
テイラースウィフト公式ツイッターより
「私が世間から見られている視点は、社会が母親を、娘を、妹を、妻を、女友だちを、女性の仕事仲間を見る視点のサンプルです。この女性のモノ化と詮索は不合理で人の心を不安に陥らせます」
ジェニファー・アニストンは90年代大ヒットドラマシリーズ『フレンズ』の主演により一躍人気を得、アメリカン・スウィートハート、A Girl Next Door(隣の可愛い女の子)の地位を獲得した女優だ。当時、映画界でのその地位はジュリア・ロバーツが占めていたのだが、ジュリアが庶民的ながらもプライド高くじゃじゃ馬的イメージがある一方、ジェン(ジェニファーの愛称)はドラマでの役柄そのままに、美人なのにおっとりしていてどこかとぼけている受容的なイメージがあった。ジュリアが州で一番の美女ならジェニファーはクラスで、いや学校で一番の美人で人気者の女の子。子供のころから知っているのにある日急にまぶしいほどの輝きを放ち始める特別な女の子のイメージを彼女は体現していたのだ。
そんな彼女が最近アメリカのハフィントンポストに発表して話題になった手記の一部が冒頭の一文である。
全米をアニストン派とジョリー派に分けた一大ゴシップ
ジェンはゼロ年代のゴシップ界の中核を占める大スター、タブロイド紙の恰好のターゲットであり続けた。というのも彼女の結婚した相手はまさに白馬に乗った王子様だったからだ。
『フレンズ』が全米で大人気を博していたとき、やはり美形俳優としての地位を登りつめていたブラッド・ピットがジェンに一目ぼれして、友人を介して接近。とうとう二人は結婚することになった。みんなが応援していた、おらが町のキュートなシンデレラが王子さまに見初められたようなものだから、このニュースにアメリカ中が沸いた。ジェンは正真正銘、「アメリカン・スウィートハート」になり、彼女の美しい髪を誇示するようなヘアスタイル、フィットネスで鍛えられた細い体を包むシンプルなファッション、ブラピとの結婚生活の詳細まで一挙手一投足に注目が集まり続けた。
一方でジェンは女優、特に映画女優としては苦戦していた。ドラマの出演料は高騰し、なんと『フレンズ』の最終シーズンでは、1話で100万ドルの出演料が支払われる(1シーズンは通常23話である)ほどの人気女優になったものの、映画のオファーはいまだ小規模のラブコメばかりだった。夫が大作に出演しアカデミー賞を受賞する傍ら、シリアスな役に何度か挑戦しては賞のノミネートから外れ、興業的にも失敗し続けていた。
そんな折、ブラピが『Mr. & Mrs. スミス』で共演したオスカー女優であり国連難民高等弁務官親善大使でもあるアンジェリーナ・ジョリーと恋に落ち、ジェンと離婚する。それはゼロ年代半ばのことであった。
私は2005年にタブロイド紙Us weeklyのトップグラビアを飾ったある写真のことが忘れられない。ブラピとジェンが普段着で自宅近くの砂浜を並んで歩いている。遠景で撮られているため詳細はわからないがジェンは涙をぬぐっているようだ。記事にはジェンが泣きながらビーチの貝殻を拾っているのをブラピが何もできずにみつめていたとあった。その数日後に2人は離婚を発表し、このニュースに全米は沸いた。誰もがキュートなカップルの破局を悲嘆し、アンジェリーナの毒婦性にわくわくした。さらに有名人たちもが、Team Aniston(アニストン派)と Team Jolie(ジョリー派)に分かれて争った。当時のゴシップスター、ヒルトン姉妹が着始めたそのロゴが書かれたTシャツはたちまち大流行した。
ブラピはほどなくアンジーと同居生活を始め、子供を何人かもうける。それはまた世間を沸かせる大ニュースになったが、ジェンは「ブラピを超える男を捕まえられるのか」という好奇の視線にさらされながら何人かの俳優と短いロマンスを重ねる数年をそれから送るのである。