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【連れ子虐待・自殺教唆事件】殴る蹴る、排泄制限、女装強要…再婚夫から息子への虐待を知りながら、離婚を拒否したのはなぜか

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「24時間以内に死ね」

 事件前日、Aさんはいつも通り朝から仕事に行き、職場で村山からの連絡を受けた。この日、昼休みに電話をかけると「由衣翔が暴れて窓ガラスが割れた、そのガラスで今すぐ首をかっ切ってやろうか」などと言い出した。またトイレは申告制だったが、村山と2人のとき由衣翔くんは自室にバケツを置きその中に用を足していたようだ。Aさんがそれをきちんと準備していなかったことで村山から責められてもいるようだった。この日、村山はいつにも増して仕事中のAさんに多く連絡をしている。18時前後に帰宅すると、朝は腫れていなかった由衣翔くんの目の周りが腫れていた。Aさんは由衣翔くんを叱りつけ始めた。

Aさん「前のメールにあったように、由衣翔は元ダンナが食事のことをやってくれていると言っていたのにそれを本人に伝えてなかったので(※後述)、何で……と元ダンナに見せたくて怒りました。口に出して言いました。怒ったところを見せたかったので、左腕を殴りました。お互いに立って向き合って、由衣翔の左の腕を拳で殴りました」
検察官「何回?」
Aさん「夢中だったので5回以上あったかも……私の中では精一杯殴っているように見せて、手加減しました」
検察官「なぜ左の腕を殴ったんですか?」
Aさん「とっさだったので、分からないんですが、顔は殴れない。あまり痛くないところを……と」

 Aさんが叱る“プレイ”を村山に見せつけた理由は、その日の勤務中に村山から『日中の由衣翔くんの食事の世話などは自分がやってあげているのに、由衣翔くんはAさんが準備して行っていると思っているようだ』と怒りのメールが届いていたからだった。もちろん由衣翔くんが本当はどう思っていたのかは分からないし、村山がそう思い込んでいた、あるいは感謝されたいのに由衣翔くんが村山の納得いくような感謝を表明しなかったから怒り出した、という可能性が非常に高いだろう。だがAさんは帰宅して『日中の世話をしてくれているのは村山なのに、勘違いしている由衣翔くん』を責めた。Aさんは手加減したと言うが完全に村山の意のままに操られている。

 その後、Aさんが作った食事を由衣翔くん以外の家族で食べた後、村山は由衣翔くんに、ある命令をした。

Aさん「『24時間以内に死ね』と言いました」
検察官「唐突に?」
Aさん「唐突です」
検察官「被告人は、由衣翔くんが死ななかったら被告人と弟が死ぬと言ってた?」
Aさん「はい」
検察官「それを由衣翔くんに伝えた?」
Aさん「……」
検察官「まずダイニングキッチンで被告人は?」
Aさん「『24時間以内に死ね』と、それから『由衣翔が死ななかったら俺と弟が死ぬ』と」
検察官「あなたにだけこれを伝えたんですか?」
Aさん「………(むちゃくちゃ長い沈黙)」
検察官「ハッキリとは出てこない?」
Aさん「……(由衣翔くんには)伝えてあるだろうと思いました。その後も繰り返しメールで『1つの命なくなるのか、2つの命なくなるのか』というメールが来たので、本人(=村山)が(由衣翔くんに)伝えてると思ってました。帰ってから由衣翔の顔を見なかったけど、聞こえるように暴言を吐いていたので伝えてると思いました」

 その夜、Aさんと村山は同じアパートにいながら、メールでやり取りを続けた。村山は「離婚」「次男とともに自殺する」などという脅しを繰り返し『1つの命なくなるのか、2つの命なくなるのか』とプレッシャーをかけ続けた。

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高橋ユキ

傍聴人・フリーライター。2005年に傍聴仲間と「霞っ子クラブ」を結成(現在は解散)。著作に「木嶋佳苗 危険な愛の奥義」(高橋ユキ/徳間書店)など。好きな食べ物は氷。

twitter:@tk84yuki

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