社会

LGBTの子どもは「いない」のではない「あなたに言えない」だけ――『先生と親のためのLGBTガイド』著者・遠藤まめたさんに聞く

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カミングアウトは一回でおしまいではない

――副題には「もしあなたがカミングアウトされたなら」とありますが、もし、自分の子どもからカミングアウトされたとき、親はどのような姿勢でいたらいいのでしょうか。

遠藤:カミングアウトした当人にとって一番つらいのは「産まなきゃよかった」という言葉でしょうね。ですが、親との関係って長い時間をかけて変わっていくものだと思うんです。

LGBTの親同士が支えあうためのサポートグループがあります。アメリカの「LGBTの家族の会」(PFLAG)のパンフレットには、3つの大切なことが書いてあります。

1つ目に「あなたは一人ではありません」他にも何千人、何百人と仲間がいるということ。

2つ目に「あなたは大切な人です」子どもがLGBTだと知ったとき、びっくりしたり恥ずかしいと思ったかもしれません。子どものことが分からなくなることはつらいでしょう。ネガティブな感情も含めて、打ち明けられたあなたにだって話を聞いてもらう権利があります。

3つ目に「あなたのせいじゃありません」親の育て方が悪いから、子どもがLGBTになったわけではありません。

親もある意味当事者なので、特別な感情があって当たり前です。親だって、子どもを傷つけることは悲しいはずです。カミングアウトした瞬間に、100点満点の反応をしなくても、子どもたちは、親が知ろうとしてくれたり、受け止めようとする姿をちゃんと見ています。カミングアウトは一回しておしまいではありません。時間をかけて分かればいいんです。

LGBTの人は、自分の家族を信用できず、離れている人がすごく多い。でも、カミングアウトされた家族の中には「言ってくれてよかった」と思う人もいます。

もちろん、必ずしも親と分かり合う必要はないと思っています。仲の悪い親子関係の人もいるでしょう。でも、仲の悪い原因がはっきりしたことで、上手くいくこともある。「だから、この子と服を一緒に買いにいくと、ケンカになるんだ」「なかなか実家に帰ってこないんだ」とぶつかっていた原因が理解できるのです。

はじめて母親の口から「LGBT」という言葉を聞いた

――私のLGBTの友人たちに話を聞いた上での実感ですが、カミングアウトの相手に父親よりも母親を選ぶ人が多いですよね。

遠藤:そうですね。統計を取っているわけではありませんが、なぜか、母親に言う人が実感として多いです。母親が一人で抱えることもあります。

日本の「LGBTの家族と友人をつなぐ会」にくるのも母親が多いですね。母親も母親で役割があって、自分の気持ちを言えなくてつらいんです。自分はなんで受け止めてあげられないんだろう? 家でケンカしちゃうんだろう? と。

アメリカの「家族の会」でこんな話があります。ある母親が、トランスジェンダーの子どもとケンカばかりするので、これはマズイと、子どもを連れて親の会に行ってみたら、他の親子はみんな会場で怒鳴り合っていた(笑)。それを見て「うちが一番まともかも」と冷静になれたようです。ぶつかることは、必ずしもダメなことではないから、親は自分を責めないでほしい。

実は、私の家族もそうでした。父親の場合は、職場にトランスジェンダーの人がいたのもあり、「しょうがないよね」と比較的簡単に受け止めていたのですが、大変だったのは母親です。

私が性別の違和感を訴えたとき、母親は「テレビの見すぎでは」と言いました。当時は『3年B組金八先生』(TBS系)の第6シリーズで上戸彩が性同一性障害の生徒を演じ、話題になっていたからです。最初は見たくも知りたくもないという感じで、情報を遮断していましたが、3、4年経っても変わらない私をみて、母もだんだんと受け入れていきました。でも、その間、何度もケンカしましたね。

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