セックスレス、収入格差、更年期障害…40代からの恋愛・結婚に希望はあるか/『破婚』及川眠子さん【後編】

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――及川さんは今は恋愛をお休みしている時期ですが、きっとまたこれからも恋愛するのでしょうね。本の中で、Eとの離婚をためらっていたときに「この男と離れたらもう良い年した自分は誰にも愛されることはないだろう、淋しく渇いた人生を送るだろう」という思いがあったという箇所は印象的でした。一般に、40歳を超えた女は楽しいこともなくなっていくような思い込みが世の中にはまだあると思うのですが、そういう感情が及川さんのような自由な方でもあったのかと。

及川 女の人はみんな「もうこの男と別れたら次がない」って思うよ。

――30歳くらいでも「結婚したいからこの男を逃したら」みたいな思いを抱くことありますよね。それで執着してダメな結婚しちゃう人もいると思うんですよね。

及川 そう。そういうのもいるよ。実際に周りでね。ある人は、もう旦那の悪口ばかり言っているわけ。ずっとそういうことを言ってるから「離婚すれば?」って言うと、言い訳を用意してるの。「娘がまだ学校があるから」とか「自分の仕事がパートで稼ぎが少ないから、だから5年後に」とかね。でも私言うのよ。「5年後あんた同じこと言ってるよ」って。いま出来ない人間は5年後にもできないんだよ、って。でもさ、そうやって言い訳を持ちながら5年後、3年後って言うのって、それは私は全然否定しないの。だってそれが彼女の希望だから。5年後、別れるんだ、娘も学校を出るし、っていう希望なの。私はそれは、希望だからね、いま別れなさい、っていう必要はないと思うの。どんな幸せな人間だって愚痴は言うからね。私は言い訳をするのは嫌なんだけど、でもその言い訳を希望としてそこにすがって生きていける人間がいるのであれば、それはそれでオッケーなんじゃない? っていう。いつかは、みたいな。

――でもいいんじゃないですかね、熟年になったらまた新しく恋愛すればね。

及川 うん。ただ、それでね、どうしようもなく別れるしかない相手っているじゃん、DVだったりモラハラだったり、辛いっていうだけの結婚生活を送ってる子、いるんだよね。これは自分次第だと思う。きっと別れたら良いことあると思ったら良いことがあるよ、って。だって良いことあるって信じる自分の気持ちが探すから。だから「あ、良い男がいた」とか「この人ステキ」とかって、自分がそういう気持ちがあるから探すんじゃん。でも、もう私なんてダメだわ、って俯いてたら探せないよね。だから自分の意志なの、すべて。自分の意識が幸せを呼び込むの。

――日本は特に、男性が「若い女性ほど価値がある」と決め付けていて、女性自身もそれを内面化している社会だと感じます。女性が年を重ねるごとに「ああ、自分なんて……」って。

及川 それはさ、女だって若い男の方がいいよね、だってジジイ見てるよりジャニーズとか見てた方がね。おじさんに「年いくつ? 30超えてるの? ダメだね」とか言われたとしても、おめえに言われたくねえよってね。

ただ、年をとって60歳になっても、素敵な人もいれば薄汚いのもいる。培ってきたものであって自分の責任なんだよね。

そして残った借金は…

――離婚時にあった7000万円の借金は、いまどうなっているんですか?

及川 粛々と返してる(笑)。2000万円返したのよ、去年。でも借金返したから税金がドーンときて、また1000万借りなきゃいけない。3歩進んで2歩下がる状態よ。あはははは。

――借金返済は経費に認められないんですか……。Eと結婚前は「常に口座に2000万円以上の金をキープできる状態」だったそうですが、現在の口座残金はそこまで戻って……?

及川 戻ってません! そんだけの金があるなら借金返す。そうなのよ。だからさ、他人からはすごくお金持ちと思われているんだけど、でもいくら印税が入ってきても借金返してるしね、まだ残らない。

――とうとう口座の残高が3万2000円までになった、という記述には驚きました。

及川 あれは去年の11月の話。

――ええっ!? 婚姻中の話かと。

及川 震えたわ。あはははは。どうしよう家賃、みたいなね。でもね、悪いことにはならないと思ってるの。なんか。まあ借金はいつか返せるわけだしさ。たとえば「仕事辛い」とか言ってても、でも終わらない仕事ってないじゃん。そういえば私、Eとの関係で一番辛かったのは「これは終わらないかも」って思ったことだったんだよね。延々お金を引っ張られて、それが終わらないかも、って。だけど終わったから。借金はまだあるけど、その終わらないかも、いつまで続くんだろう、って恐怖心からは解放されたよね。

――また誰かと「結婚」したいと思います?

及川 あんまり思わない。結婚する意味があんまりないな。結婚の目的として「誰かと一緒に墓に入る」とかね、でもそれも別に結婚していなくてもお隣同士に墓は作れるわけだし。私の場合、もしこの先うんと若い男と結婚しちゃったりするとちょっと面倒くさくなる。著作権の問題とかいろいろあるから。まあ遺言として残しておけばいいんだけど、今の段階では弟たちだよね。それが妥当だなと。恋愛自体は、積極的にいくわけじゃないけど、またなるようになるんじゃないかな。

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