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私たちの周りにも「涙の匂い」はある。人の“生きづらさ”に気づくということ/『夜廻り猫』深谷かほる氏インタビュー

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深谷「ご近所の男の子を生まれたときからずっと見守り続けてきたおばあさんって、いまのご時世、ヘタすると『コワイ』『気持ち悪い』と思われかねませんよね。でも、かつては日本のどこにでも、こういうオバサンがいました。近ごろ、古くから多くの人が共通して持っていた価値観がなくなってきたと感じることがよくあります。たとえば40年ぐらい前までは、自分の実利にはつながらないけど誰かのためになることをやるのはいいことだ、というのが社会における共通認識としてあったと思うんです。『ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために』というのも流行語のようにいわれていましたが、最近はすっかり聞かなくなりました。『すごく地味ですぐには役にたたないかもしれないけど、いまの世の中にもあったほうがいいのに、なくなっちゃったな』という価値観や考え方って少なくないですよね。世代を超えて継承するもの自体にはプラス面もマイナス面もあると思います。でもマイナス面をシャットアウトしたことによって、受け継がれるべき、そして私たちが受け取れるはずだった財産や知恵も減ってしまったように感じます」

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第13話「許すな」

深谷「女の人が子育て、家事、そして仕事のすべてをこなすことが大変と思われていない。愛情があればやれるでしょ? という風潮に対してビシッといいたくて、タイトルも『許すな』にしました。専業主婦だったら専業主婦で『それはお前の仕事だろ!』っていわれちゃうんですよね。誰の子どもなの? という話です。男性にも悪気はないのかもしれないけど、根柢で『自分の妻は、寝なくても疲れない』『子育てには母親の愛情があればいい』と考えているのはダメだよ、といいたいです」

 夜中に子どもを公園であやすときの、圧倒的な孤独感。平さんはいつも、『ひとり泣く子はいねが~』と孤独に寄り添ってくれる。

深谷「わかり合えたり支えてくれたりという人間関係を持っている人ではなく、孤立している、あるいはこの悩みは人にはいえないと思っている人のところに、平蔵は出かけていきます。ほかにも、泣くどころではない、泣く余裕がない人もいれば、泣けない人もいますよね。『泣けなくても別にいいじゃん』と思われそうですが、そういう人はほかの感情もうまく表現できなくなっているかもしれませんよ」

 ひとり泣きたい夜、何かに疲れている夜、「泣く子はいねが~」と夜廻りをする平さんに話を聞いてもらうような気持ちで本書を開く。今日の生きづらさを明日に残さないために、ベッドサイドに置いておきたくなる1冊だ。

information

夜廻り猫 今宵もどこかで涙の匂い』の発売を記念し、下記の展示会が開催されます。

【ねこと暮らすこと ~『ふたこ蔦ねこ vol.1』パネル展~】
『夜廻りねこ』の複製原画、キャンバス画が展示されます。
日時:2016年6月28日(火)~7月10日(日)
場所:二子玉川 蔦屋家電(東京・世田谷)2Fギャラリー
詳細は、こちらをチェック!

【深谷かほるの世界 at TOBICHI】
日時:2016年6月30日(木)~7月10日(日)
場所:TOBICHI②(東京・青山)
詳細は、こちらをチェック!

(取材・構成=三浦ゆえ)

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