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セックスした相手を特別扱いしないことは「嫌われる」一因になる/紫原明子×枡野浩一【1】

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枡野 僕、加藤千恵ちゃん[注]という歌人の女の子が(知りあった)当時17歳だったんですけど。その子の短歌が良かったから(僕がプロデュースして)本にしたことがあったんですけど。今や『オールナイトニッポンZERO』のパーソナリティやったりして売れっ子になってるんですけど。その加藤千恵ちゃんのひとつ上くらい?

紫原 私は82年生まれ、33歳です。

枡野 芥川賞の綿矢りささん(84年2月生まれ)とか加藤千恵ちゃん(83年11月生まれ)とかと同世代なのかな? それを考えると、あのときの17歳がいまこんなにご立派になってみたいな感じですよね……。

紫原 82年生まれでいうと(神戸連続児童殺傷事件の)「酒鬼薔薇聖斗」とか、西鉄バスジャック事件の「ネオむぎ茶」とかが、みんな同世代ですね。

枡野 そうですか。そういう本、お書きになるといいですね。これはいい切り口じゃないでしょうか。

紫原 1982年生まれという時代。

枡野 (紫原さんは)インターネットへの接し方がすごく洗練されている感じがして。この文章の書き方とかも、僕はいちいちツッコまれたら反応しちゃうんですけど、書き方も最初からあんましみんなを敵にしないように書いてる感じも良くて。どう考えても大人ですよ、『家族無計画』のほうが。男性性があるくらい、あるベクトルに向かったちゃんとした文章になってる……。

紫原 私が枡野さんの本を拝読して思ったのは、枡野さんの本は「男性らしくないといけないの?」っていう、そこに正面から抵抗されてるっていうか……。本の元になった連載の『神様がくれたインポ』[注]も、男性らしさに抗うってことかなと思ったんですけど……。

枡野 はい。

紫原 私の周りって経営者やビジネスマンの方が多くて。正面から敵にぶつかってもしょうがない世界なんですよね。ビジネスって、隙間を縫って入って、いつの間にか当たり前になっている――みたいなやり方がけっこう多くて……。なんかそっちのほうが自分が楽というか、抵抗が少ない分、ひょひょいって自分を楽な状態にもっていけるなっていう思いがあって。敵を作らないようにはしているんですよ、そういう敵を作らないようにしつつ、自分の好きなようにやる、楽なように持っていくやり方がいいと思っていて。それを狙ってやっているというか……。

枡野 すごいですね。

紫原 周りからすれば、面白くはないと思います。闘ったほうが見世物としてはおもしろいじゃないですか?

枡野 まあねえ。でも(敵ばっかり作って闘ってばかりいる僕としては)ちっとも楽ではないですけどね。

紫原 あはははは。

 

[第1回目の注釈]

■『絶望手帳』
家入一真の編著書。≪ポジディブ啓発書に傷ついてきた人たちへ、今を生き抜くための最終兵器的一冊。ニーチェからニートまで。偉人、有名人、一般人の「絶望名言」を219点掲載! 「僕はよく「死にたい」と言います。これは、「生きたい」と同義語です。今、多くの人が弱さをさらけ出せずに悩んでいます。だからあえてネガティブな言葉を集めたいと思ったのが、この本のはじまりです。」――家入一真。引きこもりから起業、当時最年少で上場を果たした起業家・家入一真。本書は、彼のアイデアに共感した編集チームが、古今東西の「絶望」の言葉を集めた名言集です≫(amazon内容紹介より)

■家入一真
1978年生まれ。企業家・実業家・政治家・作家。20代で企業したネット事業を成功させ、会社の株式上場を果し。数十億円の資産を得る。だが、わずか2年後にはその資産をほぼ失ったといわれている。2014年には東京都知事選挙に立候補した。著書に『こんな僕でも社長になれた』『我が逃走』『絶望手帳』などがある。

■僕の短歌
『絶望手帳』に収録された枡野浩一の短歌。 <手荷物の重さを命綱にして通過電車を見送っている><ギクシャクと向こうからひょろひよろはショーウインドーにうつった自分>

■『あの都知事選、と離婚。』
ウェブサイトcakes記事。 https://cakes.mu/posts/13224

■『家族無計画』
紫原明子のデビュー著作。≪「正しい家族」は、もうやめた。キャバクラで月2000万円豪遊、思い余って都知事選に出馬。「日本一炎上しがちな夫」こと起業家・家入一真氏と18歳で結婚し、即出産。31歳で離婚し、腹をくくって社会人デビュー。ネット育ちの新世代エッセイストが、なにかと息苦しい現代家族の渦中から“寛容”と“自由”を提言する。強く愉しく新しい〈家族論〉エッセイ≫(amazon内容紹介より)。朝日出版社刊。

■『愛のことはもう仕方ない』
枡野浩一の最新小説。サイゾー・刊。宣伝コピーは「嘘つきな男たちへ。正直者を受け入れられない女たちへ」。帯文は「人があなたを理解してくれないなんて、当然ではないですか! ――中村うさぎ」。

■インターネッ党
家入一真氏が東京都知事選挙に立候補した際に立ちあげた政治団体。中野区長選をスタートに、2020年までに東京23区の全ての区長選挙に候補者を擁立することを宣言していたが、結局、候補者を擁立しなかった。現在では党の公式サイトも閉鎖され、活動停止状態とされている。

■『毎日のように手紙は来るけれど』
メルマガサイト『まぐまぐ』の枡野浩一による有料メルマガ。以下、枡野浩一による紹介文。≪前略。私は女優の加藤あいさんに短歌をおしえる先生役でCMに出たこともある有名な歌人です。このメルマガの名前は、《毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである(枡野浩一)》という一首からつけました。「手紙」を「メール」や「電話」におきかえたバージョンもあるのですが、あえて「手紙」という言葉を残しました。週三回以上、可能なかぎり毎日のように届けたいと思います。短歌が一首だけの日もあれば、長い長い論考の日もあるでしょう。すべての言葉は、あなたへ宛てた手紙です。どうぞよろしくお願いします。草々。≫

http://www.mag2.com/m/0001272552.html

■田中小実昌
1925年生まれ、2000年没。小説家、翻訳家、随筆家。1979年、『ミミのこと』『浪曲師朝日丸の話』の2作品で直木賞を受賞。往年の深夜番組『11PM』をはじめとして、テレビドラマ、映画、CMといった様々な場面で活躍。ピンク映画でカラミを演じた事もある。代表作に『ポロポロ』『香具師の旅』など。

■田中りえ
1956年生まれ、 2013年没。小説家。田中小実昌の娘。著作に『おやすみなさい、と男たちへ』『ぞうさんダンスで、さよならモスクワ―シベリア鉄道で行ってきたよ』『中沢けい・田中りえの部屋』(中沢けいとの共著) 『ブレーメンから飛んで、チベットに着陸』『ちくわのいいわけ』がある。

■加藤千恵
1983年生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。高校生時代に処女短歌集『ハッピーアイスクリーム』でデビュー。短歌集としては異例のヒットとなる。その後は小説も手掛ける。作家の朝井リョウとともにラジオ番組『オールナイトニッポンZERO』パーソナリティも務めた。最新の著作は『アンバランス』『ラジオラジオラジオ!』。

■『神様がくれたインポ』
枡野浩一がmessyに連載した「小説」。毎回のコメント欄に枡野を非難する投稿が相次ぎ、一部で話題となった。連載のすべてが『愛のことはもう仕方ない』に収録された。

9/10(土)枡野浩一×小谷野敦「愛のことはもう仕方ない」刊行記念連続対談シリーズ【心から愛を信じていたなんて】vol.5

@荻窪ベルベットサン

【出演】枡野浩一、小谷野敦
【開場】13:30
【開演】14:00(17:00終演予定)
【料金】1,500円(1ドリンク付)

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