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【連れ子虐待・自殺教唆事件】殴る蹴る、排泄制限、女装強要…再婚夫から息子への虐待を知りながら、離婚を拒否したのはなぜか

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 翌朝、6時半頃に起きたAさんが由衣翔くんの様子を確認すると、由衣翔くんは起きてベッドの上に座っていた。

Aさん「様子がおかしいなと思って、少し話をしました。また(おしっこを)漏らしたりして言えないのかなと、漏らしてしまったのか聞きました」
検察官「由衣翔くんは?」
Aさん「『大丈夫です』と」

 その後Aさんはまたベッドに戻り眠った。7時過ぎに目覚め、由衣翔くんの部屋に行くと、由衣翔くんは死んでいたとAさんは言う。検察冒頭陳述とは異なる。どれが「正解」かはわからない。

Aさん「もう首吊って、死んでる状態でした。ベッドの下にタオルをかけて、顔にマスクをつけてました……」

 ここからのAさんの記憶は「気が動転していた」ため曖昧だそうだが、タオルを切って、由衣翔くんを降ろしたあと、後ろから被告人に声をかけられたのだそうだ。

検察官「被告人は?」
Aさん「『遺書を探せ』と言いました。そして、瞳孔が動いているかということと、脈を見ろと言いました。脈を確認しましたが、自分の体が震えていてよく分からないと……」
検察官「遺書は探しました?」
Aさん「動揺していたので……」
検察官「他に被告人は何か言っていましたか?」
Aさん「『こういう状況見たことあるけど、もうダメだから』って言っていました。『俺にも責任がある、申し訳なかった』と頭を下げられました」
検察官「マスクは?」
Aさん「日常生活のときはしてなかったけど、外に出れなくなってから、話す時、息臭いからマスクしろと言われてしていました」
検察官「なぜマスクを自殺の時にしていたと?」
Aさん「顔を合わせたくなかったのかな、と……」

 村山は「自分が捕まるから、仕度するから、通報はまだ待て。通報が遅くなったことを聞かれたら『自分が待てと言ったから』と言って良いから。お前は一発も殴ってない。弟の世話もあるから……」と言ったという。

 9時36分、警察に通報し村山は逮捕された。

検察官「由衣翔くんの自殺の原因は何だと思いますか?」
Aさん「元ダンナの……暴力だと思います」
検察官「『24時間以内に死ね』という言葉も?」
Aさん「多分、その言葉を言われなかったら、今も殴られてたかもしれませんが、自殺してなかったと思います」

 Aさんは、由衣翔くんには「暴力を受け続けるか、自殺か」の二択しかなかったと考えているのだろうか。

離婚を求められていたが…

 対する村山の弁護人からの質問では、パート勤務のAさんを支えるために村山は家の食事を作り、掃除洗濯もしていたことなどをAさんに確認していた。由衣翔くんとバッティングセンターに行ったりボクシングの練習をしたりしていたことなども挙げ、“良い父”アピールに終始した。またAさんのいびきが酷く、村山が眠れていなかったことなども確認。入籍前の村山は睡眠薬や精神安定剤を服用していたのだが、Aさんの希望でそれらの服用をやめていたともいう。そして“Aさんが由衣翔くんに甘かった”こと、“村山が何度もAさんに離婚を申し入れていたのにAさんが受け入れなかった”ことなどを追及した。しかしAさんの認識とは少々異なる様子ではある。

弁護人「由衣翔くんが小学校6年のとき、あなたは由衣翔くんにごはんを(あーんして)食べさせていた?」
Aさん「あー、朝……ぐずって食べてなかったので食べさせたことはありました」
弁護人「着替えも手伝う?」
Aさん「朝、なかなか起きなくてぐずっていたので、無理矢理服を着せたり……」
弁護人「改善するように被告人に言われてた?」
Aさん「言われていたと思います」
弁護人「いびきや育児で離婚したいと言われてましたか?」
Aさん「何度か言われたことはあります」
弁護人「2014年7月以降はメールで離婚を求められていた?」
Aさん「はい」
弁護人「弟と出て行きたいとも言っていた?」
Aさん「そういうことも伝えられてました。2人で死ぬとも」
弁護人「2人出て行ってしまっても由衣翔くんを養育するつもりでしたね。出て行ってしまうことに由衣翔くんは関係ないので、離婚の時に自殺する必要性もないですよね」
Aさん「はい」
弁護人「離婚すれば被告人と住むこともなくなりますね?」
Aさん「はい」
弁護人「由衣翔くんは被告人とも住むことはなくなる。暴力もなくなる。あなたは実家も近い。帰ることも可能でしたね」
Aさん「はい」
弁護人「被告人は離婚を望んでいたと告げていました」
Aさん「はい」
裁判長「あなたはどう認識していましたか?」
Aさん「望んでいたならその行動に出ると思います」

 Aさんとしては、あくまでも村山の“離婚申し入れ”はポーズであると認識していたようだ。

弁護人「2014年7月29日の段階で、被告人は由衣翔くんの自殺を望んでなかった? あなたとしてはどう考えていたかという質問です」
Aさん「死んで欲しいということは望んでいたと思います」
裁判長「どういうこと?」
Aさん「自殺して欲しいとは思ってないかもしれませんが、食事を運ぶときとかに『死ねばいいのに』と何度も言っていて、死んで欲しいとは思っていたと思います」

 尋問の最初から最後までAさんは、消え入りそうな声で答えていたが、これは結果的に自分自身も由衣翔くんを追い込んでいたという後ろめたさなのか、それともAさんによる由衣翔くんへの暴力が本当は『由衣翔をかばうため』でなく『自分をかばうため』だったのか。

 次回公判で行われた被告人質問で、村山は『夫婦ともに逮捕されれば次男を養育する人間がいなくなる』ため、村山の単独犯だとする“口裏合わせ”が元夫婦間にあったと主張した。

(高橋ユキ)

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