「トランスジェンダーは正社員になれない」「ゲイの世界ではセックスはあいさつ代わり」はウソです。

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「何をしているんだ大人!」問題

――たとえば、「ゲイの世界ではセックスはあいさつ代わりのようなもの」という噂は、よく聞きますよね。

遠藤:異性愛者でも、あいさつ代わりにセックスをする人はいるのかもしれませんが、みんなそうではないでしょう。ゲイだって同じです。普通に考えてみたらわかると思いますが、異性愛者の中でも、年上好き、ツンデレ好き、束縛するタイプ……など多様な恋愛が行われていますよね。同性愛者だって、恋愛観や好きなタイプ、セックスに対する考え方は一人ひとり違います。したくないセックスは、同性だろうが異性だろうが性暴力です。

このデマの深刻な問題は、年上のゲイ男性からそのようなことを強く言われると「そういうものかな」と望まない行為でも受け入れてしまう子どもがいることです。

中高生のLGBTの子たちは、自分と同じような仲間と会う機会が少ないので、専用の出会い系サイトで自分のつらいことを相談したりするんです。そこで、大人と仲良くなり、その大人が「そうだね」なんて優しく相談に乗ってくれたりする。必ずしもみんなが優しい大人であるわけではありません。単に身体目的の可能性もあります。

たとえば、実際に会おうと待ち合わせていても、その子が「イケてなかった」ら顔をみて向こうが帰ってしまうことがあります。生まれてはじめて親切に話を聞いてくれた人だと思っていたのが、突然連絡がつかなくなれば、そんな悲しいことはありません。

あるいは、待ち合わせ場所に行ったら複数人の大人がいたり、車に乗せられて性行為を強要されたという話もあります。コンドームをつけてもらえなかったなんてことも。最初にしたセックスが悲惨だった場合、セイファー・セックスをするモチベーションは下がりやすいと言われています。「男同士だから妊娠しないし、コンドーム使わないでしょ」と言われると、情報がなければそんなものなのかと思ってしまいます。こんな風に、「何をしているんだ大人!」みたいな情けないエピソードはけっこう聞きますね。

――これは、ゲイに限った話でもなく、異性愛の出会い系サイトでも同じようなことが起きて問題になっていますよね。異性愛の出会い系に対して、注意を促すようなことは聞きますが、同性愛についてまではカバーできていないし、周囲の大人もそこまで知らないのだと思います。

遠藤:だからといって、子どもに「ネットを使っちゃいけない」とお説教をしても届きません。必要だからネットで出会いを求めているわけです。禁止しないけれど、せめてマシなネットの利用方法を考えたいですよね。あとは、LGBTについての情報提供や仲間づくりの場が、他に確保されていないといけない。

私は、男子生徒にもちゃんと性教育をする必要を感じているんです。たとえば、女の子だったら「はじめて会った人の車に乗っちゃダメ」と言われますが、男の子は言われないで過ごしてしまうことが多い。もちろん、性暴力は100%加害者が悪いに決まっていますが、自分の身をどうやったら守れるのか、基本的な方法を教えるのも必要なのかもしれません。

特にゲイの子の場合、裸の自撮り率が高い。セクスティング(Sexting)というのですが、自分の身体やエッチな写真を相手に送るカルチャーがあります。ゲイの出会い系アプリは脱いで当たり前です。もちろん、成人していて、本人が納得しているなら問題はないでしょうが、子どもが「それが当たり前」だと思い、搾取されていくのはどうなのか。別れたあとにその写真で脅されるなど、トラブルも発生しています。

セクシュアリティに限らず、自分の裸の写真を相手に撮らせたり、ネットに上げたりしない。すごく当たり前なことから知ることが必要なのかもしれません。

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