家族も結婚も「永遠だ」と思わなければ幸せ。/紫原明子×枡野浩一【7】

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連続対談シリーズ「心から愛を信じていたなんて」

『愛のことはもう仕方ない』/『家族無計画』

『愛のことはもう仕方ない』/『家族無計画』

紫原明子×枡野浩一対談
「無計画」で「仕方ない」夫婦と男女~離婚と自立とセックスレスと~

いよいよ最終回です。公開対談の参加者の方々の質問に答える形で、いよいよ「家族論」の本質に迫ります。ここまでツラい離婚体験を語ってきた枡野さんはなぜ最後、「夫婦生活は幸せだった」と言うのか? そして紫原さんは「新しい家族像」をどう示してくれるのか?

「家族は広くゆるく風通しがよくなったほうがいい」(紫原)

枡野 なにか質問はありますか? この対談をまとめてくれる構成担当のFさんはなにかあります?

構成担当F おふたりの本のタイトルは『家族無計画』と『愛のことはもう仕方ない』。それで対談の中で「ふたりとも振り回される側だよね」と言われていますが、しかし紫原さんはポジティブな復讐のために本を書かれたと。逆に枡野さんは「会えない息子が神様のように思えてきた」って言われる。実は僕は、もう枡野さんとは20年来の友人で、離婚後にぐじぐじしてたのもずっと知ってるのですけど、「息子が神様のように」っていうのは初めて今日聞いて、すごく「えっ!?」と思いました。あと枡野書店を「いつ息子さんが訪ねにきてもいいようにやってる」というのも今日初めて聞く言葉で……。それで思ったのが、おふたりとも家庭で失敗されたように見えて、実は幸せなんじゃないかと。紫原さんはきちんとお子様ふたりと暮らしておられる。枡野さんだって、枡野書店という家族じゃない家族を意外にちゃんと作ってるような気がします。つまり、案外おふたりとも、「無計画」と「仕方ない」と言いながら、実は家族だったり、家族じゃないけど家族みたいなものを築いておられるんじゃないかと思ったんです。その上で、やっぱり敢えておふたりに一番聞きたいのは、「家族」というものをどう思われてるか、どう捉えられているのか、なんですよ。

紫原 私は『家族無計画』の最後のほうの章の『決めごとはすべて(仮)でいい』で書いてるんですけど、もっと家族という集団が閉鎖的じゃなくて、広くゆるくなっていって、風通しがいい組織になったほうがいいと思っていて。じゃないとすぐ離婚とかできない。愛し合ってない結婚を続けるのは無意味だから、すぐ離婚できたほうがいいと思うんですけど、すぐに離婚したときでもリスクがないように、周りになるべく大人がたくさんいたほうがいいと思うんですよね、子どもをひとりで育てるのはすごく大変なので。だから家族っていうのをもうちょっと広く……親戚とか、親戚じゃなくても気の合う人たちがなんとなく副次的な家族でいるような……。それこそ、広く大きく薄くゆるく広がっていったほうがいいなと思っています。

枡野 それは、この本(『家族無計画』)にもあった「自立とは依存先を増やすことだ」っていう言葉……どなたの発言でしたっけ?

紫原 お医者さんの方の言葉です。小児科医をなさっていて、ご自身も小児麻痺を患っていらっしゃって、車椅子で生活されてる方で。直接の面識はないんですけど、とても印象に残る言葉で。

枡野 中村うさぎさん[注]の本(小倉千加子と中村うさぎの対談『幸福論』)でね、“人間は依存するもんなのだから、それを認めていこう”ってことが書いてあって。僕もいまはそういう風に思ってます。自分でできないことはどんどん人に頼るようにしてるし。

紫原 枡野さん、すごくお友だちが多いですよね。この本を読んでいてそう思いました。

枡野 それはきっと僕がそれを望んでいるから、そうなっちゃうんだと思うんですよね。だからすごくいろんな人に助けられてて。なんかついに、枡野書店のトイレットペーパーを勝手に誰かが買って置いていったりするんですよ(笑)。

紫原 それはもう家族ですね(笑)。それは家族です!

枡野 もう、びっくりしちゃって。さすがにトイレットペーパーは自分で買うんだけどなと思ったんだけど。あと、花が急に増えたりしてるのね。花をもらったから飾っておいたの、一輪だけ。そうしたら、花が四輪くらいに増えてたりとか。

紫原 いつのまにかですか?

枡野 僕が目を離した隙にですよ。誰がしたかはわかんないけど。

紫原 へえ~~。

枡野 そういうのに支えられて生きてるから、この本(『愛のことはもう仕方ない』)でも誰かに差し入れ貰ったら書くようにしてたし。なんかありがたないなぁと思ってるんですよね。自分自身は全然貧乏で、最近、家賃4万円で風呂ありのアパートを借りたんですけど……。

紫原 「風呂がない」って書かれてましたよね?

枡野 そう。ずっと風呂がなかったから、いま風呂があるだけずっと豊かな気持ちで。家賃4万にしてはいい部屋だと思ってるんです、自分では。

紫原 そういう(枡野書店の周囲にいる人は)みんな家族という位置づけですか?

枡野 位置づけ……そうですね。あと、あの、こんなこと話してもみんな引くかもしれないけど、本書いたことで、旅行に行った男性と連絡がとれて、なんか、会って添い寝したりしましたよ、最近。ハードなことはしませんでしたけど。

紫原 この本を書いたことがきっかけで?

枡野 「書いていい?」って聞いたことで、彼が気になったみたいで(再会しました)。

紫原 旅行に行くっていうのは……恋人とかとはまた違ったんですか?

枡野 でもね、恋人的なものでしたよ、気持ちは。ただ向こうは「なんだろう、この人にとって自分の存在は?」と思ってたかもしれませんけどねえ。

紫原 ハードなこともしないし。

枡野 そ、ハードなこともしないし。やっぱりハードなことをしないのはダメですねえ。

紫原 向こうは望んでたんですか?

枡野 わかんない。でも二村さん(AV監督/作家・二村ヒトシ:この日、観客として来場していた)の本とか読んでもむずかしいですよね。「もっとお尻をいじりなさい」(要約)とか書いてあっても、そう言うけどさぁ……って思ってしまいます、僕は。はい。

紫原 むずかしいと思いますけど……。会場におられる二村さん、どうですか?

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