恋愛も結婚もせずに、出産と育児をしたかったんです/『おひとりさま出産』七尾ゆずさんインタビュー【前編】

【この記事のキーワード】

認知を望まない理由

――3巻で、私が一番格好いいと思ったのは、テニスのお蝶婦人のコスプレをした「ヨーコさん」というキャラクターとの「認知」をめぐるやりとりです。「認知は金が絡むとな、必要なんや!」と、ヨーコさんが切々と説いてらっしゃいますけれども、つまり認知って相続に関する話なんですよね。

七尾 そうですね。私、なんで認知しなくちゃいけないのかっていうのが、イマイチよくわかんなくて。大体、相続の件と出生がきちんとわかるっていう二つの二本柱のようで……。でも、別に誰が父親かミライに隠すつもりもないし。

――会ってるし。

七尾 うん、国に証明してもらう必要はないんです。相続に関しても、もともと相続ってものが、遺産残す人の意思で……よくあるじゃないですか、骨肉の遺産争いが殺人事件に発展したり。子供同士が争ったり、愛人が出来てそっちに金がいくとか。

――実は愛人の子がいる! とか。

七尾 そうそう、なんか新しく、年取って嫁さんもらって「納得できない!あいつは遺産目当てなのよ!」とか。別に、年取った親が新しい女の人にお金をあげたければ、あげればいいんじゃないの? と思っちゃうんで。財産を作った人の意思ですればいいものであって、子供の権利である必要はないのではと、思ったり、これは勝手な意見なんですけど、そんなもんアテにするなよ、と思っちゃうところがあって。ただ、商売されてる方は違うと思うんですよ。

――そうですね、この店は誰が継ぐ、みたいな。

七尾 そうそう、でもそうじゃなかったら、好きにしたらいいんじゃないの? って。だから、ミウラがミライに、遺す遺産がもし今後あって、もし!

__もし! 逆転があってね。

七尾 何かこれからの人生で逆転があって、ミウラに遺産が出来たとして、ミライに残したいと思ったら、残せばいいものであって、と思っちゃったり……。でも、今のところ借金しかないですし。それに、認知するってなったら、ミウラが一番恐れている彼の親に、子供を作ったことがバレてしまうかもしれないんですよね。

認知にメリットがあるかな? って思うと、ない。相続でしょ? 誰が父親か教えてくれってことでしょ? 両方とも、私にとってそんなに魅力的な話じゃないし。それと感情の面が乗ってくると思うんですよ。私はこの人の子供産んだのに、あの人は知らんぷりしてみたいな。認知さえしないの? みたいな、私バカにされてる! とか、踏みにじられてる? といった感情面で「認知」を求めるとか。私とミウラの関係の場合、そこら辺がないので。

――結婚や認知をしてくれないから私なんて愛されてないのねウワァーン、みたいな感情の動きはないわけで。

七尾 ないない(笑)。

――あと感情の面でいうと、戸籍の父親の欄が空欄なんて、みたいな? 世間的なね。

七尾 ね。ただ、空欄で子供が悲しいっていうのは、自分のルーツがわかんないってことだと思うんですよね。大体今まで認知しないっていったら、不倫とか、不倫じゃなくても、相手が、子供が産まれたことに対してよく思ってないケースがイメージされるじゃないですか。子供のこと認めたくない、責任持ちたくない、とか。ま、ミウラもそうですけどね、責任持たないというところでは。でも子供のこと認めてるしかわいいみたいだし。それで、そういう感情の、多分、こじれにこじれて、お互いの関係も悪くなって、二度と会わない、もうあんな父親。お父さんのことなんかしゃべりたくないとか、あんなロクデナシと関わる必要はないとか、そういう色んなドロドロした感情が乗ってるから……空欄というのには、そういういろんな意味が詰まってるんだと思うんですけど。私の場合はそこらへんが乗ってないので、空欄を埋めなきゃならないとは思えないんですよね。

1 2 3 4 5

「恋愛も結婚もせずに、出産と育児をしたかったんです/『おひとりさま出産』七尾ゆずさんインタビュー【前編】」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。