『サザエさん』はもはや国民的アニメではない。昭和のパラレルワールドを楽しめない理由

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 ここのところ憲法改正が話題になっているが、自民党が2012年に公表した憲法改正法案では24条に「家族は、互いに助け合わなければならない」という義務が加わった。安倍政権は、3世代同居可能な住宅を建てた人に補助金を出すという政策を打ち出し、“家族同居推し”が国を挙げてすすめられようとしている。まさに『サザエさん』で描かれるような大家族にいまいちど日本も立ち返ってみようというものだ。だが『サザエさん』をモデルケースに3世代の家族同居を推進するならば、婿養子スタイルが大前提だ。現実にはサザエのように婿養子を取るのは稀で、サザエはひとりで遠く関西のマスオ実家に嫁ぎ、家事・育児に奔走することになるだろう。もはや気楽なお嬢さんでいられない。次第に老親の介護も必要となり、介護要員として夫家族から期待、いや要請を受けるかもしれない。仕事をしていても、義理親の介護のためにそれを辞めなければならないのは嫁かもしれない。こうなれば女性の社会進出もないようなものだ。3世代家族同居の最大の問題「嫁」の苦労が全く描かれない『サザエさん』を、古き良き昭和大家族の“お手本”とすることは出来ない。

 男たちに安定した仕事と稼ぎがあり、浮気や不倫の心配もなく、女が夕食を支度して待っていれば夕方には男たちが帰宅する。介護が必要な老人はおらず、貧困問題も存在せず、子供らはいじめ問題に直面せず、花沢さんを「ブス枠」でいじっても誰も何も言わない『サザエさん』ワールドは、まるで楽園のような世界観だ。おそらく、高度経済成長期の「いつまでも続いてほしかった輝く日本」そのものなのだろう。今はそのパラレルワールドで起こるドタバタを、子供たちだけでなく大人まで(テレビのメイン視聴者層は子供ではなく成人~高齢者のはずである)ただ楽しく視聴できる時代でないということだけは確かだ。『サザエさん』を国民的アニメと称える時期はもう過ぎ去ったのかもしれない。

(鼻咲ゆうみ)

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