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KABA.ちゃんの胸を後輩に触らせようとするSMAP中居の行為はハラスメントか? セクハラと冗談の境界線

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セクハラと冗談の境界

「企業法務総合サイト」で紹介されている、雇用機会均等法が定義する、職場におけるセクハラは以下の通りである。

「職場におけるセクハラとは、職場において相手(労働者)の意思に反して不快や不安な状態に追いこむ性的な言動起因するものであって、(1)職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること、又は(2)職場において行われる性的な言動により労働者の就業環境が害されることを意味します」(セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)の定義・種類

職場で不利益をこうむったり労働環境が悪化するような影響を及ぼす、性的ないやがらせや言動のことをセクシュアル・ハラスメントと指している。上記サイトでも示されているが、女性から男性に対する性的言動、いやがらせはもちろん、男性から男性、女性から女性に対するそれも、もちろんセクハラに該当する。

冒頭で紹介したやりとりを指して、同性間で行われる冗談めいたものと解釈したとしても「触られるのは嫌」と答えた人もいた。上記のセクハラの定義から外れるが、職場や仕事とは無縁の場であっても、不快な性的な言動にさらされる事態は避けられて当然である。つまり、相手の意志が排除されたり抑圧されている状況において、性的な言動が繰り広げられ、いやがらせになる場合が問題なのである。

KABA.ちゃんの胸へのタッチに話を戻そう。中居は「男だからいいよ、触ってみて」と言っていた。こういった「男だからいいよ」という理由付けで性的ないじりにあうケースは、彼女と同じ、MtF(Male to Female、男性から女性化した人)トランスジェンダーがよく見舞われる事態だ。男性間で、相手を「下げる」コミュニケーションはよく見られる。相手の身体的な特徴をいじり、下げの応酬をし、笑いあう。それを信頼関係の構築だと思い込んでいる人は少なくない。KABA.ちゃんのようにSRSを受けていようが、戸籍の性別を変更していようが、「元男性だから」というだけでその手のコミュニケーションが適用されてしまうことがあるのだ。中居からの「男だからいいよ」という指示には、そういう乱暴な決め付けによる関係性がうかがえる。

また、ネット上でKABA.ちゃんの対応について、「胸を触らせている時点で女じゃない」と断罪する声もあった。こうして、「女はこうあるべきだ」という規範を押し付けてくるのも別種の性的抑圧であるし、MtFが遭遇しやすい暴言だ。

私事で恐縮だが、こういう出来事が過去にあった。ある年長の男性とその部下の男性と、わたしの友人と4人で飲んでいた。その年長の男性は、生来の女性である友人とわたしの身体的特徴や性格を比較し、「もっと女らしくなれよ」というようなことを再三繰り返した。わたしがはっきりと不快感を伝えたところ、「こういうのは笑って済ませないと、この先やっていけないよ」というようなことを言われた。また、別の年長の男性から「シリコン豊胸しないの?」と言われたこともある。もっと言えば、ショートカット〜ボブのわたしに対して「なんで髪を伸ばさないの?」と繰り返し尋ね、ロングヘア=女らしいという論理を遠回しに押し付けてくる人たちに対しても、少なからず不快感を募らせている。

繰り返しになるが、こうした話においては性的な言動にさらされた本人が不快かどうか、が重要である。豊胸したり、性的アピールを増すような容貌を求めることも、自分自身が選ぶものであり、他人から押し付けられるものではない。

相手を慮りすぎると気楽な付き合いができくなってしまうのは確かだ。軽口や与太話のすみずみにまで気を配れと言うつもりはない。しかし、職場や仕事関係など利害の絡む場面ではない、友人関係などプライベートな場合でもあっても、はっきりと断りづらい状況というのはあり得る。そういうときに、どういう気配りをしたら良いのか、わたしには明確な答えがない。親しい間柄であっても、相手の反応をちゃんと見て、自分の道理を押し付けるような真似はしたくないという心構えをする、くらいのことしか思いつかないのが口惜しい。しかし、そう意識するだけで大きな違いが生まれるのかもしれない。「信頼関係があるから何をしても大丈夫だ」という友情論を持ち出すとしたら、それは傲慢だ。信頼関係を築けていれば、不用意に相手を傷つけるような場合があっても、相手から正直な気持ちが聞けるし、改善の余地が生まれるのではないだろうか。

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