セックスは「公衆道徳上有害」なのか?
ここまで調べて、そもそもセックスは、労働者派遣法が規制している「公衆道徳上有害な業務」にあたるのだろうか? という疑問がわいてきました。
たとえば、アイドルがきわどい水着を着て写っている写真や、映画やドラマで濃厚なキスシーンやベッドシーンをしている映像は「公衆道徳上有害な業務」ではないのでしょうか? その線引きはどこにあるのでしょうか? 「挿入」しているかいないかでしょうか?
派遣法にしても、いわゆる直接雇用者に適用される職業安定法にしても、「挿入はアウト」「セックスはダメ」とは一切書かれていません。何が「公衆道徳上有害な業務」なのかは、時代や弁護士・検事・警察などの事件担当者の考え方によっても解釈が別れるものなのではないでしょうか。
先にAVはそもそも「潔癖」とは縁遠いと思われている業界だ、と述べました。「潔癖」かそうでないか、「道徳的」かどうかは、ある程度は当事者が決めることである一方、時代や状況によって社会が決めるものでもあります。もちろんセックスを強制することはいかなる状況であれレイプですが、「セックスしている」ことがそのまま公衆道徳上有害な業務=違法というのは非常に抑圧的な解釈であるように感じます。
闇の中にある「芸能界という労働環境」
最後に、今回の事件を見ていて最も疑問に思ったのは、そもそもAV女優のプロダクションは、こういった訴えを起こされることを予見せずに女優を雇用してきたのだろうか? という点です。なぜ個人事業主とのマネジメント業務委託契約という形式ではなく、わざわざ火の粉が飛ぶような雇用契約を結ぶのでしょうか? 所属女優が雇用契約ではなくマネジメント業務委託契約、つまり女優を個人事業主として扱った場合、一体どのような不利益がプロダクション会社に起こるのでしょう? 個人事業主であれば、強制出演は免れるのでしょうか? また、女優にとって個人事業主であるのと、被雇用者であるのはどちらが良い労働条件を引き出せるのでしょう?
私は芸能界については全くの門外漢ですが、単にAV業界だから、ということではなく、芸能界という一般人にとってわかりにくい業界で「働く」ということ全般について、もっと情報がオープンになれば良いのに、と思います。たとえば、ちょっと前に話題になったSMAPや能年玲奈さんなどの件なども、「芸能界の労働環境・契約」問題という側面から考えれば、今回の問題と共通点があります。今回の強制出演が事実であるならば、将来芸能界に入るであろう少年・少女やその家族、一般の人たちに「芸能界という労働環境」に関する様々な情報を共有することで、出演強要のような事件を未然に防いでいく努力を芸能界側がしていく必要があると思います。
参考
http://www.sankei.com/affairs/news/160612/afr1606120006-n1.html
http://girl-secret.com/marks/
https://twitter.com/saki_hatsumi/status/741870905505120260
http://matome.naver.jp/odai/2146577962270630801
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160403-00004489-bengocom-soci
https://www.bengo4.com/c_5/c_1629/c_1310/b_286446/
https://www.bengo4.com/c_1009/c_1198/b_238854/
http://www.jil.go.jp/rodoqa/07_jinji/07-Q01.html
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S60/S60HO088.html