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男は妻を「母」にし侮辱するが、真の「母」を侮辱することはできない/二村ヒトシ×林永子『日本人とセックスの解体』

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「おばさんも欲望を自覚して」

――永子さんの個人的な話を掘ってきましたが、二村さんの個人的な話はまだ聞いてないですね。

 二村さんのタスクは何ですか?

二村 僕がこれからやんなきゃいけないことね。……やっぱり、奥さんとの関係じゃないですか。

――それ、絶対話さないですもんね。聞きたいですね

二村 これ、messyに載るんでしょう?(笑)

 それは、やっぱりプライベートなことなんで、言わないようにされてるんですか?

二村 そうですね。……僕はずっと「妻は聡明な女性なので、僕のことを放し飼いにしてくれている」というふうに思いこんで、それこそ甘えていたんですが、本を何冊か書いて、妻と対話をすることで、それが妻に対するとんでもない侮辱だったということに遅まきながら気づかされました。
子育ても、息子がもう高校生なので、まもなく親元を離れる。そこでうちの奥さんは、だんだん自分の仕事の比重を増やして子離れがうまくテイクオフできるように調整して、『日本人はもう〜』でも湯山さんが言っていた “母なる者のダークサイド”に堕ちないようにしてる……、なんて呑気に僕は言ってますけど、『スターウォーズ/フォースの覚醒』のハン・ソロじゃないけど、僕自身は父親業をちゃんとやれていたわけでもない。だからそういう意味で言うと、今日、永子さんと話したみたいに他人事だったらいくらでも言えますけど、僕は本には偉そうなこと書いているくせに、実は典型的な日本の昭和の亭主ですよ。職業がちょっと変なだけで(笑)。だからもうちょっと、いろいろと向かい合わないといけない。それこそ罪悪感に捉われていても仕方がないんでね。

 なるほど。奥さんとのご関係はどんな感じなんですか? 仲良しですか?

二村 仲はいいですね。仲はいいから、俺は幻冬舎の編集さんに泣きを入れましたよ、この本を出すときは。奥さんに怒られて家庭が崩壊したらどうすんですかって。そしたら「そんなこと知ったこっちゃない」って言われましたけど。

 まぁそうでしょうね(笑)。

二村 なるほど、これが幻冬舎か! さすが! と思いましたよ。おかげさまで出版にこぎつけました(笑)。

 本を出版するのってせめぎ合いがありますね、色んな(笑)。でもなんか、「子育てからの上手なテイクオフ」、大事ですよね。「こうすれば幸福になるに違いない」と思い込んでる「女の型」にはまって、自己なき状態で型にはまってしまい、子育てが終わった段階で急に、「あれ、本当の私はどこに行っちゃったのかしら」みたいなことを言う寝ぼけたおばさんがいて。すごい嫌いだったんですね、子供の頃に。で、そういう方々の背中を見て、結婚したくない、型にはまりたくない、私は私で生きるっていう抱負をまず持った。今は本当にケースバイケースだと思うんですけど。一回「型」にはまったんだけれど、没我せずに自分なりの調整をしていく、定期的に更新して「世間の型」ではなく「自分の型」にしていくことができれば、いいのだろうと。

二村 そうでしょうね。全くその通りなんですけど、具体的に女性たちはどうすればいいんでしょうね。

 自分の舞台を持つことじゃないでしょうか。満足できる場所をね、家庭や子供以外で。カルチャースクールとか趣味のパッチワークでもいいし。私の母親世代はパッチワークとかそういう感じ。なんかね、自分の母を見ていると「人に必要とされること」を欲望している。必要とされたい中毒になっている状態。だから、自分でその欲望を自覚して、うまく満たしてあげたらいいと思うんですよね。それもでも、自分の欲望に気づいてるからこそ出来る解決なので、まず欲望を知ることですよね。自分自身の「必要とされたい願望」に気付かず、「あなたのためを思って!」って完全に善意で干渉していく人はただの迷惑だし。自分がやってることが道徳的なこと、善意、って思い込んで他人に触ろうとするから。その触り方がめちゃくちゃ雑だったりして。

二村 善意、やばいね。「人のためになりたい」っていうのは非常にやばい。

 そういう雑なタッチをする善意の人って、自分と他人の距離感がわからなくなってる。すごい無遠慮だと思うんですよね。私はたまに近所のスポーツジムを利用するんですが、平日の昼間だとおばさんがたくさんいる。最初はなるべく話しかけられないようにちょっとハリネズミのオーラ出してたんですけど、それも大人げないかなと思ってある日「こんにちは」って挨拶するようにしたら、おばさんが「あらーあなた綺麗な髪の毛ね!」といきなり髪を触りやがって。ちょっと玄関開けると土足でリビングまでやって来る、みたいな。もう本当に勘弁して欲しいなって思ってて。どこまで入っていいのか、入っちゃいけないのか、ちょっと躊躇して考えてほしい。一瞬考える時間を持ってほしい。遠慮のなさはとても怖いです。自分はそうならないように気をつけようって思ってるんですけど。

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