紫原 執着とかもないんですか? 奥さんに対して?
枡野 だから、僕のこの本、『愛のことはもう仕方ない』に書いたんですけど、僕は全然肉体関係がない女性にも好きな人がいて、その人と…肉体関係がある人との差が……あんましないんですよ、僕の中では。
紫原 ………。
枡野 むしろ、肉体関係のない人とのほうが素敵な関係を持ち続けていられる、みたいな。そういう話をしたら、すっごく嫌がられました、妻に。
紫原 あはははは!
枡野 「なに、それ!?」って。
紫原 肉体関係を持ってしまうと何が変わるんですか、逆に? 想い続けていられなくなる?
枡野 たぶんね、セックスをしないといいやつなんです、僕。
紫原 じゃあセックスすると?
枡野 すると面倒くさいんじゃないかなぁ。態度が変わるとかじゃあないんですよ。
紫原 セックスが面倒くさいんですかね?
枡野 優先順位が低くて、性的なことの。セックスしてる人とセックスしてない人の差がない……。してる人のことを優しくしたりとかしないんですよ、あんまり。
紫原 でもなんか、(肉体関係を持つことで)距離が密になることによって、ふたりだけの世界ができるじゃないですか?
枡野 そういうのヤなんですよね。
紫原 イヤって……気持ち悪いってことですか?
枡野 なんか……ほら、あんまり僕、経験も少なくて、つきあった人も少ないんですけど、一晩すごしただけで「下の名前で呼んでいい?」って聞かれたことがあって。「いやだ」って答えて、別れたことがあります。
紫原 そういう話聞くと、「枡野さん、嫌な男だなぁ」って思ってしまいます(笑)。
枡野 ほんとですよね……。
紫原 そのためにヤッてるみたいなもんじゃないですか! 女性としては!(笑)
会場 (笑)。
枡野 でもその人も訊かなきゃいいじゃない、そんなこと。訊かずに「浩一」って言えばいいじゃない。訊かれたらさぁ、「いやだ」って言うしかないんですよねえ……。
紫原 や、でも、訊かずに「浩一さぁ」って言われても、それはそれで嫌なのでは?
枡野 でも、ちょっと引きますけど、それだとなんとなくペースに巻き込まれて終わるじゃないですか。
紫原 う~~ん……はぁ……。
枡野 今はね、もちろん当然、当時の自分は子どもだったんだなって思いますよ。そんなことぐらいでね、相手にイラつくなんてね、「おまえはまだ修羅場を知らない」と。
紫原 もっと引くことがあると。世の中には。
枡野 と、今は思いますけど。