社会

AV出演強制事件から、芸能界という「労働環境」を問う

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AVの撮影は売春ではない

「火のないところに煙は立たない」と考える人も多くいると思います。しかしながら「AV」という業界は、そもそも「潔癖」とは縁遠い印象が強くあるでしょうから、「火がない」状態を求めるというのも無理な話です。

そもそも「火がある」と思われているAV業界には「グレーゾーン」「ブラックゾーン」「ホワイトゾーン」があるのでしょうか?

ご存知の通りAVでは多くの場合、挿入を含むセックスが行われています。「セックス」を金銭でやりとりすることの合法性・違法性は、売春防止法、風営法、公然わいせつ罪、わいせつ物陳列罪などの複数の法律によって規定された状況から判断されます。このうち売春防止法では、「管理売春」が禁止されています。「管理売春」とは、売春を行う当事者を管理して商売にすることであり、売春・買春そのものを禁止しているものではありません。。そして売春防止法によって処罰されるのは斡旋している風俗業者であり、実際にセックスを売買している当事者ではありません。AVの場合、女優・男優が金銭を受け取るのはセックスの対価ではなく、作品への出演料ですからこの「管理売春」には該当しないでしょう。そして、本人たちが合意しており、また他の法律に抵触しない限り、AVの中でいかなるセックスをしていようとも、そのセックスは合法とされます。

今回問題になっているのは、この「合意」のあり方です。AVであっても、合意のないセックスは強姦や強制わいせつなど複数の罪に問われるほか、それがAVであれば、撮影者は共犯となります。つまり、もし出演女優が「○本のビデオに出演します」という契約をしていたとしても、直前で「やっぱり嫌です」という意思表示をしたのに無理やりの出演でセックスをさせられるようなケースがあれば、セックスをした男優は強姦罪に問われ、制作会社・撮影者はその共犯とみなされるのです。

芸能人は「労働者」なのだろうか?

今回「マークスジャパン」の元社長らが逮捕されたのは売春防止法でも風営法でもない、「労働者派遣法違反」容疑で立件されたのは、AV業者が売春防止法などの法律に本来的には該当しないためでした。

ではなぜ「労働者派遣法」によって立件されたのでしょうか? 実は「労働者派遣法」には「公衆道徳上有害な業務」を派遣労働者にさせないことを規定しています。つまり今回の逮捕は、マークスジャパンに所属する女優の「 AVメーカーに派遣されAVへの出演を強いられた」という主張によって、「マークスジャパン」が「公衆道徳上有害な業務」に抵触しているという疑いが持たれたことで起きたわけです。

それを知って私はふと考えました。はたしてタレントや俳優は「労働者」なのでしょうか? そこで労働者派遣法がどのように「芸能」「エンタメ」業界に適用されるのかについて調べてみました。

まず、俳優が労働者かどうかは、俳優自身が独立した個人事業主なのか被雇用者なのかによって決まります。たとえばハリウッド俳優は基本的には自分自身が個人事業主であり、それぞれがエージェントを雇う立場なので、いわゆる労働者ではありません。一方、芸能プロダクションと雇用契約を結んでいる場合、その俳優・タレントは労働者となります。

労働者と雇用契約を結び、雇用者に労働をさせ、雇用者はその対価として賃金を得ていれば、芸能プロダクションであろうとも当然ながら労働基準法・職安法・派遣法などの労働に関する法律の規制の範疇になります。

一方で、プロダクションに所属していても、事業者性が高いケースというのもあり、この場合は労働者には該当しません。

たとえば、プロダクションとマネジメント業務委託契約を結んでいる個人事業主という扱いである場合、俳優・タレントは派遣法の対象ではなく、あくまでも個人事業主という扱いになり、すべてが「自己管理」に帰されることになります。

今回の事件が労働者派遣法違反容疑によるものだということは、マークスジャパンというプロダクションが、訴えを起こした女優を雇用していたとみなされたのだと推測されますが、もし彼女が個人事業主であった場合にはまた違う法律が適用され、出演強要について彼女を救済するような措置が取られた可能性があるように思います。

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