恋愛も結婚もせずに、出産と育児をしたかったんです/『おひとりさま出産』七尾ゆずさんインタビュー【前編】

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――苦手意識のある恋愛や結婚を省いてしまおう、と。苦手だなあと思いながらなんとか結婚に突入したとしても、上手くいかない可能性高いなって思っちゃいますよね

七尾 そうなんですよね。そこまで無理して結婚しなきゃいけないのかっていうのもあるし。このマンガにもちらっと描いたのですが、遠距離で交際していた男性と「結婚しよう」みたいな感じになったこともあるんですけど、でも、そこでもやっぱり自分が、無意識のうちに結婚を避けたのかもしれません。「このまま遠距離の別居婚なら結婚したいかも!」みたいな言葉でプロポーズにお返事したら、「ハァ? そんなんじゃ結婚する意味ないじゃん!」って断られまして(笑)。

――あははは。向こうからプロポーズしてきたくせに。相手の思ってた結婚は、遠距離別居じゃダメなんですね。

七尾 ていうか、別に「籍を入れる」とかは、全然、今からでもミウラに言われたら「あ、どーぞ」ってなるんですけど……。たぶん多くの人は、結婚ていったら、一緒に住んで、女性が家事して、旦那さんはちゃんと外で働いて、子供作って育てて、みたいな。そういうのが一般的だということは私もわかっていて、その当時の交際相手がそれを望んでプロポーズしたことも理解してたんですけどね。……どうしても、男の人と住んでっていうことにプラスのイメージが抱けないんです。

――それって、20代の時の出来事が影響しているんですか? 第54話で明かされた衝撃の事実に、いち読者としてびっくりしました。交際した男性に暴力を受けて、軟禁状態から命からがら逃げ出したという内容の告白で。

七尾 そうですね、それが多分、影響しているんだろうなぁと思うんですよね、やっぱり(笑)。まあ、ああいう経験もあったので、どこか男の人と同じ家に住むのって怖いんですよね。子供を産んでから思ったんですけど、これから恋愛しなくていいと思ったら私すっごい、嬉しいんですよ。

――ああ、なんとなくわかります。

七尾 そう、だから、男の人と一緒に住んで、女として生きなくていいっていうことは、いやそれはあくまでも女としての「一部分」の要素でしかないですけど、一部分だけど、それをしなくていいっていうのが、解放されたって感じですかね。

――恋愛市場にいなくていいっていう点でも。

七尾 そうですね。やっぱり、どっちかっていうと、男の人と距離をとっていたいっていうか。いつでも逃げられる状態にしておきたいと言うのかなぁ、なんだろう、どうしても男の人とのべったりした関係は危険なことのような、危険に首突っ込みたくないみたいな……どうしても、男の人との関係において、そう思っちゃうんですよねぇ。

結婚を回避して良かったケース

――ミウラさんとは、妊娠決断の前から3~4年交際されてきたんですよね。

七尾 そうですね、そのくらいになりますかね。

――一緒に暮らしてはいないんだけども、家に招いたりはできるし、ある程度、ミウラさんのことを信用されているのかなと感じたんですが。

七尾 でも私、ミウラを信用はしてないと思うんですよ。

――ほぉ! ま、借金も増やしてますしね。

七尾 そうですね。子供を産んでから、子供に対する愛情と男の人に対する愛情が全然違うっていうのかな。

――種類が?

七尾 そうですね、種類が。あ、これが愛情っていうもんだったんだ! って。

――それまでの、男の人との関係で七尾さんが愛情と錯覚していたものは、何だったんでしょう?

七尾 うーん、でも、恋愛は出来たんですよ、「恋」というものですか? ドキドキしたり、楽しいな、一緒にいたい、とか。幸せというか。でも、男の人と付き合いだして感じる幸せって、初めてセックスした後の2~3時間。

――2~3時間! 短い!

七尾 そう、その間くらいしか、幸せって感じることがなくて、あとは、「この人、どういう人かな」ってずーっと疑って見て……男性不信ってやつなんですかね。この人、どういう人なんだろう、って、それを始めなきゃいけないんですよ、男の人と付き合ったら。なぜなら、私は大きな間違いを男で起こしてるので……。その、暴力を受けていたっていう。

で、男性への愛情表現としては、ミウラに対しても私はちゃんと、浮気もしないし、家に来たらお茶のひとつも入れさせたことないし、普通に、一般的に義務として、お付き合いする上で、正当なことをちゃんとしてると思ってたんですけど。それが、恋愛であり、愛情だと思ってたんですけど。

子供が産まれて、あ、そうじゃないんだっていう風に思いましたね。あ、私は男の人のことを愛してなかったんだ、と。ミウラのことも信用なんかしてないし、これは愛じゃなかったんだと。そう、だから、申し訳ないな、と。

──35歳を過ぎて、結婚はしてないけど、赤ちゃんは欲しい、どうしたらいいんだろうって状況の人は少なくないと思うのですが、七尾さんの場合は、男の人との相性が悪かったので、そういう道を選択せざるを得なかったというか、無意識にそっちを選んだと。

七尾 そうですね、多分、今、未婚率がすごく高くて、恋愛に対してそんなに、私のように積極的に思えない人は多いんじゃないかなぁと思って。私も恋愛して、結婚して、出産だと思ってたけど、この恋愛部分がうまく出来ない人間だったので、それでも子供が欲しいってなったときに、ここ(結婚)を飛ばしちゃったんですよね。

――馬力が出た!

七尾 そうですね、恋愛を幸せだと感じられない人、本当は、多いんじゃないかぁと思うんですけど、ま、でも、恋愛のドキドキとか恋は10代のときからあったけれど。あの、私の貧乏シングルマザーな状況を見て「なんでわざわざ、しんどい方にいくの?」とか言われることもあるんですけど、私は自分が幸せと思える方向を選んだんですよね……。でももちろん、結婚に幸せなイメージを持ってて男性とちゃんと愛し合ってその結果として子供が欲しいと思ってる女性にとっては、相手の事情とかで結婚せずに産むのって、きっととてもツライことだと思うんですけど、私は結婚を幸せだと思ってないし、むしろマイナスイメージすら持ってるから、そこを避けた方が幸せ。っていう風にね……。

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