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「自傷する女性を救うのは異性ではない」。精神科医師の実感

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自傷する子どもの後ろにはリスクを抱えた大人がいる

――選択肢としてどのような相談機関があるのでしょうか。

松本:保健所や、精神保健福祉センターは一つの選択肢ですが、子ども達はそれを知りません。また学校は、内部で解決したがる傾向があります。スクールカウンセラーやソーシャルスクールワーカーが入って、学校が昔よりもメンタルに気を使っているように見えますが、裏を返せば、学校の先生が保健所のような行政機関に相談しなくなったとも言えます。

先ほど、自傷行為には自殺リスクがあると言いましたが、そういった子どもたちの背後には、自殺リスクの高い大人がいると言われています。お母さんがうつ病で寝込んでいたり、お父さんがアルコール依存症であったり。ですので、子どもだけではなく、その家自体の支援が必要な場合もあるんです。その点からも、学校だけで解決するのではなく、行政につなげていくことによって、総合的にその子をサポートすることができます。外の機関に生徒の恥を知られるのはよくないと思う先生もいるようですが、家族の事情まで学校の先生が背負うことは無理です。さらに、学校が支援できるのは学校にいる間ですので、継続的な支援のためには外の機関につなぐ方がいいのです。

難しいのは、進学校では住んでいる地域と通っている学校が離れていたりすることです。さらに、大学生になると、家に居場所がない子に限って、地元を離れて一人暮らしをはじめます。都会で新しい人生を生きようとしますが、生きづらさはそんなに変わらないですし、友人とは軋轢があったりして、だんだん学校から遠ざかってしまう。お金があるときは、保険証を使って精神科に通うのですが、うまく自分を表現できず、医者から適当に流されて、過剰服薬するのにいい道具だけもらいます。ときどき救急車騒ぎを起こすけれども、また一人暮らしの家にもどって……静かにだんだん死に傾いてしまうケースがある。そういう学生について、大学が行政機関とネットワークをくんで支援しているのかというと、現状は厳しい状態です。

これは余談ですが、郊外の新しくできたキャンパスの生徒の自殺率は高くなるんですよね。学校で勉強する以外楽しい場所がないような場所は、学校の人間関係で息詰まると居場所がなくなります。本当は学校の外に呑み屋や雀荘のような場所があって、いろんな人たちが多様性に触れることができたらいいと思います。

本当の自殺教育

――学校で自傷について教育する際に、注意する点などはあるのでしょうか。

松本:学校で自殺防止の講義をやるとき、よく「命の大切さ」を説くような人を呼んでしまうんですよね。でも、そんなことを言われても、「お前に私のなにがわかるか」という気持ちになるでしょう。「自分の身体を傷つけることが不道徳だ、反社会的だ」と言われたあとに「よし、じゃあ先生に相談しよう」と思う人はいません。もともと自殺リスクの高い自傷している子をより追い詰めることになっているのです。

それよりは、もっとメンタルヘルスの問題について、特別視せず話せる環境をつくった方がいいでしょう。人間は人生の中で3割ほどの人がうつ病の診断基準に満たす状態になると言われています。それくらい、メンタルヘルスの問題はありふれているのです。

ですから、自傷はいいことじゃないけれど、もしそういう友達がいたら、阻害するのではなく声をかけよう。その友達が「親や先生には言わないで」と言うかもしれないけれど、「自分は助けてあげたいけど、専門家じゃないから助けられない。それなのに内緒にしておくのは、本当に友人がすることかな。あなただったらどう思う?」とネゴシエーションするテクニックまで教えてるのが、本当の自殺防止教育だと思います。

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