社会

児童養護施設は悲しいところではないと知ってほしい――「親に頼れない」子どもたちが語った夢

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過去を語る場ではなく、夢を語る場

スピーチコンテストの入場料5000円は、子どもたちの奨学金やプログラム費に充てられます。奨学金と引き換えに、観客の前でつらい経験を語る会であったらどうしよう、と彼らのスピーチを聞くまで思っていました。

しかし、私が思い描いていた「かわいそうな子ども」の枠を軽々と飛び越え、彼らは多種多様な夢を語っていきます。自身のつらい体験について、詳しく話す子もいましたし、話さない子もいました。夢を語る際に、必要があれば話す、必要でなければ話さない姿勢を感じ、「過去を語る場」ではなく、「夢を語る場」にした意図が伝わってきます。

運営団体NPO法人ブリッジフォースマイル代表の林恵子氏は、児童養護施設退所後の子どもたちが抱える問題は経済面だけでないと指摘します。お金の不安や将来の不安は子どもたちの夢見る力をうばい「どうせ頑張っても無理だろう」と思ってしまうのです。だからこそ、カナエールの先輩方が夢を語る姿を見せることで、身近なロールモデルにしてほしいそうです。

また、今までプライバシーの問題から児童養護施設の子どもたちは表舞台に立つことが少なく、周囲に自分の状況を話す子どもも限られています。そのため、「本当にそんな子どもがいるのか」と社会の人たちは問題を見て見ぬふりすることができました。しかし、カナエールでは、子どもたちが実際に目の前に立って、自分たちの状況を自分たちで説明するため、家族ではなく社会で育てる必要のある子どもたちがいることを目の前に突きつけられます。「『児童養護』をどう思っていますか?」と真っ直ぐなまなざしで問われ、私はあたふたすることになりました。

本来ならば、夢を語らずとも、奨学金を受け、進学できる方がいいに決まっています。とりあえず大学に入ってから夢を決めることが許されている子どもも沢山いるからです。そう考えると、児童養護施設の子どもたちに「なんで進学するのか」と説明を迫るのは、不公平でしょう。ですがカナエールは、夢があり、あと月3万円があったら目標を叶えられる子どもたちに手を差し伸べられる制度だと感じました。

自分の夢を、応援してくれた人がいる。人生は、自分でどうにかしないといけないことが多いものです。それでも、投げ出したくなるような日々を、誰かが応援してくれた事実で、なんとかしのげることが時々あります。スピーチをした後に響く、天井から降ってくるような惜しみない拍手を聞きながら、そんな場に居合わせているのかもしれないと思いました。
山本ぽてと

詳細告知

今週末は福岡でスピーチコンテストが開催されます。6人のカナエルンジャーをぜひ会場で応援してください。

<カナエール福岡>
◆日時:2016年7月3日(日) 13:00 開演
◆会場:北九州 黒崎ひびしんホール 大ホール
◆詳細:http://www.canayell.jp/contest/fukuoka/

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