「優しさに浸る楽園」キャバクラが、地獄に思えるのはなぜか/紫原明子×枡野浩一【2】

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枡野 向こうは身体目当てで、(男なら)誰でもよかったと思うんですけど。

紫原 そんなことはないと思うけど……。あ、でも、向こうから誘われたって書かれてましたよね?

枡野 はい。それで、尻尾を振ってついてったって感じなんですけど。

紫原 なるほど……。

枡野 とにかく僕ね、そういうの、大事だなと思った。顔立ちが好きとか、触りたいとか。そういうプリミティブ……原始的な欲望が合致してないと。ちょっと僕は頭でっかちに(別れた奥さんのことが)好きだったから……。

紫原 はい。

枡野 彼女は漫画家で、僕は彼女の漫画が好きで、漫画のキャラと一致してる人だったんで。そういう意味でのカッコ良さに憧れていたんで。

紫原 私は、いままで男性に言われて一番嬉しかった言葉が「もうあなたのことが好きすぎて、ネットにある画像はすべて保存しています」で。それが一番嬉しかった。あらゆる文章読んでます――じゃなくて「あらゆる画像」っていうのが嬉しかった。

枡野 あ、それは僕ね、実際に経験があって。女性なら(そういう経験)多いのかもしれないけど、僕、ゲイの人に言われたことがあって。

紫原 画像を保存してますって?(笑)

枡野 あのね、違うの。その人がホームページやってて、好きな男性タレントのことなんかいっぱい書いてんの。あとアスリートとか。なぜか枡野浩一のことについても書いてて。なんか僕の本は読んだことはないけど、枡野さんのテレビは録画して何度も観てますっていうんですよ。他はみんなカッコいい男なんですよ。短距離走の人とか。なぜこの中に僕がって思ってたんですけど。その人とは一回だけ(新宿2丁目の)飲み屋で会って……。

紫原 おお、会った!?

枡野 会ってしまって、すごい口説かれたんですけど。さすがに当時はまだゲイの人への免疫もなかったから。何にもなかったんですけど。その後にその方は癌で亡くなられたんですよ。1回ぐらいなんかしとけばよかったって。

「枡野さん、『男性経験・序章』みたいな感じですか?(紫原)

紫原 あ、でも男性ともいろんなこと、されたことがあるんですよね?

枡野 はい。そういうことはあまりこの本(『愛のことはもう仕方ない』)に書けなかったから。ほんとうは連載中に書いて欲しかったらしいんですけど、編集長は。それでね、男性にはみんな許可取ってね。「書いていい?」って聞いたら、みんないいって言ってくれたんだけど。女性が、数少ない女性たちが連絡つかなかった、もう……。だから許可取れなくて。それで男性との経験ばかり書いてもちょっとと思ったから……。でももし、そういう需要があれば書きますよ、僕。男性からの許可は取ってるから……。でもなぜか書かなかったんですよね……。

紫原 そういう経験があるんですもんね。

枡野 経験っていってもね、たぶんみなさんが思ってるようなのとは違いますよね。ささやかな経験ですよ。

紫原 「男性経験・序章」みたいな感じですか?

枡野 みんながどんな想像してるのかわからないけれど……。ほんとささやかな……思春期みたいなのをしましたけど……。

紫原 なるほど……。

枡野 でも僕も(書いたものを褒められるより容姿を褒められる方が嬉しいというのは)そうでした。本について褒められるのは慣れてるから。

紫原 枡野さんはそうですよね。それに私は内面とか褒められても、そこは不確実というか。自分の一番弱いところが外見だと思ってるんですよ。いや、内面に自信があるわけじゃないんですけど。でも内面ならいくらでも繕いようがあるし、変えれるし、人や状況に合わせることができるんですけど、外見ってどうしようもなく合わせられないじゃないですか、ある程度以上は。だから「あなたの外見が好み」って言われた瞬間に、これ以上嬉しいことはないって思ってしまうんです。というか、女性ならね、言われて嬉しいと思うんですけど。違いますかね? 嬉しいもんですよね?

枡野 へぇ~、じゃあこの本(『家族無計画』)が評価されるより、そっちのほうが嬉しいですか?

紫原 けっこう匹敵するくらいかもしれないですね。どういうところを好きですって言われると嬉しいですか?

枡野 だから、こういうこと言うとほんと読者を減らすんですけど、僕もう、短歌とかは褒められ慣れてるんですね。あとファンの人にすごく冷たいって、よく言われるんですよね。なんでそんなにファンの人に冷たいのって。自分でもわかんないんですよね。あ、恋愛対象にならなくなっちゃうんですよ、自分の本の読者は。

紫原 あっ、だったら今日、(AV監督で作家の)二村ヒトシさん[注]が会場に来てくださってますけど、その二村さんと湯山玲子さん[注]の共著(『日本人はもうセックスしないかもしれない』)で湯山さんが言われてたような……、文化人のイベントの後とかに必ず女の子が何人かいるんですよね。気づいたら、登壇者の文化人男性の膝の上にそのファンの女の子が座ってるみたいな(笑)。枡野さんはそんな女の子とそのまま2人で消える……みたいなことはないんですか?(笑)。

枡野 そんなことは1回もないですし。自分で短歌とかを作ってる人ってだけでもう(恋愛の)対象外になっちゃうから……。

紫原 え? 同業者は対象外になっちゃうんですか?

枡野 そのくせ、漫画家と結婚してたんですけど。

紫原 近いですもんね。

枡野 自分が書くものを好きな人が苦手っていうのは、我ながら女の子っぽい病ですよね。

紫原 確かに。自分のことを好きな人を下に見ちゃうみたいな?

枡野 そう。“自分をメンバーにするクラブには入りたくない”っていう昔の人の名言みたいな……。自分のことを好きにならない人を好きになっちゃう。そんなだから離婚されちゃうんですよねえ。

紫原 あははは。“だめんず”みたいな嗜好?

枡野 そうですね。“だめんず”と考えればフツーにいますよね。

紫原 でも逆に、枡野さんの奥さんは、自分のことを好きな人が好きだったんですよね。

枡野 そうそう。そういう女性も多いじゃないですか、また。

紫原 そういう人はなんていうんですかね。その場限りの恋愛ならいいけど、そういう人と結婚するっていうのはあまりないような気もしますけどね。

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