「夫婦でずっとセックスするのは難しい」「性的興奮は優しさや守ってあげようって気持ちの正反対」/紫原明子×枡野浩一【5】

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「一番の復讐は許すことだと思うんです」(紫原)

枡野 そこはねえ、来週お目にかかる植本一子さんの本を読んで、ECDさんのような態度、「自分は離婚しない」って言い張る手をなんでやらなかかったんだろうって思わされましたよ。

紫原 やっぱり子どもがいると、いろいろあると思うんですけど……。夫婦で気持ちが離れてるのに、どちらかの執念で無理やり夫婦生活を続けることほど不毛なことはないと思います。

枡野 絶対に子どもに悪影響はありますよね。引きこもりになったりするかもしれないですね、子どもが。

紫原 愛情を持たない夫婦が家庭を続けること、その家庭に子どもがいることで、ですか?

枡野 でもどうかなぁ、わからないなぁ。あのね、僕が彼女、元奥さんとつきあいはじめたとき、前の旦那さんと籍を抜いてなかったんですね。僕は知らなかったんですけど。逆にというか、僕と別居してたときも、次の旦那さんとつきあってたと思うんですけど。でも僕は文句言う筋合いじゃないと思っています。

紫原 枡野さんって、ツラいこととか、不快なことに対して強いなっていうか。

枡野 それが好きなのかもしれない。くよくよしていたい、ツラいことに浸っていたい……。それは『家族無計画』の問題を解決しようというすっきりしたベクトル、目標に向かってきっちり歩んでいこうという明るさと比べたら、「もう枡野は暗いのが好きなだけでしょ」って言いたくなりますよね。

紫原 よく苦痛を抱くいたまま生きていられるなぁって。

枡野 ああ……。ただ僕、本当に離婚の気持ちとか薄れなくて。「先週、離婚したんじゃないかな」と時々思うんですよ、いまも。

紫原 そんなに新鮮なんですか?

枡野 う~ん、そうなんですよ。おかしいですよね? 脳に障害があるのかなとすら思ってるんですけど。

紫原 私はだいぶ忘れてきましたね。

枡野 あっ、でも忘れることもあって、記憶は変わってきてるかなって。昔の日記とか読み返してると、自分の中の記憶が変わってきてるんですよ。

紫原 もしかしたら、より自分に厳しいように変わってる可能性があるとか?

枡野 どうなんでしょう? 僕は自分は正直者であると思って生きてきたんだけど、この本書いて思ったのは、思ったほど正直者じゃないのかもとか。書けないこともいっぱいあったし。誤魔化してるのもいっぱいあるんです。固有名詞を伏せてたり。「あ、ここが自分のアキレス腱だな」っていっぱい気づけた本だったんです。自分はくよくよしたくてしてるんだし、離婚しようがしまいがずっとこんなだったかもしれなくて……。ということは、人のせいにしちゃダメだなっていうのは思うようになりました。

紫原 ああ、だったら枡野さんにとってすごくいい本だったんですね。ひとつの節目になった本。

枡野 それが、読者が読んで楽しいかどうかはまた別問題で……。自分のセラピーにはなったのかもしれません。

紫原 大事ですよね、そういうことは。書くことが許されてる人にとっては。

枡野 紫原さんはどうでした? これ書く前と書いた後でなにか変わったことはありました?

紫原 思った以上に書いた後で変わったんですよ。スッキリしました。本当に過去のことになったかなって。「この本って、紫原さんにとって卒論だね」って言われたことがあって。ほんと、卒論出すとこんなにもスッキリするんだなっていうか。昔は夫だけが有名だったんです。有名というか、ネットで発言権があった。あんなにひどいことをしてる人、頭のおかしい人なのに、社会に迎合されていた。彼は発言力をすごく持ってるんです。私が「この人はこんなおかしなことやってるよ」って言っても全然聞き入れられないっていうか。私の声って当時、すごく小さかったんですよ。そのとき、ここで悪あがきしても夫にトドメは刺せないなって思ったんです。悪い女なんですけど。ここは「樹木希林さん」を演じたほうが分がいいな……って思いがちょっとありました。まだ何も言わないほうがいいって……。Twitterで元旦那さんの愛人とケンカしたこともあるんですけど。だから、「このバカ夫が!」とか、Twitterで元旦那さんを告発するのとかもできたとは思うんですけど、やらなかった。それをそのときやっても絶対、自分に分が悪いっていうのもわかってて……。

枡野 はい。

紫原 だから、この『家族無計画』は、いままでずっと温めてきた復讐でもあります。発言力を高めて高めての復讐……。私、一番の復讐は許すことだと思うんです。

枡野 すごい理屈ですね……。許すことが復讐……。

紫原 だから、彼のことは絶対悪く書こうとは思ってなくて。本を読んだら絶対魅力的な人だなと思ってもらえると思うんですよ。

枡野 そうですね。僕もそう書いてますよ、別れた奥さんのこと。

会場 (苦笑)

紫原 えっ、笑いが起きてますけど?(笑)

枡野 ……。で、紫原さんのその裏で家入さんはこんな『絶望手帳』という本を(笑)。

紫原 私が楽しく明るくいて、明るい本を出すっていうことが最高の復讐だなーっていうか。

枡野 家入さんで心配なのが(『絶望手帳』の中に)選んでくれた(枡野の)短歌がね、≪手荷物の重みを命綱にして通過電車を見送っている≫――。これが響くってよっぽどだなって。

紫原 ふふふ。でも、あの人は「哲学ゾンビ」だと私は思っていますから。悲しいとか嬉しいとか超越した存在です。だから大丈夫だと思います。

枡野 そうですか……。じゃあ『家族無計画』が『絶望手帳』より売れるといいですね。まぁでも『絶望手帳』も買ってください。僕の短歌もふたつ載っているので。

「竹馬自殺しようと思っていたんです」(枡野)

紫原 私、この前、<幸せって思われたい女性は、なぜ幸せになれないのか?>ってコラムを書いたんです。「結局幸せな人は勝ち」って気持ちがすごくあって。楽をしたい……楽というか、幸せになった人が勝ちだなって。

枡野 僕、自分のことを不幸せだなんて思ってないのに『神ンポ』(神様がくれたインポ)連載中は「枡野は不幸せ自慢してる」「枡野は意地でも幸せになるまいとして、奥さんにあてつけてる」っていうのね……。

紫原 枡野さん、いま幸せなんですか?

枡野 けっこう幸せだと思っています。

紫原 あっ、そうなんですか?

枡野 はい。でも変じゃない?(わざわざ)幸せだって書くのも?

紫原 確かに。でも、枡野さんってどこか死と隣り合わせにあるっていうか、なんとなく自殺願望があるのかな、とか……。

枡野 実際、芸人活動やる前は……。芸人は2年間やっていたんですけど。ハリウッドザコシショウさんのいる事務所(SMA/ソニー・ミュージックアーティスツ)でね。でもその前は「竹馬自殺」しようと思っていたんです。高い竹馬に乗ったまま、首をぶら~んって吊って死んだら、話題になると思って。

紫原 は? あ、あの、もう一回お願いします……!

会場 (笑)

枡野 あの、僕、すごい高い竹馬に乗るんです。それ、いまだに仕事場(枡野書店)に飾ってあるんですけど。そして阿佐ヶ谷住宅ってあるんですけど、そのころ廃墟になってたんですけど、そこに紐を……実際には鎖だったんですけど、それを持って(竹馬首吊り自殺の)下見にいったとき、警察に(職務質問されて)「なぜ、竹馬をこんな夜中に持ち歩いてるんですか!?」って。それに対して僕、「好きだからですよ!」――

会場 (爆笑)

紫原 それ、ほんとの話ですか?

枡野 ほんとほんと。今まで僕、漠然とした自殺願望はあったかもしれないんだけど、そこまで具体的に行動したことはなかったから、ほんとあのとき、警察の人が言ってくれなかったら(実行してたかも)わかんなかったくらい、具体的でしたね。

紫原 はぁ。

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