社会

LGBTの子どもは「いない」のではない「あなたに言えない」だけ――『先生と親のためのLGBTガイド』著者・遠藤まめたさんに聞く

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あるときは、理解を示そうとしすぎて、服を一緒に買いにいったときに「この子はピンクより青が好きなんです」と店員さんに急に話し始めて……。そんな事実はありません(笑)。私は、ピンク好きですし。別に店員さんに言うタイミングでもないのに、母親はいったいどうしたんだって思いましたね。

また、あるときは、新聞記事で中村中さんがカミングアウトした新聞を切り取って「こんな頑張っている人もいるんだから」と渡されることもありました。「受け入れてくれるかな?」と思いきや、こっちからLGBTの話をするとあからさまに動揺する(笑)。

そんなことを続けているうちに、お互いだんだん受け入れてくるのかもしれません。ちなみに、フロリダ銃乱射事件の際、はじめて母親の口から「LGBT」という言葉を聞きました。

――けっこう最近ですね。

遠藤:そうですね。あの事件では、ゲイの息子をかばって撃たれた母親がいました。そのニュースをみたアメリカの「家族の会」の人は「この母親は私だ」と言っていました。「私もトランスジェンダーの息子とバーに行くから」と。あの事件では、家族にカミングアウトしておらず、病院に運ばれてから真実を知った親もいたと聞いています。そのことが意味する悲しみのさらなる深さに一番ショックを受けていたのも、彼女たちでした。疎遠になっている人も多いかもしれませんが、一番の味方になる可能性のある家族をもう少し信じてもいいのかもしれません。

いま、「学校でLGBTについて教えると保護者は嫌がる」というような誤解があります。でも、「家族の会」の人たちに聞くと、「自分も(LGBTのことを)教えてもらわなかったし、子どもも教えてもらわなかったから関係性が難しくなった」と認識しています。当事者だけが知りたいのではなく、知識のなさで誤解が生じてしまうのであれば、周囲の人もみんな無関係ではありません。

ジェンダーから完全に逃れることはまだまだ難しい

――子どもがLGBTかもしれないと思ったときに、できることはありますか?

遠藤:特に小さいお子さんの場合は、型にはめないことも大事だと思います。木登りをしようが、お人形遊びをしようが、LGBTを引き合いに出す以前に、自由にさせたらいい。ある男子児童が「女の子として学校に通いたい」と言い、女子として通学をはじめたときに、その子がワンパクだったので、周囲は「やっぱり男の子」などと動揺したという話があります。でも、女の子だって、いろいろでしょう。いちいち「男? 女? これってLGBT?」と動揺せずに、その子が言っていることに耳を傾けつつ、あれこれ決めないことが一番大切です。子どものうちはセクシュアリティが変わることもありますし、親が「この子は女の子(男の子)としてずっと生きていくにちがいない」などと決めることでもありません。小学生のトランスジェンダーが集まる自助グループに行くと、親たちの心配をよそに、子どもたちは男女の垣根など飛び越えて、のびのびとゴキブリを追いかけて遊んでいます(笑)。

実践するのは難しいかもしれませんが、目の前のひとつひとつに、柔軟に開かれていてほしいです。

私だって、高校生のころには、「男らしさ」に縛られていました。携帯のストラップにぬいぐるみをつけちゃだめだと思っていたし、甘いものを食べるのも怖かった。「男は甘いものは食べない!」と考えていて、浜崎あゆみを聞いたら自分は女子になってしまうと思っていました……実際はそんなことないんですけどね(笑)。

今だって、ベリーショートの髪型にしているのですが、あんまり気に入っていないんです。自分はもっと、中性的なお兄さん路線、理想をいえばニルヴァーナのカート・コバーンみたいな長さで行きたいんですが、男であることを周りから分かりやすくするため髪を短く切っている面はありますね。自分の好き・嫌いではなく、周りから男だと理解されやすい髪型にするほうが便利です。

たぶん、ジェンダーから完全に逃れることはまだまだ難しい。でも、子ども達が少しでも生きやすい社会になるようにしていきたいんです。たぶん、LGBTを許せない人は、男らしさや女らしさという言葉に、自分も傷ついているのでしょう。女が女らしくないことや、男が男らしくないことを、社会は批判しがちです。LGBTだけが自分らしさを追求できるわけがない。みんなが「当たり前」を疑い、作り直していけばいい。

「もしあなたがカミングアウトされたなら」という副題をつけましたが、「○○をしたら、LGBTはみんなハッピー」なんてことはありません。何度もぶつかったり、すれ違ったりしながら、それぞれがゆっくり考えていく問題であると思います。LGBT固有の問題もありますが、ぶっちゃけ、最終的には「人として接してください」と言いたいですね。人は、単に一人ひとり違うんですよ。
(聞き手・構成/山本ぽてと

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