――返済計画を立ててあげたくなったりは?
七尾 うーん……そうは言ってもミウラは、私に対しても多分そこまで全てをさらけ出せないと思うんですよね。
――いい子でいたい人なんですもんね。
七尾 パッと見、親の前ですごくいい子なんだと思いますよ。親は借金のこととか知らないと思うし。
――ミウラさん、若いんでしたっけ?
七尾 私よりは若いです。
――ミウラさんのお父さんが家庭内でものすごい強権を握っているタイプで、息子にも有無を言わさない人なのかなぁって。お父さん自身はマンガに登場しないけど、そういう雰囲気がありますよね。
七尾 そうですね。秋刀魚を焼いたんですよ。
――秋刀魚? 焼いた?
七尾 急にすみません。秋刀魚ってワタの部分が美味しいって人いるじゃないですか。ミウラもワタの部分がウマイとか言うタイプかなと思って、そのまま焼いたらバリバリ全部食べて。キレイに魚を食べるんですよ。で、「ワタ好きなんだねー」って言ったら、「いや、嫌いだけど、お父さんが、ワタを残したら怒るから全部食べた」、って。いやいや今この部屋にあなたの親はいないんだから、嫌いなら食べなきゃいいじゃんって思うんだけど、お父さんの言いつけを守ってワタの部分も全部食べてて。
だからね、ミウラは親の前でいい子にしていなきゃいけないと思ってると思うんだけど、ちゃんとこうやっていい加減なことというか、実は子供を作ってしまいました、借金あるし税金も払ってません。ダメな人間だと認めて、それでも自分がこう生きる、世間とは違うかもしれないけど、自分の生き方はこうだ、とお父さんに言うべきだと思うんですけど。そこまで私が踏み込んじゃいけないのかなぁと。
――彼自身の覚悟が出来るまでは。
七尾 そうですね、と思うんですけどね。
――徹底して、踏み込まない姿勢ですよね、七尾さん。
七尾 そこで踏み込まないのが、私の冷たいところというか、そこで一歩、引いてしまう。みなさん、どうするんですかね。
――無理矢理、引きずり出すとか、対決の場を設けてね。そういうことしちゃうタイプの人もいますよね。
七尾 それもいいことかなって思います。だって、そんだけ人に深く関わって、その人の人生に関わっていこうって姿勢は、私にはないものなので、そうするべきなのかなぁ、そういう人もいるよなぁ、でも私出来ないんだよなぁって。
――七尾さんは過去の男性経験で非常に恐ろしい経験をしたこともあって、そして元々の性格も大きいと思うんですけれども、「無意識の依存」をしない、人との関わり方を意識的に選ぶ方なんじゃないかなと思います。普通の人って、無意識に依存し合ってると思うんですよね。結婚したんだから、こうしてくれて当たり前とか、ああしてくれて当たり前とか、付き合ってるんだからこうするでしょ、ああするでしょ。でも無意識なもので、結局、すれ違っちゃうというか、ぶつかっちゃうというか。その依存が、男女関係をうまくいかなくさせている側面は大きいんじゃないかと思うんですよ。しかも、相手のせいにしちゃうし。自分の人生のままならなさを対象のせいにしちゃう。そうしない生き方だと思うんですよね、七尾さんの生き方は。
七尾 なるほど。どっちかっていうと、今言われたことが、私は自分のダメなところだと思っていました。私、自分に対してポジティブに考えるタイプじゃないので、人に深く関わることができない、依存できないってダメなのかなぁってあったんですけど。
――人に甘えたりはしないけれど、公的な支援機関とかには自分で接続していくし、ちゃんとした選択もするし、頼れるところには頼るじゃないですか。すごくまっとうだと思うんです。
七尾 でも、それをしないっていうのは、自分の置かれてる状況に対して、きちんと対処しないってことだと思うので、行政で何ができるか、何が出来ないか、もちろん行政だけじゃなく、自分が働くこともそうですけど。自分のためにやってるだけです。
――自分のためにどう動くのが最善かわからない、またはわかっていても出来ないという人もいるんですよ。そこはやっぱり、誰かがサポートしなければいけないんだろうと思いますが。
七尾 そうですよね。私、結構気がキツイというか、行政の窓口の人にもばーって言っちゃうけど。気が弱くて恐る恐る窓口に行ったのに、「あんた自分で何とかできるんじゃないの?」とか突っぱねられてシュンとしちゃうような人だって、男女問わずいますよね。
――追い詰められちゃいますよね。頼るべきところに頼れないと。
七尾 そうですね、でもそれは、自分で気を強く張って、頼れるところを探せば、絶対頼れるところは、困ってる親子を見捨てるほど、日本はひどい国じゃないと思うので、あるとは思うんですけど、そこでシュンとなっちゃうのも、別に罪じゃないし。
――それが仮に弱さだとしても、その弱さを否定はできないですよね。
七尾 人間、弱いお母さんだっているだろうって思うし。みんなが強くなれっていうのも、じゃあ、どうすりゃいいんだってなっちゃうけど、そこはやっぱり、母親なら声上げなきゃいけないんだけどなぁと思う…。みんなに強くなれというのも難しいし。
――ただ、女性が自分の身を守る上で、男性の力を必要としないで自分で立つ強さ、あるいはサポーターになんとか自力で接続する意識は、やっぱり必要だと思いますね……。
七尾 ほんと、経済力さえあれば、ひとりで育てることは、すごく負担がないっていうか。もう恋愛しなくていいんだっていうのもあるし、子供と居られるのは楽しいし嬉しいし。やっぱり、世の奥様って、全てが全てじゃないけど、育児と仕事と旦那のお世話まで、3つ背負わされてる人って結構いると思うから、その旦那の世話がないっていうのは、ラクです。だから、経済力があれば、旦那の世話が減る分、ラクといえばラクなのかな。こんな事言ったらあれですけど。世の中の旦那さん、すみません。結婚したことないので、全て私の妄想で喋ってます。
――笑。ありがとうございました。