セックスレス、収入格差、更年期障害…40代からの恋愛・結婚に希望はあるか/『破婚』及川眠子さん【後編】

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――及川さんは浮気したくならなかったのですか? 13年の間。

及川 更年期障害もあるし、やっぱり飽きるのよ。

――それはEさんに飽きたんですよね。

及川 うん、Eとのセックスに飽きる。

――他の男とヤリたいなと、思うことはありました?

及川 ない。

――それって更年期障害と関係あるんでしょうか。「当時性欲が全くなくなった」と書いていましたが……。

及川 うん、全くなくなった。

――カッコいい人を見てもセックスしたいと思わなくなったと。

及川 ふ~ん、だしね(笑)。

――別れてからまた性欲が出てきたんですか?

及川 離婚が成立してからいきなり性欲は沸かないけどね、離婚して3カ月後に出会って付き合った人とは、動物みたいにやったよ。

――動物みたいにってすごいです。本では、Eさんと婚姻中にセックスしようとして「1センチでも挿入したら激痛が走った」といった描写をされていましたが、それでもそのあと10年くらい経って別の人とヤッたら痛くなかった、ということですよね。

及川 うん。更年期障害のせいだったかどうかもわからないしさ、更年期障害自体、症状は人それぞれで色々なのよ。私みたいに性欲がなくなる場合もあるし、なくならない場合もあるし、人によって違う。私がEとセックスしたいと思えなくなったのはさ、身体の変化の問題だけじゃなかったんだと思う。さっきも話したけれど、「保護者」になっちゃったことで、Eを男として感じなくなっていったんじゃないかなと。だから痛かったり濡れなかったり、体が拒否するんだと思うよ。

男を軽蔑するとき

――及川さんは一時期、“離婚するために”、つまりEに嫌われて離れていってもらうために、男性と浮気しようとしています。しかし結局、未遂に終わったのはどうしてですか?

及川 浮気“予定”だった男の子と一緒にいるところを、Eに見つかったから。やましいようなこともしてない段階だから、別にフツーにしていればいいんだけど、男の方が若いからビビっちゃって、「わぁ~!」って慌てて騒ぎ出したんだよね(笑)。

――それってトルコでの出来事ですか?

及川 日本で。あれは本当に逃げたいと思って、「コイツ別れないな、なんとかして別れよう」という決意のもとだったけど、ダメだったね。気持ちはやっぱりまだEにあったし。ただしんどかった。お金の問題と、次々にトルコから降ってくるトラブルのしんどさ。

うん、結果的にでも私はね、Eと別れて正解。そう言えるのは、「もう、彼の心配をしなくていい」と思えるようになったから。結婚生活の最中、私のストレスの9割以上はE由来だった。

――ともあれ、及川さんはその時点では、またEさんとの関係を修復させようと試みたわけですね。

及川 そう、結局まだ気持ちが残ってたから、修復しようとした。私の中でEはストレスの元だったけれど、すごく重要な位置にいたんだと思うんだよね。もう一度やり直そう、という話になりました。ただ「やり直しましょう」というだけじゃ心許ないというか何も変わらないから、トルコに洞窟ホテルを買って一緒に事業をやることにしたの。これって普通の夫婦がワケあって「子供作ろう」となるのと似てると思うんだけど、ただね、そういう事情を一回持っちゃった夫婦っていうのは、もう本当に、100パーセントまでいかないけど、99%くらいダメだよね(苦笑)。

――「これを使って修復しよう」という発想自体がもうダメ?

及川 そうよ、ヒビが入ったものはもう無理。でね、なぜ、離婚するときに、(彼を)もういらない、って思えたかというと、Eを決定的に軽蔑する瞬間があったからなの。私が人を嫌いになる理由、キッパリと「もう無理」って思うのは、“軽蔑心”。逆に言えば、どれだけEがウソつきで金の無心ばかりする男でも、それまで軽蔑はしていなかったの。別れたくてもしんどくても。どこかやっぱり、彼をリスペクトしている部分もあったのね、自分には出来ないなと思うようなことを彼が出来てしまう、という面もあったし。でも、最終的に軽蔑してしまったのよ。

――それはEさんがトルコで女を作ったことが発覚して、ですか?

及川 そういうことではなくて、その、う~ん……卑しさを感じる瞬間が、あったのね。日本とトルコで、スカイプでやり取りをしていたときに、例によって私はEから資金繰りが苦しいという話をしつこくされていて。私が根負けして「分かった、お金払うよ」と言ったところで、Eがニヤッと笑った。非常に卑しい顔をしていたの。うちの(日本の事務所の)スタッフもそのときPC画面見ながら一緒に彼とやり取りしていたんだけど、スカイプを切ってから「(あの顔)見た?」って聞いたら「はい」って。「あの顔、卑しいね」って言ったら「もうあれは完全に取り憑かれてますね金に」と。

あの顔を見たときに、13年築いてきたものが全て「ナシ!」ってハッキリ変わった。軽蔑心になった。その一瞬。これはね、次の男に対しても関係が終わったのはそれだった。やっぱり軽蔑してしまったの。

――お金の問題が発端ではないですよね?

及川 もちろん。ワリカン云々っていう、そんなもんで軽蔑しないのよ。その彼は、笑った顔に“ものすごい媚”を感じた瞬間があって、「うわあぁ、もう無理!」って思った。

別れは相手を軽蔑したときだけに訪れるわけじゃないし、Eと付き合う前に交際していた相手に対しては一切そういう気持ちがなかった。だから、別れてもずっと思い出はそのままなわけ、もう別に付き合うことはなくても。Eのことも恨んでないんだけど、あのねえ、何て言うかな……思い出の値打ちなの。それが暴落するのよ、その瞬間に、ボーンって。「別れないでくれ~!」って泣かれても別に軽蔑しないんだけどね。人間性の卑しさが、笑顔に出た瞬間に、軽蔑心が湧くの。

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