「優しさに浸る楽園」キャバクラが、地獄に思えるのはなぜか/紫原明子×枡野浩一【2】

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「すっごい自信満々だったんですね。なんていい夫だろうって。そういう態度が腹立ったんじゃないですか」(枡野)

枡野 そうですか。あの、離婚のとき、裁判所で離婚したんですよ、うちは。「裁判離婚じゃない」って書類上はなってるんでけど、でも実際は裁判所で離婚していて。そのときに裁判長に「こういう離婚はよくあるんですよ」っていわれて。つまり「女性が、自分のことを好きだって言ってくれる男性と結婚した場合、ちょっとでもその男性の愛情が疑わしくなると逆ギレしてしまって、反転して、酷い離婚になってしまうことがあるんだ」って言ってました。

紫原 なんか、奥さんを不安にさせたり、隙があるようなことはあったんですか?

枡野 浮気とかもしてなくて、育児もしてたから、すっごい自信満々だったんですね。なんていい夫だろうって。そういう態度が腹立ったんじゃないですか。至らなかったくせして。今思うと、よくないかもしれないけど、いっそ浮気でもして、その後ろめたさで優しくしていたほうがマシだったのかなとか思いますね。

紫原 う~ん、それは難しいところですねえ……。たとえば夫婦に子どもが産まれて、奥さんがお母さんになって、子どもにばかり愛情を注ぐようになって、それで夫が嫉妬するみたいなことがあるじゃないですか? 枡野さんの場合、枡野さんがお子さんをすごく好きだから、お子さんにかまいっきりになっちゃって、そのことで奥さんに愛情がいかなくなったってことはないんですか?

枡野 あぁ……それはあったかもしれません。

紫原 でも、それに文句は言わないですよね、そうだったとしても、奥さんはね……。

枡野 でも僕が熱心にネットやってるときは嫌がってましたね。自分の相手せずに、なんでネットの人とばかり交流してんのって嫌味言ったり。当時高校生の加藤千恵さんの本を出してあげたり、女性歌人の佐藤真由美さん[注]の本のプロデュースをしてあげたりとか僕はいつもしていて。「なんでそんなことしてんの?」みたいな感じだったんですよ(元奥さんは)。仕事のつもりだったんですよ、もちろん僕は。

紫原 でも“セックスの関係がない女性へのほうがリスペクトが大きい”っていう枡野さんの気持ちも奥さんは知ってるわけですよね?

枡野 僕と加藤千恵ちゃん・佐藤真由美さんとの間にはなんの関係もないんですよ、肉体関係は。でもそれでも、夢中になって才能のある女性をプロデュースしてるみたいなのが嫌だったみたいですね。

紫原 やっぱり嫉妬になってますよね。リスペクトしてんだろうなっていうのは透けて見えちゃってるわけですもんね。

枡野 きっとねえ……。

紫原 奥さんにはまだ未練があるんですか?

枡野 未練っていうかね、子どもに会えてないから……。子どもに会いたいっていう気持ちがずっと消えなくて……。もう16歳なんですよ、僕の息子。10年以上も会ってなくて。別れた奥さんとはさすがに二度ともうヨリが戻んないだろうし、会ったらどうしようかって考えますよ、街で偶然会っちゃったらとか。なにを話そうみたいな。

紫原 1回もないんですか?

枡野 ないんですよ。

紫原 共通のお知り合いの方とかから、「息子さんこうしてるよ」とかは聞こえてこないんでしょうか?

枡野 それはねぇ……。息子は将棋指しを目指してるんですね。そんな潰しのきかないことやってるんですけど。将棋の(日本将棋連盟)奨励会[注]っていうのに入っていて。そこで働いていた人と偶然知り合いになったんですよ。その人から聞いたら、「息子さんはずっと泣き虫だったけど、最近はもう泣かなくなりました」という情報は入ってきた。あと、息子の奨励会のプロ目指してる人の動画が『ニコニコ動画』で観れるんですよ。それが1600円くらい払って会員になったら観れるから観たんですよ。それでずーっと膝を抱えて観てたんですけど。最後まで息子は出てこなくて。息子が打った将棋の棋譜を解説のおじさんとおねえさんが再現していて。息子はいつ出てくるんだろう……ってた観てたら最後までそれで。最後、息子が言ったというメッセージが読みあげられて。「頑張ります」とかって、つまんないの! あと写真が1枚だけ紹介されて終わりました。すぐ解約しましたけどね。月額1600円(厳密には税込1620円)。

紫原 子どもの顔は映さないんですかね。

枡野 また、その将棋のおじさんとおねえさんが、ほんと話が下手で。息子がどんな子か全然伝わってこないの!

紫原 あはは。まぁでも、将棋以外のことはなかなか言わないと思いますよ。「この子はオムライスが好き」とかは(笑)。

枡野 最近、奨励会に入ってお茶汲みしてるって情報だけは入ってきたんだけど、お茶汲みがうまいのか下手なのか、そういうことが知りたいじゃないですか!

紫原 「この子はお茶汲みがうまくて有名な……」みたいな(笑)。

枡野 もうなにもかも教えてくんないんですよ、おじさんは! 僕、その『ニコ動』の制作会社の人がたまたま知り合いだったから、メッセージ送っちゃいましたもん。<もっとプライベートのことを聞くといいと思います>って。

会場 (爆笑)

枡野 <ファンの人が知りたいのはそういうことじゃないと思います>って。

紫原 あはははは! でもそういうのはねえ。でも残念でしたね。顔は見れなかったんですか?

枡野 顔写真は(奨励会ホームページで)出てくるから。自分に「似てるなぁ」って思って見てますよ。あと、小学生の将棋教室のアシスタントをしているみたいだから、誰か小学生で将棋をしたいお子さんいる人は将棋連盟に行って、僕の息子を観てきてください。

紫原 どこに住んでるかは知ってるんですか?

枡野 噂ではわかってるんですけどね。でも高校には行かなかったみたいなんですね。(奨励会で)名前調べると出身学校とかが書いてあるのに、書いてなかったから。そういう人多いんですよ。(高校に進学せず将棋に専念する人が)将棋指しには……。

[第2回の注釈]

■佐藤真由美
歌人・作家・編集者。1973年生まれ。女性誌の編集者をつとめているとき、仕事で出会った歌人・枡野浩一に影響を受け、歌集『プライベート』(枡野浩一・監修)でデビュー。エッセイやシンガーのMISIAの作詞なども手掛けている。著作に『恋する短歌』『乙女心注入サプリ』などがある。

■『ショートソング』
枡野浩一・著の短歌を題材にし、吉祥寺を舞台とした青春小説。集英社文庫・刊。

■二村ヒトシ
AV監督・作家。1964年生まれ。慶應義塾大学生時代に演劇集団を主宰。AV男優をへてAV監督・作家になる。AVの代表作に『美しい痴女の接吻とセックス』『女装美少年』など。著作に『あなたはなぜ「愛してくれない人」を好きになるのか』『すべてはモテるためである』(文庫ぎんが堂)、『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』(湯山玲子との共著/幻冬舎)、『モテと非モテの境界線AV監督と女社長の恋愛相談』(川崎貴子との共著/講談社)などがある。

■湯山玲子
作家・デイレクター。1960年生まれ。男女論のみならずクラブカルチャー、映画、音楽、食、ファッションなどにも詳しい。著作に『女ひとり寿司』『クラブカルチャー!』『文化系女子という生き方「ポスト恋愛時代宣言」!』『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』などがある。最新作は二村ヒトシとの共著『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』。

■奨励会
日本将棋連盟の東京・大阪の両本部に置かれている。年1回の入会試験に合格するには、最低でもアマチュア四段の実力が必要といわれる。会員同士の対局で規定の成績を挙げると昇級・昇段し、負けが多いと降級・降段する。凄まじく厳しい世界とされている。

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