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男はなぜ枡野浩一の言葉に苛立ちを感じるのか? あぶり出される「嫉妬と脅威」

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内面をスラスラ言語化していく男性に対して抱く嫉妬と脅威

 そんな認めがたいジェンダー観があぶり出されて以降、苛立ちは憧れへと一気に反転し、「俺も心の中身をそのまま正直に吐露してみたい!」という気持ちが募っていきました。

〈普通なら言わないようなことを私は平気で言ってしまうらしい。その結果「おおやけの場であそこまで言うのだから内心どれほどのことを考えているのだろう」と周囲からおびえられてしまう。でも私は言ったことしか考えていなかった。書いたことしか考えていなかった〉

 これは、正直すぎるがあまり他者とぶつかってしまう性質を著者が自己分析しているくだりですが、私にとって、最後の一文が衝撃的でした。

 書いたことしか考えていなかった──。つまりこれは、言葉と思考が直結しているということです。こんなこと、なかなかできる芸当ではありません。思考や感情を言葉に置き換えていくためには、強靱な言語化能力が求められます。これは筋肉のようなもので、鍛えないと強くならないし、すぐに衰えてもしてしまう。そう考えると、枡野さんがアスリートのようにも見えてきました。

 一般的に男性は、弱音を吐くことが苦手と言われています。男性の生きづらさを研究する男性学という学問では、これを女性に比べて約2倍も高い自殺率の一因と捉えています。

 弱音を吐けないというのは、つまり自分の感情を正直に言語化できないということです。これは「本当は苦しいと感じているのに、見栄やプライドが邪魔して苦しいと言えない」ではなく、「自分がどう感じているかすら把握できていない」ということなのだと思います。心や身体が発している声を拾えない──。これが男性の弱点だと思います。

 だから男は、枡野さんのように自分の内面をスラスラ言語化していく男性に、内心で嫉妬と脅威を感じているのかもしれません。それは何というか、流暢に外国語を操る人に対して感じる気持ちにも似ている。

 もちろんこれは一朝一夕で身につくものではありませんが、我々男はまず、「自分が発している言葉は、自分の考えていることや感じていることをそのまま表現したものではない」という事実を認めるべきだと感じます。言語化能力は低いし、「見栄」や「プライド」といったバイアスによって認知が歪みまくっている。自分の言葉は自分の思考や感情をそのまま言い表したものではなく、その間には常にズレや言い足りなさが存在している。これを、我々男はまず自覚すべきです。

 ……って、何だか段々「枡野さんの威を借りて男性性を批判する」という卑怯な構図になってきました。でも、内面をそのまま正直に吐露するというのは、むしろこれからの男性に必要な力のはずです。エリートビジネスマンが自己啓発本ではなく本書を読むような社会になって欲しいと、切に願って止みません。(清田代表/桃山商事)

『愛のことはもう仕方ない』刊行記念トークイベント開催します

第一弾ゲスト:エッセイスト・紫原明子さん

▼開催日時
2016年6月18日(土)12時30分開場/13時開演(~15時頃終了予定)

▼場所
サイゾーイベントスペース
東京都渋谷区道玄坂1丁目20−8 寿パークビル2F

▼内容
トーク終了後に物販、サイン会あり

▼定員
50名
(ご予約多数の場合は先着順となります。ご承知ください)

▼チケット料金
500円
(当日、入場の際にお支払いをお願いいたします)

▼イベント予約ページ/枡野浩一×紫原明子 2016.6月18日
<こちらからご予約ください>
※ご予約いただいた方には、後日スタッフから確認のメールをお送りさせていただきます。

第二弾ゲスト:写真家、作家・植本一子さん

▼開催日時
2016年6月25日(土)16時30分開場/17時開演(~19時頃終了予定)

▼場所
サイゾーイベントスペース
東京都渋谷区道玄坂1丁目20−8 寿パークビル2F

▼内容
トーク終了後に物販、サイン会あり

▼定員
50名
(ご予約多数の場合は先着順となります。ご承知ください)

▼チケット料金
500円
(当日、入場の際にお支払いをお願いいたします)

▼イベント予約ページ/枡野浩一×植本一子 2016.6月25日
<こちらからご予約ください>
※ご予約いただいた方には、後日スタッフから確認のメールをお送りさせていただきます。

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