被害に遭うのは女性だけではないという意識を
法整備が順調に進んでいる一方、「男性は性被害に合わない」という固定概念は国の組織でもまだ根強く残っています。
例えば、警視庁の「性犯罪被害相談電話設置一覧表」に掲載されている54の窓口の内、名称に「女性」「レディース」「ウーマン」という文言が入っているものは22カ所。逆に、男性専用と明記された相談窓口はありません。
また、東京都の「性教育の手引き」では、性被害に関する学習内容・活動として「被害者は男性が多いと思うか女性が多いと思うか考える」ということを挙げ、教師の関わりとして「被害者に女性が多いということとその背景には、どのような考え方と行動があるかを考えさせる」という記載があります(P62)。
もちろん女性の被害者(認知件数)が多いというのは事実です。またこのことは、なぜ女性が被害にあいやすいのか、社会的な背景を考えるきっかけになるでしょう。しかし、だからこそ、男性も被害者になりうるという意識を子どもたちに持たせることで、被害者の思いやおかれている状況を理解しやすくなるのではないでしょうか? なお、宮城県の委託を受けて運営されている性暴力被害相談支援センター宮城では平成25年以降、週1回男性相談員による相談を受け付け始めるなど、徐々に問題意識を持つ自治体が現れているようです。
法律が変われば、「男性も性被害に遭う」ということ意識が広まり、男女問わず性被害の防止・抑制や対応に向かっていくのでしょう。ただ法整備には時間がかかります。法改正がなされるまでの間、少しずつ人々の意識を変えていけるよう、まずは「女性」と限ってきた表現を「男女関係なく」に変えるところから国は始めてみるのもいいかもしれません。5月25日の審議会の議事録はまだ公開されていないため内容は確認できませんが、今回の審議が法改正に向けて大きな一歩となることを願うばかりです。
(此方マハ)