女子教育を軽んじる日本の政治家 男子教育よりも女子教育の優先順位が高い理由

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教育政策の優先順位をどのように考えるか

一部の国や自治体を除けば、政策のために予算や人材を無尽蔵に使えるわけではないので、どの政策を優先的に実施するかを考えなければなりません。もちろん、前回お話した、教育の投資収益率(投じたコストに対してどの程度のリターンがあるか)は、教育政策の優先順位を考える上で最も重要な要素で、収益率の高い教育政策ほど優先して実施されるべきだと考えられます。しかし教育の投資収益率が大きい教育政策をとにかく優先すればよい、というわけではないのです。どの層をターゲットにするのか、すなわち平等性への配慮も重要な基準となってきます。これは、格差の解消そのものが政策ターゲットとされるべきものである上に、格差の小さい社会ほど経済発展の速度が速いとされているからです。

より教育政策にフォーカスすると、例えば私の仕事では相手政府から「富裕層の子供に世界トップクラスの教育を受けさせて国会のリーダーたる人物を育てる教育政策か、貧困層の子供が充実した基礎教育を受けて貧困の連鎖から脱出できるような国家の底上げを図る教育政策か、どちらを優先すべきか?」と尋ねられることがあります。その国の経済に与える影響を考えると、どちらの教育政策も費用対効果はほぼ同じという結果が出ているのですが、中長期的な影響を考え、私は以下の3つの理由により貧困層の子供を優先すべきだと答えています。

1.富裕層が富むことが貧困削減に繋がるわけではない
富裕層が富めば、時間をかけてその恩恵が中流階級や貧困層へと浸透するという説(トリクルダウン仮説)に基づく政策は、これまで何度も国際協力の世界で唱えられてきたが、その都度失敗している。富裕層が富めばそれが自動的に貧困削減につながるわけではなく、手を打たないと格差が広がり、それに伴い治安も悪化する。

2.治安の悪化・格差拡大がコストを増大させる
格差が広がり治安が悪化すると、経済に悪影響を及ぼす。極端な例を出すと、マラウイのような貧しいけれども平和な国では、地方の学校に教科書を届けるのに何の配慮もいらないが、紛争国の場合、近場に物資を届けるためであってもコンボイを組んだり、空輸をしたりと、多大な費用が必要になることがある。つまり貧困層への教育が十分に行われず、格差が放置され治安が悪化すると、本来ならば必要ないセキュリティが必要になり、取引コストが大きくなったり、商業活動が停滞したりしてしまう。

3.大きな政府になりすぎるのもよくない
治安が悪い・格差が大きいという状況は、それ自体が経済発展の足かせになりうるだけでなく、治安対策や格差対策のための政府支出も必要になる。そして、政府支出を賄うために高い税率を課せば、外国からの投資なども呼び込みづらくなる。それだけでなく、国や自治体は民間企業に比べて非効率なことが多く、さらに民間事業を締め出(クラウドアウト)してしまう可能性を否定しきれないので(例えば、平等性や多様性という観点を無視して効率性という点にだけ絞った場合、公立学校よりも私立学校の方が良いと考える人も多いと思われるが、公立学校の存在は私立学校を教育セクターから締め出している、とも考えられる)、不必要に大きな政府になるのもあまり好ましいものではない。現在の貧困層の子供たちに投資することで、未来に政府が肥大化することを防げるのであれば、それは優先すべきであろう。

このように、教育政策の優先順位を考えるときには、どれぐらい経済成長を誘発できるのか(費用対効果・私的収益)社会へのメリットがどれぐらいあるのか(社会的収益)に加えて、中長期的な経済発展の観点から、その教育政策がどれぐらい社会の平等性に資するか、も考慮する必要があるわけです。

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