「水商売」じゃないとダメ?
遠藤:そのほかにも、LGBTの子たちは、自分の将来像を描きにくいことも問題です。
以前、九州の田舎に住んでいる、MtFの高校生とメールでやり取りをしていたことがあります。その子の夢は「上京して水商売で働くこと」と「手術をして男性から女性になること」でした。「お店で働いたら遠藤のことも招待するね!」と言ってくれる、健気な子です。
でも、彼女はMtFの仕事は「水商売じゃないと」と思い込んでいました。好きでやるならいいのですが、MtFだからといって水商売一択というわけではありません。しかし、身近にロールモデルがいないから、自分の将来像を描くことが難しいのです。
LGBTで活躍している人は沢山います。マツコ・デラックスさんやはるな愛さんのような「オネエ系」と呼ばれる人が思いつくかもしれませんね。でも本当はそれだけではなく、歌手やスポーツ選手、政治家、文学者、宇宙飛行士、社長など、あげるときりがありません。
本来ならば、LGBTだって、希望している仕事に挑戦することができるのです。これは、私たち当事者の側から、大きな声を出して言わないといけませんね。
「ゲイとはこういうものだ」「田舎は生きづらい」「手術をしたら人生が変わる」、そうした言葉が本当かどうか、LGBTの子どもがその言葉を鵜呑みにして人生を狭める選択をしていないか。また、周りの大人もそれに同調していないだろうかと考えてみてください。
私が自分の性について悩み行き詰っていた10代のころ、性同一性障害という概念さえ周りの人は知りませんでした。だから、インターネットを駆使して、自分が何者なのか、自力で調べあげるしかありませんでした。その中には、不確かで差別的な情報が沢山ありました。いまは、そのころよりも、LGBTについて取り上げられることが多くなりました。それでも、ネガティブな情報がネット上や、社会の間で飛び交っています。
LGBTであることで、自分の人生を諦めざるを得ないなんてことはありません。信頼できる情報を載せたリーフレットなど、子どもたちに確かな情報に触れてもらう方法は沢山あるのです。『先生と親のためのLGBTガイド』も、その一助になってほしいと思います。
(聞き手・構成/山本ぽてと)