紫原明子×枡野浩一対談
「無計画」で「仕方ない」夫婦と男女~離婚と自立とセックスレスと~
この日の公開対談は「子連れOK」で赤ちゃんを伴って来場しているお客様がいました。ずっと静かでご機嫌だった赤ちゃんですが、このあたりで会場に可愛い泣き声が響きました。すかさず「私、“赤ちゃん泣いてもいいよステッカー運動”やってるんで」と言う紫原さん。枡野さんも子育て時代を振り返り、周囲、特におじさんの無理解さがあったと語ります。そこから対談はディープになり、むちゃくちゃな旦那さんに振り回されたあげく「樹木希林さんみたいだねと言われて離婚を…」と言う紫原さんに対し、枡野さんは「僕は内田裕也が羨ましかった!」と言いだします。300万円の腕時計、ストーカー容疑、警察……波乱の第3回です。
<バックナンバー>
【1】セックスした相手を特別扱いしないことは「嫌われる」一因になる
【2】「優しさに浸る楽園」キャバクラが、地獄に思えるのはなぜか
「子育てしてないおじさんほど怒るんですよ」(枡野)
紫原 (会場で泣いている赤ちゃんとそのお母さんに対して)あ、全然気にせず席にいてくださいね。私、『赤ちゃん泣いてもいいよステッカー運動』っていうのをやっているので。どうぞそのままで。
枡野 僕もね、赤ちゃん泣いてると、「さぁ泣け、心ゆくまでお泣き!」って思ってますから。紫原さんも本に書かれてましたけど、赤ちゃんってすぐ泣くし。僕、子育てしてたとき、子育てしてないおじさんほど怒るんですよ。
紫原 そうですよねえ。団塊の世代の人が一番厳しいなってことは感じますよねえ。
枡野 僕、子どもふたり抱えて、おじさんの胸を叩いて逃げたことがありますもん。子ども両手に連れて歩行者天国っぽい道を歩いてたら、ちょっと邪魔だったんでしょうけど、おじさんに「邪魔だ!」みたいなこと言われたから。「じゃあどうすればいいんですか!」って胸を叩いて……。「どうすればいいんですか、僕は!」っていって、そのまま子どもを連れて逃げ帰りました。
紫原 お子さん、ふたりいらっしゃったんですもんね?
枡野 はい。上の子が血がつながっていない娘で、息子が赤ちゃんだったから。ほんとどうしょうもないんですよ。片方抱えて片方連れて歩くか、両手に抱えるかしかなくて。それでなんかもう……。
紫原 ほんと両手ふさがって、「どうしたらいいんですか」ってなりますよね。
枡野 心の中ではおじさんに、“あなたみたいな人を今後はこの子たちが税金を払って養っていくのに!”って思ってました。
紫原 ほんとそう思う。けど親って言えないんですよね。私も1回、子どもが泣いたとき、そのことでお爺さんに怒鳴られたことがあって。すごく気をつけていたつもりだったから、ちょっと悲しくて。「うるさい人は出て行ってください!」って言われたんですよ。その「うるさい人」って赤ちゃんじゃないですか。赤ちゃんに対してすぐに出て行きようがないレストランで言うなんて、なんてヤツだと思って。あんた、この赤ちゃんに言ったんだよ!? って見せたくて、「すみませんでした」って、その子を抱えて謝りに行って。そうしたら、バツの悪そうな顔してたのでちょっとスッキリしたんですけど……。ほんとなんかね、厳しい世の中ですね。そういうことがないといいな。
枡野 そういうこと言うおじさんやお爺さんの世代って絶対に子育てしてないと思うんですよ。
紫原 奥さんに任せきりだったんだろうなぁって思ってしまいますよね。
枡野 だって子どもって躾とは別のレベルで、どうしても泣くじゃないですか。あと、それまではずっとおとなしかったのに、いざってときに泣くんですよね。
紫原 子どもが泣くのはどうしようもないですもんね。枡野さんはずっと保育園の送り迎えもされてたんですよね?
枡野 はい。なので離婚したときは、保育園のお母さんたちは僕のほうが親しみがあるから、ちょっと優しくしてくれましたね。
紫原 お子さんも急に会えなくなって悲しんでいた……?
枡野 上の子のほうでしょうね。上の子のほうは覚えていてくれてて、下の子はぼんやりしていたから、全然覚えてないと思いますよ、父親のこと。3歳未満だったし。
紫原 会いに……まったく行けなかったわけでは……。
枡野 あ、だから、こっそり(元妻が子連れで引っ越した)家を探したりしたから、ほんとは僕が強い意志でむちゃくちゃになってもいいから会いに行けば会えたんだけど。なんか、向こうがちゃんと会わせてくれるまで待たなきゃっていう意識がなぜかあって。それがちょっと馬鹿じゃないかと思いますね。今はね。