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セレブのフェミニスト宣言は、ショービズを成立させる女性蔑視を変えることはできるのか “炎上セレブ”テイラー・スウィフトのしたたかさと危険性

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デビューから現在まで好奇の目に晒され続けたジェン

「この過去数カ月で、社会が女性の価値を結婚や出産によってどれだけ測っているか私は悟りました。私が妊娠しているかいないかをメディアが膨大なエネルギーを割いて明らかにしようとしている様は、未婚で子供も持たない女性はどういうわけか無能で負け犬の不幸な人間であると決めつける意識が永遠に変わらないことを示しています」

「パートナーがいようがいまいが、子供がいようがいまいが私たちは一人の人間として完成された存在なのです。自分の身体のことであれば何が美しいかは私たち自身が決めるべきです。それを決める権利は私たち自身のものです。私たちをお手本とする若い女性たちのためにもタブロイドの騒音を無視し、断固としてそう決断しましょう。一人の人間として完成されるためには結婚も母になることも必要ではありません。私たち自身の”Happily ever after(めでたし、めでたし)”は自分たち自身で決めるのです」

 ジェンは何年かの交際後、昨年ジャスティン・セローという、俳優としても活躍しているハンサムなクリエイターと再婚した。彼は日本ではブラピほど知名度はないが『トロピック・サンダー』『アイアンマン2』などの脚本、プロデュースを手がけ、HBOドラマでは主演もこなす才人だ。

 セローとの結婚生活が1年近く経過した折に、無許可で撮影された、彼女の腹部が膨らんだように見える水着写真が、「ジェン、妊娠か?」という見出しと共にタブロイド紙のカバーに飾られた。先ほどから引用しているジェンの手記はその数日後に発表されたものだ。

 文中では「この数カ月」と記されているが、実際は数カ月どころの話ではなく、彼女は二十年以上も、いつ結婚するのか、妊娠しているのかいないのか、どうして離婚したのか、何が悪かったのか、まだ未練があるのかないのか、誰と、いつ再婚するのか、子供をもつのは諦めたのかまだ諦めていないのかを、メディア、そして人びとに注視され続けてきたのである。夫が他の女性を愛し始め、離婚を告げられたその瞬間ですら世界中の人に目撃され、別れた相手がどんな生活を送っているかの情報を世間と共有し、自分のそれとを比較され続ける人生を彼女は送ってきたのである。

セレブは「私たちと同じ」?

 だがここで疑問がある。我らがジェンは「私もあなたたちと同じ、私はあなたたちの写し鏡だ」とでも言うように、フェミニズム的文脈でもってメディアの過熱報道を批判している。しかし本当にそうだろうか。ゴシップ文化は良くも悪くも、長らくスターたちとの共犯関係によって成り立ってきた。たとえばジェンとの離婚後、ブラピとアンジーは、長子そして第二子、第三子が産まれた際、その写真をピープル誌、Hello!誌などに数百万ドルもの契約料を払って掲載している。その莫大な掲載料がチャリティーに寄付されたことを考えると、すでに大スターである彼らは個人的利益のためでなく、広く社会のためにゴシップメディアを利用したわけだ。これはスターたちがゴシップと共に手を携えてたどってきた道の一つの到達点だろう。そんな彼らが果たして本当に「私たちと同じ」と言えるのだろうか。

 messyに掲載された記事で、福島淳氏は、フェミニズムがセレブによってポップカルチャー化される現象を批判したフェミニストのアンディ・ゼイスラーの意見を紹介している(セレブの「フェミニスト宣言」ブーム クールでポップなフェミニズムはいつまで続く?)。

「ゼイスラーが強調するのは、フェミニズムが個人化されていることだ。『マーケットプレイス・フェミニズム』では、フェミニズムが、活動家たちによる幅広い運動であるよりも、あるいは変革のための行動について語るやり方・手段であるよりも、個人が、自身のアイデンティティについて語るやり方・手段になっている、と」

 別のインタビューでゼイスラーはこのセレブのブランディングに用いられるフェミニズムを商業的フェミニズムと解し、長時間働いても貧困から脱することができず、ハラスメントにも非力な低賃金労働の女性たちの不平等な扱いを是正する動きには与しないものだと位置づけている。

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パプリカ

フロイトとDSMⅤと神経細胞の間で働く日々。子供の頃から、自己肯定感に満ちあふれたアメリカフィクションのファン。座右の銘は「What would Rachel Berry do?」ファッション・アイコンは『Clueless』

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