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セレブのフェミニスト宣言は、ショービズを成立させる女性蔑視を変えることはできるのか “炎上セレブ”テイラー・スウィフトのしたたかさと危険性

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ゴシップをセルフプロデュースするテイラー・スウィフト

 ゼイスラーの議論を聞いて思い出すのが、近年になってたびたびフェミニズム的スローガンを発するようになったテイラー・スウィフトである。

 今年6月に恋人であったDJのカルヴィン・ハリスに別れを告げられ破局を迎えた彼女だったが、そのわずか2週間後、英国人俳優トム・ヒドルストンと海辺でキスしている姿がタブロイド紙を大きく飾った。そもそも一人の男性との交際がワンシーズンを超えなかった彼女はSerial Dater(男がとぎれない女性)と呼ばれ、有名人男性を好きになるたびに(そして別れる度に)、その男性との恋のエピソードを曲に具体的に盛り込むことで話題作りをする歌手であった。そして今回、彼女が見せた矢継ぎ早のメディア露出は凄まじいものだった。

 交際が発覚した数日後、彼女のプライベートジェットでお互いの両親の家をトムとまわり、ついでに欧州の観光地に仲良く立ち寄る。その姿はなぜかいつもタイミングよく写真に撮られ、交際発覚から一貫して同じ写真会社によって発信され続けた。合衆国独立記念日である7月4日には、NYのビーチで有名モデルや歌手、女優で固められた彼女の若い友人たちと、「I♥T.S.」と書かれたタンクトップを着た30過ぎのトム・ヒドルストンが、海に浸かってテイラーと遊ぶ姿がパパラッチに撮影された。テイラーはそれにとどまらず、友人の女性セレブたちと星条旗を連想させる柄のおそろいの水着を着て星条旗を掲げながらポーズを取る姿や、トムと彼女たちを引き連れプールで戯れている写真を何枚も自身のインスタグラムにアップした。

 同日に撮影されたにもかかわらず、何回も衣装替えしているテイラーとその美しい友人たちは、まるでそのまま何かの広告に使えそうなほど完璧なアングルで写真におさまっている。恋に友情に充実したプライベートライフを満喫している彼女のその姿を見ていると、数週間ほど前に恋人に一方的に別れを告げられた事実がまるで嘘であるかのようだ。一方でテイラーは過去のインタビューでこのように語っている。

「男性のミュージシャンは実際の恋人のことを歌ってもなにも言われないのに、女性がそれをすると、とたんに否定的に受け止められるのは性差別的よ」

 実は最近、彼女のもう一つのフェミニズム的発言がきっかけとなってある騒動が勃発している。

 テイラーがまだ二十歳の頃、VMAで初の受賞スピーチをしようとしたところ、そこに割って入り「この賞は彼女がもらうべきではない」と発言、授賞式を台無しにしたミュージシャン、カニエ・ウェストとの間に起こった悶着だ。年月を経て和解したかに見えた2人だったが、彼の新曲の中で彼女のことを歌った歌詞が「ミソジニ―(女性嫌悪的)」で「成功している女性の足を引っ張る行為」だとテイラーが今年のグラミー賞受賞スピーチの中で批判したのである。

 「事前に許可をとった」と抗弁したカニエであるがテイラーはそれを否定、ついにカニエの妻キム・カーダシアンが「テイラーは嘘をついている」と、彼女とカニエが電話で話している証拠のビデオをsnap chatにアップする。驚くのは電話で “I feel like me and Taylor might still have sex / I made that bitch famous(俺はまだテイラーとセックスしてる気分だ 俺があのビッチを有名にしてやったからさ)” という歌詞を聞いたテイラーが「あなたがあの騒動を起こしてくれるまで七百万枚アルバムを売っても有名にはなれなかったのは事実」「“まだセックスしてる”は刺激的だけど……私は気にしない。傷つくも傷つかないもないわ」と発言していることだ。

 そう彼女はショービジネスにおいて全くのプロフェッショナルなのだ。挑発的で刺激的な歌詞が、有名人同士の恋愛沙汰や確執が、そしてそれにリベラルな論調で抗議することが、彼女のGood Girlなイメージを引き立たせてくれ、ニュースを生み音楽市場を動かすことを彼女は知っている。

 いま芸能界は元カレのカルヴィンまでをも巻き込んでTeam Taylor、Team Kanyeに二分されている。そして穏やかな恋愛を継続していた頃よりもはるかに頻繁に彼女の名前はメディアで口にされ、その日常はより注目されている。テイラーが毎日のフィットネスクラブの行き帰りにも完璧にセットされた髪とシワひとつないドレスにハイヒールを履いているのは意味がある。それらの全てはブランドから彼女にスポンサードされたものであるからだ。彼女は生きる広告でもあるのだ。この状況、まさにゼイスラーが表現するように「セレブがフェミニズム運動に加わるようになったというより、フェミニストがセレブ運動に組み込まれるようになったかのようだ(https://wezz-y.com/archives/32767より引用)」。

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