社会

「米軍向けの性風俗を」発言は「一般女性を守るために風俗嬢を利用する」ことと同義 なぜいつも女性が犠牲になるのか

【この記事のキーワード】

韓国では日本の植民地期に港湾都市を中心に売春所が興隆しましたが、解放後はアメリカ軍が接収しました。例えば仁川市の場合では、アメリカ軍相手に1000人ほどの女性が売春を行っていましたが、事実上、韓国政府が管理しており強制的な性病検査、同意を得ない強制的治療などが行われ、命を落とす女性もいました。当時の韓国政府は「韓国を守ってくれる米軍を慰安するあなた方は愛国者だ」としていました。つまり韓国政府は「無垢な女性」「処女の女性」を米軍から守るための「肉体の門」として彼女たちを利用していたのです。Grace Cho氏の研究やJin-Kyung Lee氏の研究は、1940年代から50年代において、30万人を超える「米軍慰安婦」がいたとしています。また、韓国の複数の新聞が、1960年代の韓国で米軍相手の売春に従事していた女性は2万から3万名にのぼると報道しています。2014年6月には、元「米軍慰安婦」の女性122名が損害賠償を求めて国家を相手取る裁判を起こしました。弁護団は、国家が事実上、米軍基地における売春を誘導・拡大・管理・成長させたことは大韓民国憲法・法律に反するものであり、基本権の保護を怠ったと主張しています。

翻って沖縄の場合、こうした動きは今のところ見られません。

玉城福子氏の研究によれば、日本の敗戦まで、沖縄には日本軍向けの慰安所が136カ所設置されており、そこには朝鮮人、台湾人、沖縄人、大和人(内地の日本人)の女性たちが慰安婦をしていました。そして実態は同じ慰安婦であっても、強制連行された「朝鮮人=慰安婦」と「日本人(沖縄人、大和人)=娼婦」という描き分けが沖縄の住民たちの間で行われてきたことが指摘されています。当時、日本軍は慰安所の設置に際して、「“一般女性を守るため”の『慰安婦』」というレトリックを用いて、沖縄の住民を説得しました。沖縄に対する民族差別により、沖縄の女性たちが日本軍兵士によって強姦される恐怖が、この描き分けに「正当性」を与えました。そして、沖縄の人たちは、沖縄の女性と「慰安婦」を分断するレトリックを受容したのです。沖縄の人々にとって、慰安所とそこで働く「慰安婦」という自分たちとは「異質」の存在は、個人の家屋接収の原因であり、地域の風紀を乱すものであり、沖縄の人々にとって「共感不可能」な存在でした。しかしその一方で、慰安所の存在は、日本軍による沖縄の人々への差別や暴力、そしてそれに対する恐怖を象徴するものでもありました。慰安所の存在は沖縄の「犠牲」を描くものでありながら、「慰安婦」は朝鮮人であり、沖縄人・日本人女性ではないという、多重の描き分けをすることで、慰安所・慰安婦は沖縄の人々にとって「共感可能」「共感不可能」のはざまに位置づけられていたのです。

2013年に、橋下大阪市長(当時)が2013年に慰安婦問題について「米軍の風俗業の活用を」と発言し、その後撤回したことがありました。今回のレイプ事件を受けて、橋下元市長は再び「米軍向けの性風俗を作れ」という暴言を吐いています。このような発想は「国家権力にかけて守るべき無垢な乙女たちがいる。彼女たちを守るためには、そうでない商売女たちを利用すればいい」と言っているのと変わりません。 国家権力が、女と女を描き分け、国民にとって「共感可能」「共感不可能」の境界線を設けようとする発言です。

橋下氏が提言するまでもなく、沖縄には米軍相手の性風俗ビジネスが多数存在します。しかし、そこで働く女性たちは、「無垢な女性を守るため」「米軍の性欲や暴力のはけ口になるため」にその仕事を選んでいるわけではありません。そんな必要もありません。あまたある仕事の中で、さまざまな理由によって、その仕事に携わっているだけで、 日本人女性を守るとか、無垢な女性を守るとか、そんな大義名分を背負っているわけではありませんし、そんな必要もありません。

1 2 3

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。