セレブの「フェミニスト宣言」ブーム クールでポップなフェミニズムはいつまで続く?

【この記事のキーワード】

フェミニズムがトレンドと化したことこそが、ゼイスラーがこの本の執筆を決意した理由だという。トレンドになることによって、人々のフェミニズムの理解も変化していく。ゼイスラーが捉えようとするのは、それまでのフェミニズムが、どのように変形されてこの「クール」なトレンドとしてのフェミニズムとなったかだ。この種の変形したフェミニズムに関わる現象は、これまでも「ポップ・フェミニズム」「フィールドグッド・フェミニズム」「ホワイト・フェミニズム」などと呼ばれ議論されてきたが、ゼイスラーはそれを「マーケットプレイス・フェミニズム」と名付け、その特徴を以下のように述べる。

「マーケットプレイス・フェミニズム」は、「脱文脈化」「脱政治化」されており「おそらくこれまでで一番人気のあるバージョンのフェミニズムである」。メインストリーム、セレブ、消費者によって受け入れられたこのフェミニズムは、クールで楽しくてとっつきやすい、皆が選択することができるアイデンティティとして売り出されている。「マーケットプレイス・フェミニズム」において「フェミニズムという語は今や、強さ、自信、富、幸福といった言葉と置き換え可能なものとして使われている」。そして、ゼイスラーが強調するのは、フェミニズムが個人化されていることだ。「マーケットプレイス・フェミニズム」では、フェミニズムが、活動家たちによる幅広い運動であるよりも、あるいは変革のための行動について語るやり方・手段であるよりも、個人が、自身のアイデンティティについて語るやり方・手段になっている、と。

メディアは、セレブがフェミニストと宣言すること、フェミニスト的視点から問題提起することを「勇敢だ」「かっこいい」と持ち上げるものの、現実に存在する様々な問題への取り組み方は問わない。「セレブにはフェミニストとしてのアイデンティティを、行動で裏付けるための現実的な動機が存在しない」と考えるゼイスラーは、例えば「2014年度トップフェミニスト」に輝いたエマ・ワトソンも、出演作で演じる役の描かれ方をフェミニストとしてどう考えるのか、というような発言をしないし、メディアもそのことを質問しないと批判する。「セレブにフェミニズムをどう定義しますかと質問する代わりに、自身の仕事の領域や属するコミュニティにおいてどういう風にそれを実行に移すのかを聞かなくてはいけない。大義を訴えるスピーチを行った時に着ていた衣装に注目するのではなくて、彼女たちのメッセージを増幅する道もあるのだ」とゼイスラーは書いている。

以上のようなゼイスラーの議論には、昨今のフェミニズム・ブームをまず、セレブ、メディアが関わる現象として批判的に見よう、という姿勢が表れている。問題にされているのは、個々のセレブの考えではなく、セレブという存在のあり方、その振る舞いの傾向である。セレブの社会運動、社会問題への関与を振り返ってみれば、これまでも、環境問題や、エイズに関する啓蒙活動、反戦運動などを、セレブたちがこぞって熱く語り、やがて冷めていった歴史がある。そこに今回新たにフェミニズムが加わっただけではないのか(そしてそれは次なる大ブームに道を空けるように次第に消えていってしまうのではないか)とゼイスラーは指摘する。

「(これでは)セレブがフェミニズム運動に加わるようになったというより、フェミニストがセレブ運動に組み込まれるようになったかのようだ」と書くゼイスラーは、「セレブ運動」の側面が強い「マーケットプレイス・フェミニズム」の盛り上がりの一方で、実際的な「フェミニズム運動」が前進しない現状、「フェミニズム運動」を必要とする様々な問題によって世界は相変わらず脅かされている現状に目を向けさせる。

1 2 3

「セレブの「フェミニスト宣言」ブーム クールでポップなフェミニズムはいつまで続く?」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。