「女性の大半は、憲法については基本的なことがよくわからない」というのが実情なんですよね。」
せいろん女子会・園田さん(『正論』日本工業新聞社/2016年7月号)
保守雑誌『正論』がこの3月号からはじめた、若い女性たちに愛国心を語ってもらう座談会企画「せいろん女子会」。数回前の本連載でも取り上げたが、ここに登場する保守女性たちは「山登りが好きな『山ガール』風にいうと、保守系女子ではなく、『おめざ女子』」だそうで、「おめざ」になれない人のことを「百均で売ってる中国製品のような人間」などと形容し始める、同誌でお馴染みの論調を“女子”の口からポップに展開してもらう連載である。
選挙が近付いた最新号の議題は、「『憲法はアメリカ製だからダメ』を女性に理解してもらうには」。出席者の佐々木さんが言う。「アメリカが作った日本国憲法で、日本人が大事にしてきた伝統的価値や文化は否定されてしまったわけです。そのことを自分に引き寄せて考えられたらと思うのよね」。ゲストとして招かれた熊本大学教授・高原朗子は、おめざ女子を育てる勉強会「憲法おしゃべりカフェ」で、日頃このような例え話をして、憲法改正の必要性を訴えているという。
「今は米軍がドラえもんだけど、アメリカというドラえもんがおうちに帰ろうとしているから、日本の自前のドラえもんが要るよね」。沖縄の現状を見ていれば、ドラえもんではなくジャイアンであることは一目瞭然なのだが、話はいつの間にか膨らみ、熊本地震を経た今、やっぱり緊急事態条項は必要だと思う、という『正論』の持論が繰り返される。
参加者の1人、園田さんは、そういったことはこの雑誌の読者ならば当たり前にわかっているけれど、「『女性の大半は、憲法については基本的なことがよくわからない』というのが実情なんですよね」と語る。だから偏向メディアに騙されずに、私たちが正確な情報を提供していくしかないし、「その覚悟を持っていない男性が多いように見えるのは私の誤解でしょうか。男性陣ももっと奮起していただければと思います」と謎めいた申し立てをしたところで座談会が終わる。この連載の特性である、男性達の持論を女性が代弁しながら、ちょっとだけ男性に物申す、というスタイルが今月もまた完遂される。
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投票率の低下は由々しき事態だし、18歳以上に引き下げられる今回の参院選を前にして、若者にその作法をレクチャーしたくなる気持ちもわかる。しかし、その中には、今回挙げたような、「おバカな女の子に政治のこと教えてあげなくっちゃ」との姿勢に満ちた企画をいくつも見つける事ができる。若者たちが、そして女性たちが当たり前に持っている主体性で、思うままの判断を下せばいいだけなのだが、なぜか、方々から「僕たちが教えてあげますよ」と近付いてくる。是非とも、「あ、そういうの、間に合っていますので」と冷たく断って、自分の尺度で選んでいただければな、と思う。