
Photo by Kobayashi Mako from Flickr
高校生の「性」をめぐるニュースが続いています。一つ目は妊娠した女子高校生に学校側が持久走の実技を要求したという件。そしてもう一つは、セックスをしたからと退学させられた男子高校生の件です。
最初のニュースは、学校側が妊娠5カ月を過ぎていた3年生の女子生徒(18)に対して、体育の成績が「1」になると卒業できないなどとして体育実技を行うよう指導していた問題です。この女子生徒は、同級生と同じ時期に卒業したかったそうですが、結局、三学期から休学したそうです。
この高校の副校長は「全日制では学業と出産・子育ての両立は難しいと考え、休学し通信制に移るよう勧めた」と説明していますが、「体育ができないために卒業できない」ということならば、「他の生徒と同じように体育を行うことが困難な身体障害を持っている生徒は、普通科全日制には来るな」と言っているのと同じようなものです。ハンディキャップがあり、配慮が必要である人に「通常」の人と同じことを求めているわけです。そしてきっと、この学校の先生たちは、身体障害によって体育ができない生徒には、妊娠した女子生徒が課せられたような過酷な条件を求めることはなかったはずです。同じ「配慮が必要な生徒」であっても、「妊娠」だったからこそ非情な罰を下したのではないでしょうか。
高校生のセックスは罪?
現代の日本社会で、高校卒業資格が無いことは就職にも将来進学を希望した時にも、大変な苦労を味わうことを意味します。諸外国においても高校は義務教育であり、日本でも事実上、義務教育として扱われています。一般的に考えられる「最低限の教育」レベルを持っていない人は、社会経済的に大きなハンデを背負うことになります。教育者が優先すべきは、「休学しろ」「通信制に行け」「体育ができないなら卒業できない」と脅すのではなく、妊娠した女子生徒がいかに退学せずに、そのまま高校に在籍しながらほかの生徒たちとともに卒業することができるかを一緒に考えることでしょう。しかも、すでに高校3年生だった生徒にとって、卒業は目前だったのです。
アメリカでは、在学中の生徒が、妊娠や出産、産後ケアのために学校を「産休・育休」することは憲法で認められた権利であり、生徒たちがいつ学校に戻っても、妊娠・出産前のステータスに復帰でき、生徒たちの教育の権利を保障することは学校側に課せられた義務となっています。同時に、学校側は妊娠・出産のために欠席した授業を特別に補講するなどの努力もしなければなりません。
今回の件で、こうした配慮が行われなかったのは、教師たちが「妊娠はセックスした生徒の自己責任であり、私たちにお前を助ける必要はない。それどころか生徒は社会的に罰せられるべきである」という、生徒に懲罰を課すような考えをもっていたからではないでしょうか。
問題の根底には「交際相手と性行為をして退学させられた高校生」の件と共通する、セックスをタブーとみなす価値観があります。
ニュースによれば、彼は高校在学中に交際相手と性的行為をしたことを理由に退学を勧告され、転校を余儀なくされ、指定校推薦で進学が決まっていた大学からも合格を取り消されてしまったそうです。男子生徒(現在は大学生)は、この処分は社会通念上行き過ぎで違法だとして、学校と校長に損害賠償を求めて訴えを起こしました。
いずれの事件も根底にあるのは「高校生が性行為をすること」に対する、学校関係者の厳しい姿勢です。
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