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「レイプもセックスだと思ってた」…まともに教えず、男を誤解させる自民党の政治的性教育

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「レイプはセックスのバリエーション」という男子学生の声

清田 性教育は僕らの人生に関わる重大な問題なのに、そこにまさか政治的な権力が介入していたとは……ちょっと驚きでした。

村瀬 僕は昔から、性というのは政治の「政」、宗教の「聖」、そして人生の「生」と、全部の“せい”がつながったひとつの問題だと学生に言ってきました。性って、単にセックスの「性」だけを考えていてもわからない問題なんですよ。

清田 なるほど。日本では意識するシーンは少ないかもしれませんが、宗教的な戒律というのも、確かに性の問題と深く関わっていますよね。

村瀬 もちろん、性に絶対的な正解があるわけではありません。個人や社会の価値観が反映される問題であり、客観的な事実を学んだ上で、それぞれがそれぞれの性のあり方を模索していくしかないでしょう。しかし、「学ばない」というのは恐ろしいことです。例えば昔、「レイプが女性の人格を切り裂く殺人的行為だなんて考えたこともなかった。セックスのバリエーションのひとつくらいに思っていた」という感想文を書いてきた男子学生がいましたが、僕はこれに大きなショックを受けた。学ばないとは、こういうことなんです。

清田 まさに、誤解や偏見の渦に巻き込まれたことによって、とんでもない誤認識が起こっている。

村瀬 そうなんですよ。だから性教育というのは、新しい知識を学ぶことだけじゃなく、間違った知識を「学び落とす」という行為でもある。

清田 本当にその通りですね。自民党は「性教育は余計に性を乱す」と言いましたが、むしろ性を乱しているのはそっちだろって話ですよね。しかも、これからますますその方向に進みそうで、ちょっと怖いです……。

村瀬 子どもたちが性の関心や主体性を持つことは、心身の健康に関わる大事な問題なのに、それを非行とみなして抑制するような動きは昔から存在している。僕もそこをずっと心配し続けています。

清田 これって子どもだけの話ではなく、我々のようにすでに成人している人間にも関係する問題ですよね。大人だからといって性の正しい知識やリテラシーが身についているかというと、全然そんなことはないわけで。

村瀬 そうですね。今はネット環境が行き届いたこともあって、お手軽に性的刺激を得られる時代になっています。そういう中では遠回りで面倒くさい考えに思われちゃうかもしれないけど、やはりまずは「性とは何か?」というところから考えて、きちんと事実を積み上げていくことが大事でしょう。近年「性の多様性と人権」という課題もクローズアップされてきましたしね。

清田 自分含め、大人の男性こそ根本的な部分から学び直す必要があると感じました。

村瀬 性を学ぶというのは、単に失敗しないため、問題を起こさないためというばかりでなく、自分の心と身体を知り、相手と幸せな関係を築けるようになるというプラスの側面も多々ある。そこもどうかお忘れなく(笑)。

清田 僕も泣きながらチン毛を剃っていた日々からしっかり人生を振り返り、「政」「聖」「生」の観点から自分の性というものについて自己分析を進めていきたいと思います!

先生、ありがとうございました!

先生、ありがとうございました!

■今回の先生■

村瀬幸浩(むらせ・ゆきひろ)
1941年愛知県生まれ。東京教育大学(現筑波大学)卒業。私立和光高等学校保健体育科教諭として25年間勤務。その後、1989年から2015年まで一橋大学・津田塾大学・東京女子大学で「セクソロジー」の講師を務めた。著書に『男性解体新書』(大修館書店)、『性のこと、わが子と話せますか?』(集英社新書)、『男子の性教育~柔らかな関係づくりのために』(大修館書店)など。最新刊に共著『ヒューマン・セクソロジー』(子どもの未来社)がある。

8月初旬、発売予定!

8月初旬、発売予定!

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