
「女ひとり、家を買う。」Photo by Amanda B from Flickr
みずからの資金で不動産を購入した女性に取材する当連載。ただし、家を買うのはひとりでも、人間は他者とつながりながら生きているもの。実際、シングルの女性の多くは実家があり、頼り頼られる家族がいます。さらには友人がいて、生活を支える仕事もあります。ですから周囲との関係性を抜きに購入を決めるのはむずかしく、逆にいうと、ひとりで何もかもを背負う必要もないのかもしれません。
今回は、30歳のとき実家のご家族と住む一軒家を購入したという松本さんのお話から、シングル女性の住宅購入と、実家の関係について考えてみたいと思います。
薬品製造会社勤務・松本さんの場合
松本さんは千葉県柏育ち。29歳のときにお父さまを亡くされ、残されたお母さまと弟さん、ご自身の3人で住まうお家を買われたそう。千葉県の流山市は、2005年のつくばエクスプレス開業以来、都心への通勤も便利になりました。松本さんも購入以来ずっと都内の会社に通勤しています。
【松本さん&お部屋のプロフィール】
松本さん:40歳。薬品材料の受発注や管理。住宅購入時は30歳、いまも勤続中の会社に入社して4年目のころ。購入時の年収は620万円ほど。現在は購入物件に母と2人暮らし。
●購入住宅(一戸建て)
所在地:千葉県流山市 つくばエクスプレス流山おおたかの森から車で3分
専有面積:約110㎡(内56㎡ほどが、庭と駐車場2台分の占有面積)
築年数:新築(10年前の購入時)
間取り:2階建て 4LDK(間取りは6帖の洋室が2つ、7.5帖の洋室、6帖の和室、15帖のLDKにバスとトイレ2つ)
価格:3,500万円 (土地、建物、仲介手数料込み)
月々のローン返済:月々約10万円 35年ローン
――29歳でお父さまを亡くされて、残されたご家族の住まうお家を購入されたんですね。
松本「父が心筋梗塞で突然亡くなったとき、私は父母と賃貸マンションに住んでいました。弟だけがひとり暮らしをしていたのですが、彼もパニック障害のような症状が出て。それで、『これは家族みんなで一緒に住んだ方がいいのではないか』と感じ、一軒家を購入しました」
――お若いのに、ご自身で率先して家族の基盤を作られたとは、尊敬します。
松本「そのころ特に結婚の予定もなかったので、買ってしまいました(笑)」
――昨今その年ごろでは結婚はまだまだ……というケースも多いのでは。でも、不確定要素が多い年代ではありますね。当時は入社4年目だったということですし。購入後、仕事が変わったり、結婚相手によって生活スタイルが変わったりといったことは、心配されませんでしたか?
松本「あまり深く考えなかったですね。仕事に関してはつくばエクスプレスのおかげで都心へのアクセスがよいので、もし転職したとしてもなんとかなると思いました。実際には転職せずに、ここまで働いてきましたし。結婚も、相手にちゃんと収入があれば、どこに住もうと私も働いて実家のローンを払えばいいわけです。私がいなくなっても弟がその家に住んでくれれば、母のことも弟のことも安心ですから。弟はパニック障害的な症状が癒えてからも、30歳で脳梗塞を患ったりしているので、心配なんですよね」