坂上「日本の刑務所では、受刑者たちは人として扱われていないといえます。もちろん例外はあるけれど、刑務官の眼差しからして、あきらかに人を見る目ではないことが多いのです。けれど、ある刑務所が『ライファーズ』で紹介した犯罪者更生プログラムを採用したと知り、まずは数日間見学させてもらいました。規律と管理が徹底した日本の刑務所では無理だと思い込んでいましたが、実際に見て驚きました。しっかりと機能していたのです。その後も講師として関わらせてもらい、可能性を感じました。そして、私はそれをとおして変容していく受刑者たちの姿を映像化したいと思ったのです……が、刑務所に提案したら、刑務所と法務省からは『前例がない』の一点張り! なかなか企画を動かせず、やっと撮影にこぎつけても制約が多くて苦労の連続でした」
坂上「といっても私は次作で日本の刑務所に関するもろもろの制度を批判したいわけではなく、『聞く』『語り合う』をテーマに据えています。撮影している受刑者のなかには、女性や弱者に暴力を振るった人もいます。被害者の視点で見ると許せないと思うこともあります。だからこそ、彼らは変わる必要があるのです。誤った価値観や行動を変える必要があるのです。でも、人はひとりでは変われません。能面のように無表情だった受刑者が、人の体験を聞き、自分の体験に耳を傾けてもらい、語り合うことで変容していく。その様子を映像で伝えていきます。これは刑務所内だけの問題ではありません。彼らを生み出したのも、彼らが帰っていくのも私たちの社会なのですから」
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現在、坂上香織監督最新作『プリズン・サークル』では、制作支援のためのクラウドファンディングを募っています。撮影許可を得るまでに6年、刑務所内の撮影に2年、出所者や関連の撮影に5年を費やした意欲作を応援したい人は、こちらをチェック!
(三浦ゆえ)