害女性が悪い」「よくぞ女を殺してくれた」「夜遅くまで遊んでないでさっさと帰ってれば殺されなかったのに」「夜遅くにほっつき歩くビッチ娘」といった罵詈雑言が並んだ。この事件報道と一部のあまりにひどい反応を受け、あるネットユーザーがTwitterで、「女性暴力・殺害には社会が答えなければならない」「江南駅10番出口に一輪の菊の花とメモ1枚を書き込み被害者を追悼しよう」と呼びかけ、江南駅には「あなたはわたしだ」「二度とこのような事件が起きてはならない」等の追悼メッセージを綴るポストイットが数え切れないほど貼られた。女優のカン・イェウォンは19日、Instagramにこの追悼現場の写真をUPし「一体なぜこんなことが…被害者は一人の女性、犯人は一人の男性だが、私たちすべてが犠牲者にもなりえるため、個人の問題として片付けるにはあまりにも事が重大です。故人の冥福をお祈りします」と投稿している。
翻ってここ日本でも、状況はさして変わらないのではないか。
女性が夜中に出歩いていても加害してはならない。女性が夜中に外出しているのは、男を誘うためではない。女性が薄い衣服を着て肌を露出していても、「触っていいですよ」の合図ではない。女性が男の部屋を訪れても、「セックスしたいです」と誘ってはいない。すべて言葉による意思の確認が必要である。合意なき性的接触は加害である。酩酊していたり、拒絶しているにもかかわらず、その女性の衣服を脱がせ、胸などに触ることは「加害」であり犯罪である。こうしたごくごく当たり前の、基本的なことが、周知されていない。これはもしかして、全世代の男性に向けて、「女性には人権がある」そして「セックスとレイプは異なる」などを含めた性教育をおこなう必要があるのかもしれない。
最後に、強姦被害者を「もっと気をつけろ」と貶める思考は、強姦そのものを許しているのと同じだ。たとえ真夜中に、性的魅力に溢れた女性が全裸で公園のベンチに座っていても、そしてその女性が「自分に犯されたがっている」ように見えたとしても、遭遇した男性は襲ってはならない。警察に通報するべきだ(そうすれば美人局被害も減るだろう)。前回も書いたように、その女性は公然わいせつ罪で逮捕されるかもしれないが、彼女を襲う者がいたとしたら、それはその者の罪だ。決して「仕方ないこと」ではない。エロマンガやAVと現実は全然違う。
(水品佳代)